遺贈寄付がすすまない日本的理由。

遺贈寄付がすすまない日本的理由。

遺贈寄付とは、だれもができる社会貢献です。相続税がかからない庶民でも遺贈寄付はできますから、人生の最後に善行を施すことができます。

ところが、遺贈寄付がなかなかすすまない深い理由があります。その中には日本という国民性によるところに、根本原因があるということもありそうです。

遺贈や贈与、死因贈与については下記の記事に詳しく書きました。遺贈とは、遺言により人に遺言者の財産を無償で譲ることですが、遺贈されるのは人でも法人でもかまいません。

■死因贈与とは、相続・遺贈の違い、メリットデメリット。

■遺贈と贈与・相続人と受遺者の違い、ここを具体的にくわしく。

寄付と贈与は、基本的に他者に財産を無償で譲渡するという点では、同じことです。しかし寄付と贈与で異なるのは、財産を譲渡する相手と公共性です。寄付は公共的な目的のために活動する法人に、財産を無償で譲渡することです。

寄付に該当しない贈与は、贈与する側と受ける側の意志が合致して成立する一種の契約です。

遺言などによる遺贈で寄付をすれば、遺贈寄付というわけです。

■家督相続から法定相続が招いた家族崩壊。

◆ わかりにくい遺贈寄付とは?

遺贈寄付という言葉があまり一般的でないので、よけいにわかりにくいかもしれません。でも死後に相続財産をどこかに寄付することであることは見当がつきます。ただ遺贈寄付の方法にも、いくつかのパターンがあります。

もっとも普通の方法は、遺言書で寄付を指定することです。寄付というからには、財産を公益法人などに無償で寄贈することになります。寄付する先の公共的法人や遺贈寄付の種類を説明しました。

・公共的法人とは?

NPO法人、公益法人、学校法人などの民間非営利団体や、国、地方公共団体などが公共的な法人です。また宗教法人などへ遺贈寄付することも可能です。どこに遺贈寄付するかは、被相続人の意思によります。

・遺言書による遺贈寄付

原則的には被相続人(死亡した人)が、遺言書によって公共的な活動をする法人に無償で財産を譲渡することを遺贈寄付と言います。それ以外にも、相続財産を引き継いだ相続人が故人の意向に従い、公共的な法人に寄付をしても遺贈寄付と言えると思います。

・死因贈与契約で指定

また死因贈与契約により贈与しても、遺贈寄付と言えると思います。死因贈与契約は、死後に財産を受け取る者と被保険者死亡によって効力を生じる贈与契約を締結することで成立します。

・個人信託で寄付を指定

死亡した被相続人の財産の全部または一部を、民間の非営利団体等に寄付することを個人信託で指定することができます。

・生命保険の受取人指定

生命保険の受取人を、寄付したい非営利団体とする契約を締結することでも遺贈寄付ができます。生命保険の受取人指定は、遺言書と同じ効力があります。

・財産の指定方法

特定遺贈と包括遺贈があります。特定遺贈は不動産や現金など特定の財産を指定して遺贈します。包括遺贈は、財産の割合を決めて「半分」のように指定して遺贈する方法です。包括遺贈の方が指定は簡単ですが、分割できない遺産などがあると処理が手間取ることになります。

 

遺言による寄付を遺贈寄付と言います。遺贈を受けた法人には、相続税が課税されません。そのため非課税で寄付ができます。

もちろん贈与税もかかりませんから相続税を払うよりは寄付の方に意義があると考えることもできます。

相続税として税金を払い、何に使われるかわからないよりは、安心できるかもしれません。寄付をすればかかるはずの相続税がかからないのですから、相続税の分も寄付できることになります。ただし公益法人でない株式会社などの普通法人への遺贈は、所得になりますから法人税がかかります。

遺贈寄付を受けたのが個人や法人格をもたないサークルなどの団体組織の場合は、しっかり相続税が課税されますから法人と個人でメリットが変わってきます。

相続税のことを考えると一般社団法人や一般財団法人、NPO法人などに遺贈寄付した方が効果が高いと言えます。

■相続の準備を終活と言わせない整理のコツをまとめ。

◆ 寄付は世界最低水準、保険は世界最高水準、日本の不思議。

日本は保険大国と言われるほど、保険の契約率が高い国なのです。しかし遺贈寄付に限らず寄付全体でみても、世界最低水準に近い個人寄付率なのです。

保険好きの寄付嫌いという、日本人の姿が見えてきます。なぜ日本人は寄付が嫌いなのでしょうか。どこかに遺贈寄付が進まない理由が潜んでいるような気がします。

相続の話にかかわっていても、遺言書で寄付をするという話はめったにありません。相続税がたくさんかかる資産家には、相続税の節税になるので氏神様に遺言書で寄進すればと申し上げても乗り気にはなられません。

寄付するくらいなら後に残る妻や子に残してやりたいという気持ちのようです。寄付という言葉に先立つ本音の気持ちは「お金が惜しい」ということのようです。

■おひとりさま相続とおふたりさま相続、遺言書が絶対必要な理由。

◆ 遺贈寄付の被害者は相続人。

日本人の場合、お金持ちほど寄付嫌いという傾向は、確かにあるように思います。遺贈寄付は、相続財産を相続権のある相続人以外に、おすそ分けする行為です。

被相続人が遺言をすると遺言者となります。遺言者が遺言に寄付を書けば、その結果相続人の取り分は当然少なくなります。

遺産をあてにしている相続人にとれば遺贈寄付ほど意味がなく、面白くないことはありません。自分がもらうべき財産を、他人にタダでくれてやるわけですから納得できない気持ちもわかります。

遺贈寄付がかかれた自筆証書遺言を発見した相続人は、何を考えるでしょうか。公正証書遺言で遺言執行者が指定してあれば、さすがに従うよりないでしょう。

しかし相続人全員が遺産分割協議で合意すれば、遺贈寄付を反故にする可能性がないとは言えません。遺言者だけでなく、相続人が遺贈寄付の障害となり得ることもありそうです。

遺贈寄付を確実に実行したければ、遺言書で遺言執行人を指定し、そのことを相続人と遺言書執行人に周知しておくことです。そうすれば遺言書を握りつぶされるリスクを少なくすることができます。

◆ 遺贈寄付がすすまない日本的理由、まとめ。

ふるさと納税は寄付の一種ですが、寄付本来の社会貢献とか自尊感情や幸福感を高める効果とはズレがあります。動機が少々不純ではありますが、寄付の目的が節税ということはあり得る動機です。

日本人が寄付嫌いな理由は、寄付の管理団体に対する不信感、経済的余裕のなさ、寄付の手がかりが少ないなどがあげられます。

一番大きな要因は、日本人が根本的には個人主義的で寄付をすれば、自分のお金が減るだけと考えていることです。寄付をするよりも貯蓄が大事であり、なにより現金を抱えている安心感、という日本人の気質だと思います。

老後の備えとして貯蓄するか投資するか、寄付するかとなれば貯蓄を選択するのは日本人的な感覚だと思います。

また普通の寄付であれば、感謝の言葉やお礼状が届くかもしれません。でも遺贈寄付では遺言者にとれば、死後の寄付になりますから、あの世までは感謝が届かないということはデメリットかもしれません。

筆者の場合で自問してみても、寄付しようという発想がありません。少ない財産を遺贈寄付しようなどとは思いつきません。しかし、もう少し日本人も社会性のある国民性をはぐくむ必要がありそうです。

せめてウクライナ向けのクラウドファンディングに協力するとか、ユネスコに寄付をして恵まれない子供たちの支援をするとか。

ところが、憤慨したり同情したりするものの財布のひもは固い、うーんやはり日本人の気質のようです。

相続人以外への遺贈は2割加算、生命保険の受取人が孫なら2割加算 。

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