相続時精算課税制度について過去の利用状況を分析しました。
少々見にくい表になりましたが苦心の自作でTable Pressでもうまくいかなかったのでエクセルを画像化して取り込んでみました。そのせいでピントが甘いし、背景も白でなくなにか薄汚れた感じになってしまいまして誠に失礼しています。
相続時精算課税制度は平成15年に創設されました。その後数年は利用者がのびて平成17年には年間82千人が利用していましたが、その後減り続け平成22年に下げ止まってからは5万人前後の利用者で推移しています。
暦年課税に戻れないこと、相続税の節税効果がないことなどから相続時精算課税を選択する人が減ったものと思われます。上記の表は過去3年分の暦年課税及び相続時精算課税の申告状況をまとめたものです。表を見て仮説として考えていることが果たして裏付けられるか、検証してみます。
表から読み取れることは下記5項目です。
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その1) 暦年課税は申告件数、納税額とも右肩上がりで伸びている。
表には出てきませんが暦年課税は平成20年まで減り続けていました。平成21年から一転して増加に転じ平成26年では1.7倍まで増えています。暦年贈与の節税効果が見直された結果であると思われます。平成27年の相続税の増税を前に財産移転が進んだものと想定できます。
その2) 暦年課税は約75%の人が贈与税を納税している。
贈与税の暦年課税には年間110万円の基礎控除があります。それ以下なら贈与税の申告も不要です。当然考えられることは75%の人は相続財産を暦年贈与で計画的に減らしその贈与の証拠とし贈与税の申告納税をしているものと思われます。とすれば残る25%の人は贈与税かからない110万以下なのにご丁寧に贈与税の申告をされているということです。
確かに計画的に暦年贈与を行うときには贈与金額を一定にしないで時々は基礎控除以上に贈与して贈与税を払うほうがよいというアドバイスが一般的ですがそれだけではなさそうです。やはり名義預金という課税当局の理屈に対抗する証拠として例え基礎控除以下でも贈与税の申告をしているということでしょうか。
その3) 相続時精算課税の申告者は5万人前後で横ばいである。
相続時精算課税は平成22年以降下げ止まり、横ばいということはやはり相続税のかかる人も相続税のかからない人も含めて一定の需要というか使い道はあるということです。しかし年間5万人は多いのか少ないのか判断ができません。この中に仮説で予測している相続税のかからない人の親か子への資金援助が含まれていることでしょう。とすればまだまだ少ないと思われます。
相続税がかからなくて親からローン返済の資金援助を受けた方の何割かが相続時精算課税を選択しその他多くの人は知らぬ存ぜぬの時効待ちのような気がします。
その4)相続時精算課税は申告者の約94%が納税していない。
これは想定範囲ですが、相続税の増税により相続税のかかる人が4%から6%に増えるという予測がありますが、そのままの残りの相続税のかからない人94%の人が納税する必要のない2500万以下の贈与を行ったということではないでしょうか。
確かに相続税がかからないのに一時的とは言え2割の贈与税を払う気にならないところですから当然ではあります。4%の方は本当の資産家で事業承継か何かの対策で一気に贈与する必然的な理由があったものと思われます。
その5)相続時精算課税は暦年課税の約10%で推移している。
あまり重要なことでもないですが、暦年贈与の優位性がはっきりした結果だと思います。平成21年まではずっと相続時精算課税は暦年贈与課税の20%超の利用件数がありましたから、使い道が明確に分かれたということで、今後この傾向は変わらないように思います。
まとめ)相続時精算課税制度の意外な真実まとめ。
相続時精算課税制度の導入当初数年は手探りで相続時精算課税制度を選択した方も多かったようです。
様々な制約、手続きの煩雑さ、直接的な節税効果がないこと、一度選択すると暦年課税に戻れないなど不都合な面も出てきた結果、条件的緩和(年齢制限の変更・対象を孫拡大等)がありましたが、限られた用途に限定する形で年間5万人に利用される形に落ち着いたということのようです。
それに引き替え簡明で手続きがわかりやすい暦年贈与が多用されるようになったということです。一番のメリットは基礎控除110万が毎年使えてそれなりの相続税の節税効果があることですね。
背景には相続税の基礎控除が引き下げられ増税になった結果、少しでも早めに暦年贈与で相続財産の減らしておきたいという新たな相続税対象者の思いが見えてきます。
以下のサイトを参考にしました。
◆国税庁。平成26年分の所得税及び復興特別所得税、消費税並びに贈与税の確定
申告状況等について
相続時精算課税制度に関する総まとめのページです。