死因贈与とは、相続・遺贈の違い、メリットデメリット。

死因贈与とは、相続・遺贈の違い、メリットデメリット。

死因贈与とは、遺言書とは別に贈与者の死亡を原因として、贈与が発生する契約です。前回の記事に続き、死因贈与を取り上げます。相続には関係しますが、遺言書と直接の関係はありません

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 意味不明な「死因贈与」の補足。

死因贈与というだけでは、意味することがよくわからない言葉について、補足が必要になります。実は被相続人の財産を引き継ぐ方法として、前回解説した相続や遺贈だけでなく「死因贈与」という方法があります。

被相続人の死亡を原因として財産を受け継ぐのですが、遺言でもない贈与契約です。

贈与というのは、契約書がなくても贈与者と受贈者の口頭での合意があれば成立します。財産をあげる人は贈与者、もらう人は受贈者といいますが、死因贈与では贈与者が死亡したことを条件に、生前に贈与の約束をした財産を受贈者に贈与することになります。

◆ 相続と遺贈と死因贈与の違い。

相続・遺贈との違いについては前回の記事に書きました。

■遺贈と贈与・相続人と受遺者の違い、ここを具体的にくわしく。

遺贈との大きな違いは、死因贈与は双方の契約であり、遺贈は「遺贈者の一方的な意思表示による単独行為」ということです。贈与者ともらう人との間に契約関係としての合意があるかどうかが根本的な違いです。死因贈与は贈与者と受贈者の合意が前提となります。従いまして、受贈者が死因贈与契約を知らないということはありません。

相続は被相続人の意志にかかわらず、死亡を原因として自動的に発生します。ところが遺贈や死因贈与は、被相続人が遺言書を書いたり贈与の契約をしたりしないと起こりません。被相続人能動的な意思表示があって、遺贈や死因贈与が起こります。

◆ その手があったか!死因贈与のメリットとデメリット。

死因贈与は相続に関係しますが、そもそもが、単純な「あげる・もらう」の贈与ですから遺言書のような厳格なきまりはありません。

あげる人(贈与者=被相続人)がもらう人(相続人とは限りません)と贈与の約束をすれば、本来口約束でもかまいません。しかし死因贈与契約書のような書面で残した方が、相続にからんできますので確実です。

そういう死因贈与ですが、あげる人が死亡することで贈与が発生しますから、原則として遺贈と同じ規定の適用になります。遺言ではなく遺贈の規定ですから、相続人より不利な受遺者の権利と同じになります。

死因贈与は贈与とは言え、贈与税ではなく相続税がかかります。また他の相続人との関係も受遺者と同じで、権利が制限されています。通常の贈与の様に単純にもらったから贈与税を払えば、それで受贈者のものになるというわけではありません。

ただ死因贈与に使い道とメリットがあります。もちろんデメリットもありますので、素人考えで適用するのは考えものです。そこそこ経験のある専門家に相談しないと遺言書でよいのか死因贈与を利用すべきか、簡単には判断できないと思います。

・死因贈与の税負担は損か得か?

死因贈与は贈与ですが、贈与者の死亡を条件としていますから相続税の対象となります。贈与税は相続税の補完税と言われますが、基礎控除が大きい相続税の方が税負担では有利になることがあります。また不動産を死因贈与で取得した場合、受贈者に相続ではかからない不動産取得税が後から来ます。

ですから相続させればよい相続人に、あえて死因贈与すると本来不要な不動産取得税がかかり損になります。他にも不動産を登記するときに登録免許税がかかります。死因贈与での所有権移転登記の税率は、相続による登録免許税に比べて0.4%が2%となり、かなり高くなります。税負担の損得勘定は結構複雑ですので、死因贈与の契約をする前に専門家に相談するなどしてよく考える必要があります。

・死因贈与は贈与者の死後放棄できない。

贈与者が存命中は、契約ですから取り消すことができますが、贈与者が亡くなってしまうと撤回できなくなります。贈与者と受贈者との合意で成り立つ死因贈与ですからら、贈与者がこの世にいなくなれば、もはや合意を破棄できないというわけです。贈与者にはメリットかもしれませんが受贈者の選択肢はなくなります。

・負担付死因贈与契約の逆メリット。

死因贈与には負担付というのもあります。何々してくれたらこれをあげます、という条件付きの贈与です。介護で世話をしてくれたら不動産を死因贈与するなどという契約です。負担付の介護が始まれば、贈与者は契約を勝手に破棄できません。負担付死因贈与では、受贈者の権利が守られています。この点は受贈者にメリットかもしれません。

・死因贈与も遺留分を侵害できない。

難しく言えば死因贈与は、遺留分侵害額請求の対象となるというわけです。これは相続にからむ以上仕方がないことです。死因贈与でもらった財産が、相続人の遺留分を侵害していれば返さなくてはなりません。

拒否すれば遺留分侵害額請求という訴訟に発展することになります。遺留分侵害額請求の優先順位は「遺贈」「死因贈与」「贈与」の順になります。

・死因贈与の対象が相続人以外の場合、相続税の2割加算。

これも遺贈と同じルールですが、相続人以外に死因贈与すれば相続税は2割加算となります。本来権利がないところを、棚ぼたの死因贈与ですから、これは仕方がありません。

・死因贈与での「始期付所有権移転登記」が可能。

死因贈与では、贈与の契約をもとに所有権移転登記の仮登記ができます。要するに所有権移転登記の予約ですね。これは不動産を死因贈与された受贈者の権利が守られるというメリットがあります。こうなると他の相続人にとっては面白くない死因贈与です。

■遺言書優先の原則と遺産分割協議の矛盾について。

◆ 死因贈与の活用方法、まとめ。

死因贈与という相続の脇道のような制度を見てきましたが、れっきとした法律行為ですから、遺言書と同等の法的な効力をもちます。

民法には以下の様に定められています。

民法第554条 贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。

死因贈与のメリットは、どうもよくわからないところがあります。ただ、生前に世話になった人に死因贈与できるというのは、贈与者の意志を明確にできて、受贈者の権利も明確になりますから双方に安心感があると言えます。

本来で言えば、遺言書で指定すればそれでよいのですが、死因贈与では生前に財産分与を指定できることになります。

生前の契約ではあっても贈与者の死亡を原因として成立する贈与ですから、バカ高い贈与税ではなく相続税になる点もメリットかもしれません。

負担付死因贈与契約ということも、介護時代には増えてくると思います。遺言書より簡単で厳格な決まりがなくても、有効な死因贈与契約は相続税がかからない貧乏所帯にも使える仕組みかもしれません。財産が少ないほど争族は多いという事実がありますから、介護などで世話になった方に財産のいくばくかを贈与したい場合は、遺言書か死因贈与契約書を必ず作成しておきましょう。

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