パワハラのリスクは保険でカバーできるか?部下指導の認識相違がアブナイ!

パワハラのリスクは保険でカバーできるか?部下指導の認識相違がアブナイ!

2022年4月からパワハラ防止法の義務が、中小企業や個人事業主まで拡大されました。ハラスメントとは嫌がらせと言う意味です。パワーハラスメントとは地位の高いものが、自らの立場や権力を傘に嫌がらせを行うことです。パワハラを受けたと主張する従業員から訴訟を受けると裁判になります。

ハラスメント行為による損害賠償が認められると、多額の賠償金の支払いが発生する可能性があります。そのリスクを補償するのがパワハラ保険です。

リスクのある所に保険ビジネスはあります。しかし中小企業の現場に籍を置きその実態の厳しさを知るものとして言えば、パワハラ保険の意図するところは経営上の自己矛盾をあぶりだしてしまうような気がします。

■パワハラの誤解はハラスメント、経営者の視点で切り分け。

◆ パワハラと部下指導の認識相違がアブナイ。

社員は厳しく指導しないと成長しません。高めの目標を与えて困難に立ち向わせ、その結果、試練を乗り越えて一人前になるのです。ブラック企業ならずとも社員には厳しく指導・教育するのは、むしろ企業として当然です。

戦力にならない社員を多数抱えても、会社の利益にはつながらないからです。指導される社員にすれば、適応して努力するか、被害者意識が嵩じて抑うつ状態に陥るかはその社員の資質にもよります。

概して言えることは、体育会系の社員はタテ型になれています。それゆえ打たれ強く、一方文科系の社員は自己主張が強く、厳しい指導に対して抵抗力が弱い傾向があります。」

・転職先で役に立つ社員に仕込む。

経営の立場から言えば、パワハラを気にして優しいことばかり言って社員をおだてていてもよくありません。自分の問題点に気づかず、本人が成長しないと言うことがあります。さらにそればかりか、ダメ社員となって組織の歯車が狂うことにすらなります。パワハラと一口に言っても部下指導という観点から見れば、双方の認識には大きな隔たりがあるように思います。

たとえやめて転職することになっても、転職先で役に立たない社員にならないよう仕込んでやるのが親心と言うものです。これから先の時代では、労働者の売り手市場になり、ステップアップを求めて転職を選択する社員も多くなると思います。やめていくことを前提に、よそへ行っても恥ずかしくない社員に育てておくというくらいの指導が必要になるでしょう。

■社長が怒鳴るとパワハラ、恫喝より品格が社長の責任。

◆ 厳しい目標、叱責はハラスメントか。

「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」といって無理難題を押しつける経営者がいます。社員を追いつめる指導は、パワーハラスメントになるのでしょうか。

人の成長は、外部からのインプットによってしか成し遂げられません。指導が甘いとぬるま湯にどっぷりつかる、いわゆるゆでガエル社員になってしまうのです。

ハラスメントとは、社員に対する嫌がらせやいじめなどの迷惑行為を指します。しかし受け取る側の社員によってパワハラと厳しい指導は紙一重になります。ただ厳しい指導とは言えその社員の属性や人格を否定するような言動は、避けなくてはいけません。

結果的に、その社員が不快感を覚え自分の尊厳を傷つけられたと感じるところからパワハラへと進みます。ただ、社員のうかつな失敗や怠慢な行動に対して叱責することは、組織として当然あるでしょう。

そこにパワハラ訴訟のリスクがあります。上司にすればパワハラを意識して部下を責めるようなことはないと思います。でも意識しないうちに、結果パワハラになっているということもあり得るわけです。そこにハラスメント行為による損害賠償を補償する、雇用慣行賠償責任保険の可能性があります。

◆ 雇用慣行賠償責任保険(パワハラ保険)とは?

雇用環境が変化していることを感じるようになりました。雇用されている労働者の立場が一層強くなり、一つ間違うと訴訟リスクがあり得ます。一口に雇用リスクと言ってしまえば簡単ですが、実際は解雇に関わるトラブルやハラスメントによる慰謝料請求などによる可能性があります。

たまたまAIG損保の雇用慣行賠償責任保険の資料に目を通していましたが、労働相談件数は、10年連続で100万件を越えているそうです。これらがみんな訴訟になるわけではありませんが、以前よりリスクの高まりはあると思います。

雇用慣行賠償責任保険では、弁護士費用や賠償請求に対する保険金の支払があります。保険で対応するようなことでもないように思いますが、ニーズがあるから保険がるわけです。今後、雇用リスクに対する対応が必要になるかもしれません。

従業員と企業の間のトラブルは多様化しています。ハラスメントや不当解雇など雇用トラブルに備える場合、有効な保険が雇用慣行賠償責任保険(パワハラ保険)というわけです。

・パワハラ防止法を無関係と考えない。

多くの経営者にとれば、パワハラ防止への取組みが法律上義務化されたことは自分には関係ないことと考えておられると思います。しかし、世間の見方は大きく変わっており、パワハラなどの労働者に不利な状況は、事業主が責任を問われやすい環境になりつつあります。

ハラスメントなどの雇用トラブルの被害者が声を上げやすい環境になり、事業主にとって賠償リスクの増加があると思います。このような従業員と企業の間のハラスメントや不当解雇などのトラブルに、備える保険として、雇用慣行賠償責任保険(パワハラ保険)が有効になっているということのようです。

■中小企業の経営課題はその日暮らし、体験を側近が語ると泥縄経営。

◆ 改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)の限界。

パワハラにより自らの命を絶つという、悲惨な事件もありました。ハラスメント行為を問題視する傾向の高まりは、社会的な風潮です。これまで泣き寝入りであったハラスメント被害者が声をあげやすくなった点も、パワハラ保険が急増している背景にあると思います。

パワハラを受けたら転職すればよいではないかと思う方もあると思います。しかし未熟な社員では、そういう開かれた選択肢が見えなくなり抑うつ状態になります。

家族が同居していれば、気が付いてアドバイスもできるかもしれません。でも独立して暮らしていると知らない間に手詰まりとなり、逃げだすことすらできなくなります。そういう悲劇を防ぐためには、パワハラ防止法に抑止効果を期待できるかもしれません。

ただパワハラ防止法は、中小企業の泥縄経営の実態が見えているわけではなく、法律だけが先行している感じがします。果たしてパワハラ防止法で抑止できるかどうか、コロナ禍で返済に迫られている中小企業に、そのような配慮ができる余裕があるかどうか、現実を見ると限界を感じるところです。

◆ 中小企業のパワハラ保険と自己矛盾まとめ。

パワハラ保険は、損保会社から販売されています。安い掛け金で、裁判費用や賠償責任が発生したら賠償額の支払いにあてることができます。あくまでも加害者になり得る企業側の補償です。会社に所属する従業員が取引先から賠償責任を問われた場合は対象外です。

雇用慣行賠償責任保険、人呼んでパワハラ保険は中小企業にとり図らずも自己矛盾をあぶりだす結果になっています。

社員は高い目標をあたえ追い込んでいくから成長するという考えの経営者がいます。そういう方には、まさにパワハラ保険とは何を寝ぼけたことを言っているのかということでしょう。

しかし世相は変わり、あたりまえの指導が苦痛になる脆弱な社員も入社してきます。嫌ならやめたらいいだろうという考えは通用しません。そこに雇用慣行賠償責任保険(パワハラ保険)のビジネスチャンスがあるように思います。

高齢社長が引退しないと困る理由、本音はやめたくない。

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