借金の法定相続には債権者保護の理屈。
相続と借金は常々関連があります。会社を経営していれば借金は避けて通れません。
また身内や親戚は借金の保証人としてかり出されることでしょう。
中には債務超過に近い会社もあると思いますから財産はあっても差し引きプラスかマイナスか判断が難しいケースもあります。
借金が遺産を上回るなら相続人は相続放棄を考えなくてなりません。
相続放棄は短い期間(3ヶ月)で判断をしなくてはなりませんし後戻りが許されません。より慎重な判断が求められます。ただ債権者としては相続人に債務を引き継いでもらわないと取りっぱぐれになり自分が苦しくなります。相続人の相続放棄と債権者の権利を見ていきます。
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◆ 民法は債権者保護の立場。
日本の民法のなかに相続について定められた項目があり、相続法と呼ばれています。この民法における相続の考え方は債権者保護の立場に立っています。
お金を貸している人を債権者、借りている人を債務者とすると債務者から借金を取り立てる人が債権者と言うことになり、いかにも悪者のイメージがあります。しかし親切にもお金を貸してくれた善意の第三者ですから債務者が亡くなり相続が発生したからといって債務がなくなるわけではありません。相続財産があればそこから債権者に弁済するのが筋です。
相続人は遺産より借金が多いときは相続放棄をすることができます。しかしそれで済むわけではありません。相続順位が第一位の相続人(配偶者・子)が相続放棄をしても借金はどこまでも追いかけてきます。相続の第二順位の相続人(親)、第三順位の相続人(兄弟姉妹)に相続権が移り借金が引き継がれることになります。
仲がよくても悪くても、後々憂いがないように世界中どこにいようとも事前にきちんと相続放棄したことを伝えなくてなりません。
◆ 借金を集中して自己破産は奥の手か。
浅知恵が回るといろいろ考えます。遺産分割協議で事業に失敗した相続人に債務を集めて自己破産させておいて、他の相続人は相続放棄せずプラスの遺産を引き継ぐという作戦です。
遺産分割協議の知恵が勝つか債権者の権利が強いかですが、これでは債権者がたまりません。遺産があればそれで弁済せよと言うのはあたりまえです。
言い方をかえれば、相続人同士で決めた遺産分割協議の割合が第三者である債権者に有効かどうかですが、民法は債権者を保護する立場ですから、債務の分け方を遺産分割協議でどのように決めようとも遺言で一人の相続人に集中させようとも法定相続分で債務は引き継がれることになっています。
◆ 連帯保証の恐怖、借金も法定相続。
借金で恐いのは連帯保証人です。単なる保証人と違い抗弁ができず無条件で取り立てを受けてしまいます。知人や親戚に頼まれてよく考えもせずにハンコを押すことは危険です。連帯保証人の責任はとても重く、それは相続にも影響してきます。その辺は以下のページに詳しく書きましたので参考になさってください。
連帯保証人としての責任と覚悟を決めて連帯保証人になったとしても、そのまま相続になれば迷惑を被るのは相続人です。
上にも書きましたが債権者は相続人全員に対して法定相続分に応じた部分を請求することができます。もうひとつ連帯保証でやっかいなことがあります。連帯保証している債務は借金ですから相続財産から差し引けそうなものです。ところが理屈があります。
借金はもともとの債務者が返済すべきもので、連帯保証人が肩代わりするようなことになった場合は、この時点ではマイナス財産ではなく債務者に責任を持って返済してらうべきものですからプラスの財産と考えます。
債務者が破産したり死亡したりすることで返してもらう見込みがなくなってはじめて相続税の課税対象から差し引くことができるようになります。連帯保証人などは家族が知らない場合もあり、後になって連帯保証人としての債務責任が判明することもあります。
◆ 後戻りできない相続放棄。
相続放棄は相続の発生を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。一度相続放棄をすると、後で撤回することはできません。3ヶ月は長いようで短い期間ですので、その間に被相続人にどのような借金があり、連帯保証人としての債務がどれだけあるかを見極めなくてはなりません。
間違って相続放棄をしても、相続放棄をしなくても後戻りできません。後悔先に立たずですから、有給をとってでも徹底的に洗い出すことが必要です。
うちの親に限って無いと思っていても、あるのが隠し子と連帯保証人と心得て下さい。
知らぬは相続人ばかりなりです。ただ後からわかった連帯保証人としての債務は諦めるしかないのでしょうか。実際はそうとばかりも言えないので、やり方によっては諦めるにはまだ早いと覚えておいてください。
◆相続、生命保険が有利な理由、まとめ。
「保険は相談するな!」は保険の情報サイトですから、相続に関して生命保険がいかに有利な仕組みかについては以下にも書きました。
なにがすごいかと言ってもすごいのは相続放棄しても生命保険金は受取人の立場で受け取ることができると言うことです。
親の借金や連帯保証による債務が遺産より大きくて相続人全員が相続放棄せざるを得ないようなときでも、生命保険金は受取人固有の財産として堂々と受け取ることが可能です。
相続財産に合算されない個人的な生命保険金を受け取る権利なのです。
ただ相続により請求権が発生しますから相続税は払わなくてはいけません。さすがに丸取りはできないのです。ただ契約者(保険料を払ってきた人)が親(被相続人=亡くなった人)で被保険者(体を提供する人)も親の場合で、生前に親が指定した受取人だけが保険金を受け取ることができます。
生命保険金と言えばサラリーマンでは一生手にすることができない一財産になることもあります。だから借金が多い親であっても、虫が好かない親であっても、親孝行は形だけでもしなくてはいけないのです。
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