相続で見落とす端株の現金化、実際にやってみた手順。

相続で見落とす端株の現金化、実際にやってみた手順。

株式は相続前に証券会社を通じて全部売ったはずなのに、配当の案内が届くことがあります。

株数も中途半端な数で、配当金もわずかですが放置するのもためらわれます。配当の案内は取引のある証券会社ではなく、株式名簿管理人なる信託銀行証券代行部とあります。これってどうすればよいのか、通常の株の売買とどう違うかよくわかりません。

相続で株式を引き継いで、全部売却したつもりが、端株があったなんて聞いていないということがよく起こります。

◆ 端株とは、市場で売買できない単元未満株。

昔から株の売買をされていると、端株(単元未満株)がなぜ発生したのか、それはなぜ証券会社が管理していないか等、経緯が分かっていればご自分で株式名簿管理人である信託銀行証券代行部に買取請求しなくては売れないことも理解できますが、相続で引き継いでしまうと仕組みが理解できていないのです。そもそも普通の株式と端株の違いが分かりません。

簡単に言うと「端株」です。難しく言うと本名は「単元未満株式」となります。

単元未満株式とは売買できる単位に届かない半端な株式です。売買できる単位を一単元と言い、一単元は100株であったり1000株であったりします。なぜ売買できない端株が発生するかと言うと会社分割や合併、減資や子会社化などで発生します。単元未満株は、配当はもらえますが議決権はありません。

一単元に届きませんから市場で売買することはできませんが、株式名簿管理人である信託銀行証券代行部に買取りを請求することができます。また発行会社が単元未満株の買増制度を採用している場合は、発行会社に買増しを請求することで、一単元にすれば市場で売買することが可能になります。

平成21年の株券電子化前に「ほふり(証券保管振替機構)」に株券を預託されなかった端株を株主名簿管理人が管理する特別口座で預かることになったわけです。その後時間がたつと株式として市場で売買できない端株のことは、次第に忘れ去られ、特別口座に取り残されたということのようです。

◆ 相続財産目録で見落としがちな端株の厄介さ。

相続財産の目録を作るときに見落としがちになるのが端株です。通常、株式は証券会社を通じて売買しますので、そのルートを通じ株式を売ればそれで終わりです。特定口座で取引をしていれば、源泉分離課税ですから証券会社を通じて所得税が納税されます。

明細を確認するだけで特に申告を必要としません。

ところが端株が、特別口座にあれば証券会社は関知しません。単元未満の株はそもそも市場で売買の対象とならないのです。特別口座とは特定口座とは異なり、株式名簿管理人となっている信託銀行などが管理しています。一字違いですが、別物の口座です。

そのため、証券会社で保有している株式を全部売却しても、特別口座に端株が残っている可能性があります。特別口座に端株が 残っていても証券会社から案内は届きません。端株と言えども株主ですから、配当があります。配当を通知する案内が届きますから、端株が存在していることを気が付かないことはないようになっています。

しかし実際の株の売買とは全然別のルートで端株は買取請求をしないと残り続けます。見落としがちな端株の厄介さがここにあります。

端株を放置した結果、相続が発生すると売却するためにはさらに手間がかかります。たとえ一株でも、相続してから買取請求する手順になりますから、相続を証明する資料をそろえなくてはなりません。士業の先生にお願いするほどの金額でもなく、下手をすれば売却によって経費がマイナスになりかねないやっかいな存在、それが端株(単元未満株式)なのです。

◆ 相続も買取請求もできない名義株。

端株の中には、先代名義の端株や兄弟名義の端株が残っていることもあります。そのままにしておくと名義株と呼ばれる他人名義の株となり処分するときに困る原因になります。大した金額でもないのに売却するとなると手間がかかり、かといって放置するとさらにややこしくなりそうで他人名義の端株は困りものです。

昔の相続から漏れている端株の買取は、株式名簿管理人である信託銀行に実際に電話して、簡単に買い取り請求を済ませる方法はないか交渉しましたが、サポート窓口の担当者は「たとえ一株でも相続の場合は関係書類をそろえていただく必要がございます。」とのことで、丁寧ながら冷たくあしらわれました。

(関係書類とは遺言書もしくは遺産分割協議書、相続関係を証明する戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、相続人がなくなっている場合は戸籍の除票や住民票の除票など)

ただ放棄できるか聞いたところ放棄するような書類はないが放置はあり得るそうです。しかし郵便物が届くのは何とかしてほしいと言ったところ郵便局に申告して宛名の住民は亡くなっているので受取拒絶をすればよいそうです。それにより自分のものではないと主張することは可能だそうです。少額であれば放置&受取拒絶が一番簡単な方法だと思いました。

■郵便局、受取拒絶

迷惑な郵便物等が届けられた場合、受け取りを拒絶することができます。

不要な郵便物に付箋を貼り、赤のペンで受取拒絶と書き、押印または署名します。それを郵便ポストに投函するか、郵便局の窓口に持っていくと差出人に返還され、以後届かなくなります。 ただし、開封してしまうと返還ができませんのでご注意ください。

相続税の税務調査は甘くない理由をOB税理士が独白。

◆ OB税理士に確認、どうにもならない端株は、放置することも。

資産税担当の元国税調査官であったOB税理士に聞いたところ、端株は適切に買い取り請求することが正しい処理ですが、相続では自分のものではないと主張すること

できるそうです。端株は額が小さいことが多いので相続税の税務調査で問題化することはあまりないという見解でした。

基本的にはやはり、端株であっても財産には変わりがないので、遺言書への記載(端株を遺言書に書くようなことはないので、記載が無いと遺産分割協議が必要)、名義変更等手続きが必要となり面倒なので相続が発生する前に端株の買い取り請求をされることをお勧めしますという判断です。

名義株に関しては、その方が生存されているならその方の名前で買取請求をお願いし、金額がわずかなら、実際の名義の方に贈与してしまうという方法もあり得ます。実際は、真正なる所有者への名義変更の手続きが面倒なので、金額的に大きなものでなければ上記の簡易な方法を検討されてもよろしいかと思います。

名義株のご当人が故人だと面倒です。相続手続き又は真正なる所有者への変更後、買取請求になります。この場合はより手続きが複雑になります。複雑な手続きを取ってまでわずかな金額を取得したくないということなら、手続きをされずに放置し、自分のものではないと主張(相続税では申告しない)することも考えられます。

あまりお勧めできない方法ですが、OB税理士の経験から実際にはこの方法を取ることもあるそうです。結局、放置&受取拒絶がもっとも手間いらずですので、hokenfpが担当したケースもそのようにおすすめした次第です。

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