相続時精算課税制度 | 貧乏人の怖い落とし穴5つを解説

相続時精算課税制度の怖い落とし穴、5つを相続税がかかりそうにない貧乏人向けに考察しました。

相続税がかかりそうにない一般庶民が相続時精算課税制度を使うときの落とし穴があります。これは落ちると這い上がれない深さがあるので同制度の適用をお考えの方に警鐘を鳴らしたいと思います。CIMG2460

失礼ながらあえて相続税のかからない方を資産家の対極に考えて貧乏人と呼ばせていただきました。もし中流意識をお持ちでしたら貧乏人は失礼ですのでお詫び申しあげる次第です。いつの時代も一部の資産家と大多数の貧乏人たる一般庶民で構成されるのがこの世のならいです。そういう意味で貧乏人と申しあげたのであり、悪気は御座いません。

本講をまとめるについては福田真弓税理士のオフィシャルサイトを参考にしました。数ある関連のブログでも内容的に秀逸です。「必ずもめる相続の話」「必ずもめる相続税の話」の著書は購入して読ませていただきました。

私の場合は保険会社から転じて買う側ですから一社専属で事業承継、相続設計、保険設計に取り組んできました。内容的には深くても広がりがありません。お付き合いする税理士さんも相続の専門家であることはめったにありません。通り一遍の知識はお持ちですが踏み込んだ質問には即答できないのが普通です。そういう意味で福田税理士の現場から発信する情報と知見は幅広くかつ実務的です。

相続時精算課税制度がとことん悩ましい本当の理由。

◆相続税がかからない人が相続時精算課税制度を選択するときの落とし穴です。

相続時精算課税制度は相続税がかかるような資産家には節税効果がないので特殊なケースを除いてお勧めしませんが、そうでない94%の一般庶民が贈与税を回避してまとまった資金を親から援助してもらうときには一考の価値があります。しかしながらここにも注意すべき落とし穴がいくつかあります。相続時精算課税制度は一度選択すると二度と後戻りができないのが特色です。落ちてからでは遅いので十分ご検討下さいませ。

その1)相続税がかかるようになるリスク

相続時精算課税制度を選択した時点では相続税がかかるほどの資産はなく将来税金を払うなど考えもしない方もおられます。ところがそれが発生するのは10年後か20年後かもっと先かもしれません。その時にどうなっているかは誰にも予測がつきません。

単に田舎の二束三文の田畑に道路が通り地価が高騰することだってありえます。会社を経営していれば今は青息吐息でも事業が成長し自社株評価が驚くほど高くなることもあります。宝くじに当たっても、死亡保険金を受け取っても資産が基礎控除以上になれば同じことです。その時は予定外の納税をすることになります。ただし相続時精算課税制度で贈与された財産はそのままの評価ですから、意味がないことはないので素直に払うことですね。

その2)遺留分侵害リスク

もともと被相続人が財産分与を決める権利があります。生前贈与や遺言で指定すれば世話になった人や好きな人に財産を自由にあげることができますが、一方では相続人にも一定CIMG2461の権利を認めています。いわゆる遺留分です。法定相続割合の半分は(配偶者と子2人の場合、子の法定相続分は1/4、遺留分は1/8)もらえるわけです。

暦年課税のようにその都度毎年完結していれば問題にはなりませんが、相続時精算課税制度は贈与済みの財産も相続財産として再度カウントされますから遺留分を算定する金額に加算されます。そうなると遺留分を侵害する可能性が出てきます。

主な相続財産が家屋敷しかなくそれを同居する長男に相続時精算課税制度で贈与する場合などのケースが該当しそうです。相続税がかからなくても相続はあります。もちろんそういうケースでも遺留分という権利はあるということです。

その3)生前争族リスク

被相続人の死後、相続財産の分割をめぐり家族がいがみ合うのが争族ですが、相続時精算課税制度は争いを被相続人の生前に発生させる可能性があります。

財産分与の権利は被相続人たる親が握っているとは言え相続時精算課税制度で法定相続分を上回る財産を長男に渡そうものなら他の兄弟が黙っているとも思えません。税務署に確認すればわかる話ではありますが、知らせなければわからないのも相続時精算課税制度です。後に内緒にしていた相続時精算課税制度でもらった財産が明るみに出ます。この話し合いは遺言書でもない限りまとまりそうにもないような切ない気がします。

争族は相続税のかかる人よりかからない人のほうが圧倒的に多いのです。やるならきちんと他の相続人にも話をし、例え資産が少なくて相続税がかからなくても遺言書を残しておくことです。

その4)不動産を贈与すると税金リスク

相続税がかからない人が相続時精算課税制度を活用して不動産を贈与する場合は生前に名義変更をして死後の憂いをなくしておきたい場合です。不動産の贈与は税金がからんできます。登録免許税(2%)と不動産取得税(3~4%)が発生します。相続で不動産を取得すれば不動産取得税は非課税(0円)、登録免許税は(0.4%)とかなり違います。

相続時精算課税制度を利用して不動産を贈与しても喜んでばかりはいられないのです。

たとえ税金がかかっても生前に名義変更する必要があるケースもありますから一概には言えませんが、ある程度理解のある相続人であれば遺言書にするのがお得になります。相続税もかからないのに税金を余計に払って急いで名義変更する理由もないと思います。それぞれの家庭の意事情によりますね。

その5)民法上と税法上での評価違いのリスク

もう一点注意事項は福田税理士のサイトで見つけたのですが、税法上は相続時精算課税制度でもらった財産の評価はその時点に固定するのですが、民法上は相続発生時の時価で遺産の分割を行うということです。先読みができており予想通り評価が上がったのでその結果、評価を抑制することはできたのですが遺産の分割ではそうはいかないのです。当然民法で規定されている遺留分の額も大きくなります。それがどのような影響を及ぼすかわかりませんが揉めないことを祈るだけですね。

福田税理士のサイトでは以下のように書かれています。
「民法の特別受益の計算上は「相続時」、相続税の計算上は「贈与時」の時価で考えます。そのため、例えば贈与時の時価が100万円で、相続時には時価が1億円になった株式なら、遺産分割を行う上では1億円、相続税の計算上は100万円だと考えて、取り分や相続税を計算します。相続財産に「持ち戻す」という行為は同じでも、贈与財産をいくらと見るかが違うのです。」

相続時精算課税制度は節税できる仕組みではない。

まとめ)相続税がかかってもかからなくても落とし穴がある相続時精算課税制度

相続時精算課税制度の一般的なデメリットや落とし穴についての解説サイトは山のようにありますので、一般的な落とし穴は別項目として概要のみを列記します。

・親(被相続人)より子(相続人)が先に亡くなると相続税が2回
・相続時に価値がなくなっていても支払い義務は残る
・暦年贈与で節税できない分が他の相続人の負担増になる
・相続時精算課税制度を選択した建物は小規模宅地の特例が使えない
・相続時精算課税制度で取得した不動産は物納に使えない
・孫への相続時精算課税制度は2割増し、相続税の基礎控除600万なし

とまあ相続税がかかろうとかからなかろうといろいろ出てきます。暦年贈与のシンプルさには遠く及びません。相続時精算課税制度が出てから相続税の改正があり基礎控除が減額され相続時精算課税制度はさらに評判が悪くなり選択する方が大きく減っています。

CIMG2403多くの貧乏なサラリーマンのような立場の圧倒的多数の方が贈与に関して疑問を持っているのを感じてきました。普通に生命保険の名義変更をしたり子のローンの支援をしたり、普通に親子間では贈与があります。

それを相続税がかからないのに贈与税がかかるなど貧しい庶民には納得できる話ではないのです。

すべてのケースで税務署から指摘があるわけでもないですし、税務署から言われればもはや反論すらできない勝ち目のない勝負になります。

贈与税の不安を抱えながら贈与するのではなく、すっきりした形で非課税で贈与できれば安心できます。

贈与も相続もたびたびあるわけではないのです。すべからく事情のよくわからないド素人が普通です。税理士にも縁がない、税務署にも縁がないサラリーマン向けの相続時精算課税情報を発信できればと思っています。

相続時精算課税制度の意外な使い道があった、その手でローン完済!

相続時精算課税制度の使い道マトリックス。

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「相続時精算課税制度 | 貧乏人の怖い落とし穴5つを解説」への4件のフィードバック

  1. 相続時精算課税を利用して数年前に父親から株式を贈与してもらいました。
    贈与時の評価は5億円でしたが、つい最近算定してもらったところ10億円という価額が出ました。
    父親の体調すぐれず近い将来に亡くなるかと思われます。
    兄弟が一人いるのですが、遺留分を主張してきそうな感じです。
    ちなみに株式は私のみが贈与を受け、兄弟は1株も持っていません。
    遺留分については贈与時の5億円か、若しくは相続時の10億円を算定基礎とするのかご教示いただければ幸いです。

    1. kuwata様 保険は相談するな!にお越しいただきありがとうございます。事業承継で自社株を贈与されたのですね。自社株は評価の低いときに相続時精算課税制度を活用することはよく使う手法ですが、後々困ることもあります。実際のところ生前贈与を行っていても持ち戻しとなると遺留分算定基礎となる自社株評価は時価となると思われます。納得できないと思いますが判例があります。念のため資産税専門の税理士に確認しましたが同意見です。端的に申し上げますと生前に贈与を受けた自社株は特別受益ということで持ち戻しを主張されると厄介な面があります。お父上に遺留分に配慮した遺言書をお書き頂き、その中で持ち戻しの免除を明記していただくことが有効な対策になるかと思います。ご参考までに

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