逓増定期保険、経理処理の変遷が複雑怪奇。

逓増定期保険、経理処理の変遷が複雑怪奇。

法人契約の保険は、経理処理が複雑になります。その原因は、保険会社の商品開発と国税庁の通達や改定による締め付けの繰り返しによるものです。まさにイタチごっこの結果とも言えると思います。

通達によるルールの変更は、過去の契約に遡及しないとされた場合と改定日以降の既契約の保険料に適用された場合とがあります。すると契約の時期により経理処理が異なるという、やっかいなことになったわけです。節税目的で様々な保険を活用して、簿外に資金を蓄積してきたような会社は、法人契約の保険の経理処理がとても複雑になり、誤りも多数あると思われます。

■逓増定期保険の名義変更、ホワイトデーショックまとめ。

◆ 契約時期により損金算入割合が異なる保険。

法人で契約する保険は、バレンタインショックまでは二つの大きな目的がありました。一つは事業保障であり経営者や役員が万が一の場合、経営を維持するため緊急資金を確保するための保険金です。今一つの目的は、保険料を損金で落とすことにより費用化し解約返戻金に期待する利益の繰り延べです。

そのための節税保険というのは長期定期保険、逓増定期保険、がん保険などがありました。ピーク時の解約返戻率が高く、中には9割以上も戻るものもありました。いずれの保険も全額損金にできる時代から、半分だけ損金にできる時代を経ています。今やピーク時の解約返戻率に合わせて損金算入率が規制され、課税の繰り延べ効果がほとんどなくなりなりました。

その都度、業を煮やした国税庁が節税保険に網をかけてきた結果、同じ保険でも契約時期により経理処理が異なるという、迷路のような状態が出現したのです。保険の経理処理に関する知識は、生半可では理解できません。その結果思いがけない経理処理の落とし穴が発生することがあります。これは保険契約ごとに時系列で、経理処理の変遷を理解しておかないと発生するミスと言えそうです。

■保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

◆ 逓増定期保険の損金算入額の混乱。

本題はここからですが、保険管理で難しいのは解約時期の管理なのです。節税保険で利益を繰り延べしたまではよいのですが多くの、場合出口対策はできていないのです。

あるいは役員退職金支給などの予定があっても、計画通りにはいかないことがあります。そして解約返戻率のピークを逸してしまうこともあります。

解約返戻率がわずかに下がるくらいであれば、解約を先送りしても出口対策に組み込めればメリット出る場合があります。それでも困る場合は、保険料の口座振替を振り込みにして、保険料をストップして保険契約を失効させることを考えます。

問題として、ピークを過ぎた逓増定期保険の解約を先送りした場合の経理処理は、見落としがちな問題があります。そもそもバレンタインショック以前に契約した逓増定期保険は1/2損金が多いと思います。ルールに従うと保険期間の6割に相当する期間は1/2損金であり、それ以降の期間の保険料は、全額損金かつそれまでの保険積立金を残りの期間で均等割りして1年分を損金額にオンすることができます。

普通ですとそんなことはせずに、解約返戻率がピークの時点で解約してしまいます。そうすれば解約返戻金の雑収入と保険積立金の取り崩しにより、経理処理はシンプルに決着します。ところが解約を先送りすると、ここの経理処理が変わってきます。

実は、契約当時の提案書を残しておいたのですが、平成18年の契約で15年目に入っています。保険期が22年、すでに平成20年の6割の期間を2年過ぎているのです。それには払込保険料累計やキャッシュバリュー(解約返戻金額)のほかに「損金算入額累計」「資産計上額累計」が年ごとに時系列でシミュレーションしていたものが残っていたため気が付いたのですが、保険の経理処理に関する専門的な情報を持ち合わせないとたぶん意味が分からないと思われます。

解約返戻率のピークを過ぎたということは、1/2損金の期間を終え保険積立金の取り崩し損金の時期に入っています。解約を先送りすると解約返戻金のキャッシュバリューは目減りするのですが、それをカバーするだけの損金が別途発生する感じです。

ただ、解約を繰り延べただけでなく保険積立金を取り崩して損金に算入しますから、後の解約時の雑収入の割合が高くなります。利益の繰り延べ効果は享受できるのですが、またまた出口対策に困ることになります。もはやバレンタインショックにより雑収入を引き継げる保険はほとんど存在しないのですから、別の節税手段を考えなくてはなりません。言ってみれば節税につながる出口対策を考える時間を稼いだと言いえるかもしれません。

ややこしい説明で恐縮ですが、これ読んで理解された方は相当保険の経理処理にお詳しい方だと思います。保険を売るだけだと、ここは理解できないかもしれません。売る側と買う側、なおかつ法人の利益コントロールにかかわっていないと理解が難しいかもしれません。説明しきれない歯がゆさが残りますが、悪しからずご容赦願いたいと思います。

◆ 経理担当者が変わると保険の経理処理は五里霧中。

一番困るのは、経理担当者の退職や交代です。新たに経理担当者になった方には、保険の経理処理などさらにわかりません。前と同じにしておけば無難だと思っているととんでもない間違いを犯すことにつながります。

まさに新米の経理担当者にとれば、長期にわたる多数の法人契契約保険の経理処理は、五里霧中という表現が当てはまるのではないかと思います。

法人保険の営業をされる方は、この辺の知識を武器に企業にアドバイスされるのもありかと思います。

◆ 逓増定期保険、経理処理の変遷、まとめ。

逓増定期保険が出始めたことは、保険料を全額損金処理することができました。会社の利益をそっくり簿外に貯金し課税を先送りすることができましたから、爆発的に売れた時期があります。

外車で営業活動をし、経費を使うために夜の街に接待が連日連夜などという今から思えば夢物語のような時期がありました。

その後、国税庁の規制が入り、概ね1/2損金になった時期があります。全額損金に比べればおいしさは半減していますが、今にして思えば1/2損金でも企業の資金リスク管理からすれば、十分な価値があったと言えそうです。

逓増定期保険はたびたび損金算入の条件が変わり複雑化してきたため、保険契約を扱う法人の経理担当者には、損金算入額の混乱が起こることもやむを得ないと思います。今一度、お手元の保険証券と契約当時の提案書を見直し、専門家に相談されることも必要ではないかとご案内したかったというのが本心です。

きちんと理解して説明できる税理士さんも、それほど多くないのではないかと思います。ただこういうことは根気よく調べればわかります。

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