法人保険の失効に失敗した無能代理店。

法人保険の失効に失敗した無能代理店。

法人保険でも節税保険は利益の繰り延べを主な目的としています。設備投資が遅れて出口のタイミングが合わないようなときは解約を先送りしたいと思いますが、そのときに使う手に保険契約の「失効」があります。

保険料を支払わずに猶予期間を過ぎれば保険は失効します。失効すれば契約の効力がなくなりますので保障がなくなります。しかし解約返戻金はそのままの返戻率で継続されます。失効の期限は3年ですので、さらなる繰り延べが可能になり、

その間に出口対策を組み合わせて、解約時雑収入の納税額を抑制できるというわけです。

ところが失効は失敗することもあります。どういったケースが危ないのか、失効を失敗した理由、そういう場合どういった手があるのか、そして頼りにならない保険代理店に対する愚痴も重なります。

◆ 法人契約の節税保険は失効と出口対策が重要。

失効させる前にそうまでして利益を繰り延べる意味がどこまであるかを理解しておかなくてはなりません。税理士の先生のなかには節税保険は、利益の繰り延べに過ぎないと言われることがあります。

確かに出口対策ができていないと出口で課税されることになりますから節税ができていないということになるかもしれません。しかし繰り延べに過ぎないと言う方は、経営ということが理解できていないと言わざるを得ません。

コロナ禍やウクライナ危機による景気悪化、燃料高騰、為替の極端な円安など先行きは常に不透明なのです。まったく何があるかわからない経営環境だからこそ繰り延べは経営資金の保険として重要な意味があるのです。もちろん出口対策ができればそれに越したことはありませんが、中小企業にとれば税金の支払いを繰り延べて簿外に資金を蓄積しておくことはそれだけで十分価値があるというわけです。

ゆえに失効というテクニックは究極の利益繰り延べ手段として、検討に値する価値があります。

◆ 法人保険の失効に失敗した理由。

今回の事例はエヌエヌ生命の低解約返戻金型逓増定期保険です。またこのケースは団体事務手数料3%とその消費税が保険料から割り引かれているというややこしいケースです。

多数の保険契約の中の一件だけが解約返戻率のピークを迎えており、解約する必要があるのですが、当面雑収入は先送りしたいという事情がある場合です。

失効させるためには口座振替を振込に変更し保険料の支払いをストップしなければなりません。ところが今回の場合は多数の契約の内一件だけを失効させたいわけですから団体取扱いから切り離さなくてはならないという問題があります。契約全体を口座振替から振込に変更することはできるのですが、団体契約からの切り離し失効という手順は簡単ではありません。

さらに一般的には口座振替の場合、契約応当月の月末が多いのですが、例外的にエヌエヌ生命の口座振替のタイミングは契約応当月の1日振替となっています。そのため「団体扱等保険料お払込のご案内」が契約応当日の1カ月半以上前に届きます。

その案内で事務手数料とその消費税を割引いた口座振替の金額を指定しており、口座振替を取り扱う収納会社に振替データが送られてしまっているので元に戻せないのです。では銀行で支払いをストップすればよさそうなものですがこ、れがまた困難があります。まず団体取扱い契約ですから保険料の一部だけを停止するということができません。さらに口座振替を扱う収納会社は同時に他の契約の口座振替がある可能性があり、銀行に口座振替収納代行会社を指定して支払い停止することもできますが、これはほかの口座振替に影響を与える可能性があり、やはりリスクがあるので止めることはためらいがあります。

エヌエヌ生命に限らず口座振替の案内が保険会社から来た段階で口座振替を銀行で止めることはむつかしいと考えなくてはなりません。銀行と明細を確認して停止できないか確認したことがありますが、それは無理との回答でした。

◆ 保険契約、失効失敗の損失関係を考察。

エヌエヌ生命の低解約返戻金型逓増定期保険の解約返戻率の一部ですが、

5年目90.78%
6年目88.68%

となっています。5年目のピークを逃すとその差2.1%減となります。わかりやすく保険料を仮に1000万とすれば5年で5000万支払っています。その解約返戻率が2.1%下がると解約返戻金は105万の損失になります。しかし、6年目の保険料1000万が損金となり実効法人税率が35%であれば350万の納税が繰り延べられます。結論的に申し上げると、失効失敗の損得勘定は経営判断に関係します。というのは、その後の出口対策で損得勘定が決まるからなのです。

解約返戻率は若干低くなりますが、6回目の保険料を払ってから失効させて出口対策に合わせるようなことが可能であれば最もお得になるわけです。5年目の出口対策ができていないと言うのであれば2.1%分の損失を覚悟してその後失効させて解約時期を繰り延べるか、即時解約するかという判断が求められます。契約応当日までに解約の一件書類が提出できれば、保険料が振替えられていても解約はできます。もちろん払い過ぎた保険料は返金されます。

通常は、もう少し余裕があるはずですが、たまたま口座振替と団体扱い、さらには振替日が契約応当月の1日という特殊な部類に属する事例でした。口座振替の明細が届いた段階で気が付いたとすれば、その時点で失効させることはできずに、選択肢は解約返戻率ピーク時の5年目に解約してしまうか、解約返戻率が下がるのを覚悟して6回目の保険料を振替えさせたうえで、失効させるなどの方法で解約を先送りするかの選択になります。今回のケースでは、解約返戻率のピーク時に失効させるという選択肢を失っている点で失効は失敗になります。

失効できない場合解約も選択肢です。エヌエヌ生命のサポートによれば契約応答日の前日の午前中に解約請求書および一件書類が揃えば口座振替された保険料は翌営業日の午後には返金されるそうです。

うまく利用すれば解約返戻金及び保険料の返金は翌期に先送りすることができるかと考えましたが、さすがに迅速すぎてそれはできませんでした。事務手数料の割引は返金されないはずなので、返金額は保険料満額とはならず、戻るのは払った分だけとなります、と思ったら他の契約もあるため満額返金となるそうです。どうもしっくりこない話で経理処理がややこしくなります。

エヌエヌ生命のような事例もありますので、失効させる契約があればせめて3カ月前までに口座振替から振込に変更するという用心深さが必要であったということです。

保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

◆ 法人保険の失効に失敗しないためには、まとめ。

世間には役に立たない無能な保険代理店もあります。売るだけ強引で契約をもらった顧客の保険の解約返戻率がピークとなる解約時期を案内できないのです。そういうレベルの代理店と付き合ったことがそもそも判断ミスということになります。

バレンタインショックで多数の駆け込み全損保険が多数契約されましたが、その解約返戻率のピークがあと6年~7年でやってきます。多くの業績の良い会社は利益の繰り延べはできましたが、それに見合う出口対策ができているとは思えません。

巨額の雑収入になると思いますから、減額したり失効させたりして雑収入を分散させると同時に、きるだけ解約時期を先送りしたいところだと思います。その際に失効をうまく利用することは有効な手法なのですが、結構、いろいろな落とし穴が待ち受けていてあわてることになそうです。前回の記事と今回の記事は、実務的にかなり細かいところを紹介していますから保険の経理事務を扱う担当者でないとわかりにくいかもしれません。

若干手間はかかりますが、口座振替はやめて早めに振込に変更することが安全策です。またあてにしていても代理店の営業は人が入れ替わります。その結果、自分が取り扱った契約でないものには無責任になるということがあります。ただ売り込むだけの無能な代理店にはご注意をと申し上げておきます。

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