パワハラの誤解はハラスメント、経営者の視点で切り分け。

パワハラの誤解はハラスメント、経営者の視点で切り分け。

経営者というのは、それぞれが違う性格の社員を同じ方向にまとめあげ、仕事をさせることが仕事です。言い方はよくないですが、やくざ的なパワハラの要素もなくては組織を動かせないということがあります。

一度や二度言っただけでは人は本質的に理解しないし、また動こうとはしないのです。協調型の経営者では、社員を畏怖(いふ)させることができないので、経営はどんどんぬるま湯化します。その結果、会社の経営が思わしくなくなって一番迷惑するのが社員です。

■パワハラのリスクは保険でカバーできるか?部下指導の認識相違がアブナイ!

◆ パワハラとは?厚労省の6類型の分類。

パワハラの元にあるのは、人間としての好き嫌いかもしれません。好き嫌いは、意識せずに態度に出てしまうことも多いと思います。十人十色と言いますが、どこにでも馬が合わない人間はいますし、まわりには優秀な人だけが集まってくるとは限りません。

パワハラの定義

職場におけるパワハラについて定めた法律があります。改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)と呼ばれています。

労働施策総合推進法の中の、第30条の2第1項で、パワハラおよび企業が講ずべき措置について下記のように定義しています。

第三十条の二
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

法律用語ですから、固い表現になっています。経営者の本音から言えば、余計なおせっかいというべき内容でしょう。パワハラの3つの要素として下記が挙げられています。

職場におけるパワハラ:三つの要素

・職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性(優越的な関係)を背景としていること。

・業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えること。

・労働者の職場環境を悪化させる行為。

経営者や上司は常にパワハラの加害者側になります。部下に対しての言動や行動ですから、職場内の職務上の地位の優位性は、必然的について回ります。

業務上の適正な範囲とは何か、これは定義できていません。精神的・身体的苦痛を与えるとありますから指導を受けた部下にしかわからない感情だと思います。

そういう意味で、パワハラの被害者と加害者の関係は行き違いを基礎にした、ミスマッチな思いの交錯と言えるのではないかと思います。

厚生労働省では、職場のパワハラを下記の6種類に分類しています。

6種類の職場のパワハラ

【身体的な攻撃】:身体的な攻撃とは、暴行や傷害など身体的接触を伴う行為

ミスをした部下を殴る

部下の椅子を蹴とばす

相手に物を投げる

職場での暴力は、パワハラ以前に許されない行為です。しかし、問題社員が返事を渋っているときなどは、机をたたいて威嚇したり、書類を破いたりする行為はパワハラになるのでしょうか。

シャープペンやティシュボックスが飛んでくるようなことは、どこでもありそうです。接触を伴わない威嚇的な行為は、どうもクレーゾーンになるようです。

【精神的な攻撃】:精神的な攻撃とは、脅迫や名誉棄損、侮辱、暴言など、接触を伴わない攻撃のこと

ほかの従業員がいる中で人格否定する

日常的に大声で怒鳴りつける

クビや解雇をにおわせる発言をする

怒鳴るということがありますが、大声で呼ぶという意味のほかに声高く叱りつけるという意味になることもあります。怒鳴れば、ほかの社員にも聞こえ、何事かと振り向くでしょう。

決め台詞は「嫌なら辞めろ!」ですが、これは解雇をにおわせているかもしれません。精神的な攻撃という類型はかなり広範囲に及ぶと思います。個室に呼んで叱責しても、叱られている側からすればパワハラです。

【人間関係からの切り離し】:人間関係からの切り離しとは、本人の意に沿わない形で、同僚や上司との接点を意図的に切り離す行為

特定の社員だけ故意にミーティングに呼ばない

挨拶されても無視をする

気に入らないという理由でプロジェクトから外す

できない社員は、当然プロジェクトから外します。和を乱す社員も同僚から意図的に切り離すことがあります。できない社員は、迷惑ばかりかけますから気に入らなくなり、挨拶もぞんざいになります。

本人の意向ばかり尊重していて、組織管理はできません。しかし切り離された社員からすれば、パワハラになってしまいます。

【過大な要求】:過大な要求には、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などが該当

不要な深夜残業を強いる

適切な指導がなく業務を丸投げする

自分の家の掃除をさせる

不要な深夜残業をさせて、割増時間外の手当てを払う会社はないと思います。業務というのはわずかに本人の能力以上のこと要求し、乗り越えさせて一人前にするためです。

手取り足取り教えることはせず、自分で考えるように仕向けます。指導とパワハラの境界は、相互の誤解によりどちらにも動きます。また社宅や寮ならいざ知らず、個人の自宅の掃除をさせるようなことはないと思います。

【過小な要求】:過小な要求とは、業務上の合理性なく、当人が持つ能力や経験に見合わないような程度の低い仕事を命じること

特定の社員にだけ理由なく仕事を与えない

専門職の従業員に誰でもできる仕事ばかりを課す

能力が低いからと掃除のみをさせる

過小な要求をしたいわけではなく、能力が伴っていないから止む無く無難にできる仕事を与えるというところかと思います。社員には給料を払っているわけですから、できるだけレベルの高い仕事を与えて生産性が上がるようにしようと考えるのが普通です。

できない社員と再雇用の高齢社員には、負担の少ない業務を与えます。力があっても職場の和を乱すなら、経験に見合わない仕事を命じることもあります。よほど特殊なケースでないとパワハラとは言えないように思います。

【個の侵害】:個の侵害は、プライベートな内容に対して過度に立ち入ること

飲み会や行事への参加を強制する

退勤後の予定を提出させたり、無理やり聞き出したりする

有給休暇を取得する理由を細かく聞く

飲み会や会社の行事には、積極的に参加をお願いするのはあたりまえです。事情がない限り協調すべきものですが、人によっては強制と感じるのかもしれません。

有給を取る場合、理由は不要と言いますが、簡単に事情を説明しておくことで、納得が得やすくなり協力もしやすくなります。プライベートは言う必要はないと言いますが、お互い人間ですから、ちょっとした配慮で気持ちよく休めます。

■社長が怒鳴るとパワハラ、恫喝より品格が社長の責任。

◆ いじめ・嫌がらせによるパワハラ相談が9年連続でトップ。

厚生労働省の個別労働紛争解決制度施行状況によると、民事上の個別労働紛争の相談件数での相談内容は「いじめ・嫌がらせ」が9年連続トップとなっています。

職場で発生するいじめや嫌がらせは、どこにでも起こり得ることです。多くの紛争では被害者感情が先行し、本当のパワハラかどうかは疑わしいということもあります。

中小企業のワンマン経営者にとって、部下指導をパワハラと言われたのでは経営できないということにもなります。パワハラと厳しい指導の線引きは難しいです。

しかし経営者の従業員へのパワハラともなれば、経営責任が問われ、もたらした結果によっては、多額の賠償責任を負う法的責任に発展するおそれもあります。上に立つものは、時代が変わったことを認識して注意する必要があります。

人には個人差があり、同じ言葉でも受け取り方が違います。個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりすることは珍しくありません。業務上の適正な範囲で行われている厳しい指導は、パワーハラスメントには当たらないとすることを明確にすべきところです。

◆ ワンマン経営者は、プーチンのパワハラ。

中小企業によくあるワンマン経営者は、社長以外の幹部社員も含めて全部平社員扱いというケースがあります。

決定権や決済権は社長一人に集中しており、組織表の肩書や職務権限は形だけとういことは、どこかの独裁国家のようによくあるケースです。別世界のようなものですが、その強権体質に適応したイエスマンだけが生き残れます。

基本コンセプトと言えば「嫌なら辞めろ!」であり去る者は追わず引き止めずです。

組織としての会社からすれば、全く理不尽な話ですが、中小企業とはそうした手前勝手な理屈を覆い隠して、体裁だけ取り繕った独裁国家でもあります。

体験的な要素も含まれますが、実態は下記のキーワードから推測をお願いします。これをどこからパワハラとするか、簡単に判断できるものではないということです。受ける側が忍耐できれば、それはパワハラではないというようなことにもなります。

・若干極端な事例をあげておきます。これでも耐えていきます。

パワハラ気質は感情的、短気で激高、思惑違いで怒鳴る、暴言を吐く、物を投げる、書類を破り捨てる、幹部社員の意見を聞かない、外部の意見を聞き社員を信用しない、執念深く必ず報復する、善悪関係なく不忠に対して始末書を命じる、出社停止を命じ無視する、組織的に降格する、支店へ左遷する、賞与を激減させる、昇給させない、幹部社員に無理やり同意を強要し組織的な意見のように繕う、自分の考えが全て正しいと思っている、好き嫌いで評価や人事を決定する、感情がコントロールできない、朝令暮改ではなく朝礼即改で言うことや指示が毎回変わる、何でも口出ししてくる、気に入らない社員や抵抗する社員を迫害し退職に追い込む、社長の都合で休日出勤を命じる、いつでも個人携帯に電話してくる、誰から給料をもろてるかと支配的地位を誇示、責任を転嫁し押しつける、暴走や間違いを止めるには退職覚悟、自分の感覚・経験で物事を決定し偏りがある、人事評価は形だけで好き嫌いのブラックボックス。

一体どんな会社に居たのかと思われるかもしれませんが、ワンマン経営者とはどこも同じようなプーチン状態です。この結果、幹部社員は保身を優先し、イエスマン集団になり下がります。経営者の判断による不正を抑止できなくなります。

しかし社長に取り入ろうとして報連相のやり過ぎが身を亡ぼすこともあり、適度な距離感が必要です。社長の意向をくんだ意見に終始し、問題点に触れなくなり会議で意見を言わなくなります。

社長から「言いたいことがあれば言え。」と言われて真に受けて意見すれば身の破滅を迎えます。また自分から動いて叱責されるより、指示待ち社員ばかりになります。

辞めたかったら辞めれば良いと、人は簡単に言いますが、そう簡単に転職や退職ができないことは年齢的にもあるでしょう。

◆ 経営者の視点は無意識のパワハラ、まとめ。

中小企業の経営者というものは、やはり聞く耳をもちつつ、腹が立てば叱りつけてでも人を育てなければ会社は組織として維持できないということです。甘いばかりでもいけないし、厳しすぎてもやめてしまいます。

多少陰口をたたかれても、強力なリーダーシップをためらってはいけません。しかし、納得できない話でも見方を変えると一理あるということもあります。時折は立ち止まって人の話を聞いてみるぐらいの心の余裕と広さは、経営者に必要だと思います。

経営のかじ取りは難しいですが、聞く耳をもたずに一目散に突き進むだけでなく、幅広い視点も必要になります。経営者はパワハラを恐れて、厳しい指導をためらっていては経営という競争市場では生き残れません。

ただ時代も変わってきましたから、相手の立場になり言葉を選ぶ、パワハラになっていないか時折自省する余裕も必要かもしれません。

経営者の立場なのか、雇われの身の上を嘆いているのかわからないような記事内容になり失礼しています。言えることは、パワーハラスメントはセクシャルハラスメントと同じように、受け取る側の性格や意識によって感じ方にかなり個人差がでます。

業務上の適正な範囲で指導することは、内容的に多少厳しくてもハラスメントには当たらないとすべきは当然です。経営者としては、パワハラに対して過剰反応して用心し過ぎることも、社員の成長という点で、注意する必要があるように思います。

恐怖の質問検査権、税務調査で電帳法改正の狙いが明らかに。

元国税調査官の自己矛盾を暴くと驚く話が山盛り。

Pocket

「パワハラの誤解はハラスメント、経営者の視点で切り分け。」への2件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です