相続時精算課税制度のトラブルと落とし穴5つを解説。
相続時精算課税制度の考えられるトラブルと気を付けなければいけない怖い落とし穴5つを、相続税がかかりそうにない貧乏人向けに考察しました。
相続税がかかりそうにない一般庶民が、相続時精算課税制度を使うときの落とし
穴があります。これは落ちると這い上がれない深さがあるので、同制度の適用を
お考えの方に警鐘を鳴らしたいと思います。
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◆相続税がかからない人が、相続時精算課税制度を選択するときの落とし穴。

相続時精算課税制度は、相続税がかかるような資産家には節税効果がないので特
殊なケースを除いてお勧めしませんでした。しかしルールが変わり贈与税の基礎
控除110万円が創設されたので、使い勝手がよくなりました。
多くの一般庶民が贈与税を回避して、まとまった資金を親から援助してもらうと
きには一考の価値があります。しかしながら、ここにも注意すべき落とし穴がい
くつかあります。相続時精算課税制度は一度選択すると二度と後戻りができない
のが特色です。落ちてからでは遅いので十分ご検討下さいませ。
その1)相続税がかかるようになるリスク。
相続時精算課税制度を利用した資産以外の財産が増加するケースがあります。
相続時精算課税制度の落とし穴ではないかもしれません。しかし相続の想定外の落とし穴ではないかと思います。。
相続時精算課税制度を選択した時点では、相続税がかかるほどの資産はなく将来
税金を払うなど考えもしない方もおられます。ところがそれが発生するのは10
年後か20年後かもっと先かもしれません。その時にどうなっているかは誰にも
予測がつきません。
単に田舎の二束三文の田畑に道路が通り、地価が高騰することだってありえます。
会社を経営していれば今は青息吐息でも、事業が成長し自社株評価が驚くほど高
くなることもあります。宝くじに当たっても、死亡保険金を受け取っても資産が
基礎控除以上になれば同じことです。
そのときは、予定外の相続税の納税をすることになります。こんなことなら暦年贈与で財産を減らしておくべきだった、ということもあるかもしれません。ただし相続時精算課税制度で贈与された財産はそのままの評価ですから、意味がないことはないので素直に払うことです。
その2)遺留分侵害リスク。
もともと被相続人が、財産分与を決める権利があります。生前贈与や遺言で指定
すれば、世話になった人や好きな人に財産を自由にあげることができます。
一方では、相続税法で相続人にも一定の権利を認めています。いわゆる遺留分です。最低の権利として、法定相続割合の半分は(配偶者と子2人の場合、子の法定相
続分は1/4、遺留分は1/8)相続財産をもらえるわけです。
暦年課税のように、その都度毎年完結していれば問題にはなりません。でも相続
時精算課税制度は、贈与済みの財産も相続財産として再度カウントされます。当
然遺留分を算定する相続財産金額に加算されます。そうなると、遺留分を侵害す
る可能性が出てきます。
主な相続財産が家屋敷しかなく、それを同居する長男に相続時精算課税制度で贈
与する場合などのケースが該当しそうです。相続税がかからなくても、すべての
人に相続はあります。もちろんそういうケースでも、遺留分という権利はあるので
配慮が必要ということです。
その3)生前争族リスク。
被相続人の死後、相続財産の分割をめぐり家族がいがみ合うのが争族です。相続
時精算課税制度は、争いを被相続人の生前に発生させる可能性があります。
財産分与の権利は被相続人たる親が握っているとは言え、相続時精算課税制度で
法定相続分を上回る財産を長男に渡そうものなら、他の兄弟が黙っているとは限り
ません。
税務署に確認すればわかる話ではありますが、知らせなければわからないのも相
続時精算課税制度です。後に内緒にしていた相続時精算課税制度でもらった財産
が明るみに出ます。この話し合いは遺言書でもない限り、すんなりまとまりそう
にもないような切ない気がします。
争族は相続税のかかる人よりかからない人のほうが、圧倒的に多いのです。やる
ならきちんと他の相続人にも話をし、たとえ資産が少なくて相続税がかからなく
ても、相続人のバランスに配慮した遺言書を残しておくことが大事です。
その4)不動産を贈与すると税金リスク。
相続税がかからない人が、相続時精算課税制度を活用して不動産を贈与する場合
は注意が必要です。家屋敷などの不動産を生前に名義変更をして、死後の憂いを
なくしておきたい場合です。
不動産の贈与は税金がからんできます。登録免許税(2%)と不動産取得税(3~4%)が発生します。相続で不動産を取得すれば不動産取得税は非課税(0円)、登録免許税は(0.4%)とかなり違います。
相続時精算課税制度を利用して不動産を贈与しても、税金的には喜んでばかりは
いられないのです。
たとえ税金がかかっても、生前に名義変更する必要があるケースもありますから
一概には言えません。ある程度理解のある相続人であれば、遺言書で指定すれば相続となり税金的にはお得になります。
相続税がかからないのに、税金を余計に払って急いで名義変更する理由もないと思います。それぞれの家庭の意事情によります。
その5)民法上と税法上での評価違いのリスク。
税法上は相続時精算課税制度でもらった財産の評価は、その時点に固定します。でも民法上は、相続発生時の時価で評価し遺産の分割を行うということです。
先読みができ予想通り評価が上がればその結果、相続時精算課税制度で評価を抑制することはできたと思います。しかし遺産の分割ではそうはいかないのです。当然民法で規定されている遺留分の額も大きくなります。それがどのような影響を及ぼすかわかりませんが、揉めないことを祈るだけです。
相続税の計算上は贈与時の時価となりますが、民法上、特別受益の計算は相続発生時の時価で考えます。相続時精算課税制度では贈与した財産を相続財産持ち戻し清
算するとされていますが、遺産分割ではそうはいかない別の問題の可能性があり
ます。
これは相続時精算課税制度で自社株を低額贈与したようなとき、特別受益として
相続時の時価で持ち戻し加算するような、とんでもないリスクの可能性がありま
す。
◆ 相続税がかかってもかからなくても、トラブルの可能性がある相続時精算課税制度、まとめ。

相続時精算課税制度の一般的なデメリットや落とし穴についての解説サイトは山
のようにあります。一般的な落とし穴は、別項目として概要のみを列記します。
・親(被相続人)より子(相続人)が先に亡くなると相続税が2回。
・相続時に価値がなくなっていても支払い義務は残る。
・暦年贈与で節税できない分が他の相続人の負担増になる。
・相続時精算課税制度を選択した建物は小規模宅地の特例が使えない。
・相続時精算課税制度で取得した不動産は物納に使えない。
・孫への相続時精算課税制度は2割増し、相続税の基礎控除600万なし。
とまあ相続税がかかろうとかからなかろうと、いろいろトラブルの目は出てきま
す。多くの貧乏なサラリーマンのような立場の圧倒的多数の方が、贈与に関して
疑問を持っているのを感じてきました。
普通に生命保険の名義変更をしたり、子のローンの支援をしたり、普通に親子間
では、いくらでも扶養の範囲を超えた贈与があります。
・庶民は、相続時精算課税制度を利口に使うこと。
それを相続税がかからないのに贈与税がかかるなど、貧しい庶民には納得できる
話ではないのです。
すべてのケースで、税務署から指摘があるわけではないです。スピード違反の取
り締まりのようなもので、運が悪ければ狙われるということもあります。税務署
から言われれば、もはや反論すらできない勝ち目のない話になります。
相続時精算課税制度で、贈与税の不安を抱えながら贈与するのではなく、すっき
りした形で非課税贈与できれば安心できます。
贈与も相続もたびたびあるわけではないのです。すべからく事情のよくわからな
いド素人が普通です。税理士にも縁がない、税務署にも縁がないサラリーマン向
けの相続時精算課税制度の情報をまとめました。少しでもお役に立てば幸甚です。
相続時精算課税を利用して数年前に父親から株式を贈与してもらいました。
贈与時の評価は5億円でしたが、つい最近算定してもらったところ10億円という価額が出ました。
父親の体調すぐれず近い将来に亡くなるかと思われます。
兄弟が一人いるのですが、遺留分を主張してきそうな感じです。
ちなみに株式は私のみが贈与を受け、兄弟は1株も持っていません。
遺留分については贈与時の5億円か、若しくは相続時の10億円を算定基礎とするのかご教示いただければ幸いです。
kuwata様 保険は相談するな!にお越しいただきありがとうございます。事業承継で自社株を贈与されたのですね。自社株は評価の低いときに相続時精算課税制度を活用することはよく使う手法ですが、後々困ることもあります。実際のところ生前贈与を行っていても持ち戻しとなると遺留分算定基礎となる自社株評価は時価となると思われます。納得できないと思いますが判例があります。念のため資産税専門の税理士に確認しましたが同意見です。端的に申し上げますと生前に贈与を受けた自社株は特別受益ということで持ち戻しを主張されると厄介な面があります。お父上に遺留分に配慮した遺言書をお書き頂き、その中で持ち戻しの免除を明記していただくことが有効な対策になるかと思います。ご参考までに