法人保険の解約返戻金を整理してキャッシュフローを把握せよ。

法人保険の解約返戻金を整理してキャッシュフローを把握せよ。

法人で生命保険を契約する理由は、万が一に対する備えとして事業保障がありますが、もう一つはキャッシュフローの確保ということがあるように思います。

毎年保険料を払い続けると保障が継続されるだけでなく、解約返戻金がしっかり貯まってきます。今でこそ損金で費用化できて解約返戻率が高い保険商品は、ほぼなくなりましたが、既契約の中には全額損金で簿外に利益が蓄積され続けている保険契約も少なくないと思います。

経営上のピンチなどでいざというとき、あるいは投資計画の資金準備などで手持
ちのキャッシュを確認するとき、契約中の生命保険の解約返戻金の推移をある程
度把握しておく必要が出てきます。しかしながら、法人保険の契約はいつしか数
が増え、それが整理できていないとキャッシュフローが設計できず困ることになります。

経営者ならわかる全損保険と簿外資金の真価。

◆時代は不確実、最後のものを言うのはキャッシュ。

世界情勢はかつてないほど不安定化しています。コロナ禍は終息が見通せない状
況が続き、為替は異常な円安水準に張り付き、経営環境も一段と厳しさを増して
いるという状況です。物価だけが上がり、中小企業は値上げ出来ずインボイスに
振り回されています。コロナ禍で大盤振る舞いされた無利子融資も返済期限が迫っています。

経営において一番困るものはキャッシュフローの確保です。キャッシュが乏しけ
れば、打って出る経営どころか守る経営も怪しくなります。不確実な時代に最後
にものをいうのはやはりキャッシュなのです。

利益が出たときに働きアリのごとくせっせせっせと節税保険に投資し、簿外資金
をしこたまため込んだ企業は、不確実な冬の時代でもいざというときのキャッシュに困ることはありません。キャッシュの有難さは枯渇して初めて実感します。

◆ 既契約の全損保険の解約返戻金は簿外資金。

バレンタインショック以前に契約した損金保険は、簿外に資金が蓄積されます。
保険料を費用で落としていますからB/S(バランスシート)には出てきません。簿外資金と言う意味は、課税当局にも銀行にも捕捉されない保険契約者だけが知っている(保険会社は知っています)隠し資金という意味があります。

解約返戻金は保険会社との契約に基づくものですから、解約請求書を調整して保険会社に送れば無条件に一週間程度で現金化できます。思いがけず突然降ってわいたような感じで、当座のキャッシュが増加するのです。簿外資金の有難さは、その時になるとわかります。

◆法人保険の解約返戻金を把握せよ。

ただ、どの保険でどれくらい解約返戻金が蓄積されているかを把握するのは、契約が多いと骨が折れます。

また解約返戻金は保険料を支払うたびに毎年増加し、退職社員を被保険者にしている契約を解約するとその分は減少します。変化していく解約返戻金を精度高く管理するのは手間がかかります。

複数の保険会社で契約していると、各社対応が異なりますので、解約返戻金の推移をデータで集めることは簡単ではないことがわかります。保険会社はこちらの希望通りのデータを提供してくれるとは限らないのです。

契約当時の提案書が残っていれば、紙ベースで解約返戻金が記載されている場合
がありますので何とかたどれますが、保険証券だけだと解約返戻金明細は端折
(はしょ)っていますので不便この上ないです。

保険会社のサポートに連絡し、希望のデータを言ってもエクセルなどでメール送
信されることは少なく、よくて契約当時の提案書をPDFで手に入れることができ
るくらいでしょいうか。ただ間に入った代理店はいろいろなテクニックを押さえ
ていますから、相談してみる手はあります。残っている資料、保険証券、保険会
社のサポート、取り扱った代理店を駆使してデータと資料を集めエクセルにまとめ
てしまいます。当年度から先の年度ごとの解約返戻金の推移を一枚のエクセルに
集約すると将来のキャッシュフローがとてもよくわかります。

節税保険、簿外資金の使い道。

◆まとめ、構造的に変わらないと生き残れない時代。

保険契約が多いと、解約返戻金を時系列で推移表として整理することはなかなか骨の折れる仕事です。解約返戻金はいざというときのキャッシュフローですが、運よく整理がスムーズにできたとしても、忘れてはいけないのは解約すれば保障がなくなるという、あたりまえの事実です。

経営上必要な事業保障としての保険はしっかり残し、課税繰り延べ目的で入って解約が前提の保険はリスト上別枠で集計し、ひとまとめにしておくことが大事なことです。課税の繰り延べで解約前提の保険は、経営上の投資資金と考えればよいのですが、いよいよピンチになれば事業保障契約の解約返戻金も経営の助けになります。

しかし、解約返戻金がキャッシュに代わり経営を支えてくれるのは一時的なこと
です。キャッシュは、経営で稼がなければいつかは枯渇します。これからの時代
は今までと同じような経営では生き残れないと考えて危機感をもって事業方針を
考えることが大事だと思います。あたりまえに経営していては行き詰るというなら、構造的に変革を起こす覚悟で変わらないといけない、トンでもいない時代に
突き進んでいると考えるべきです。

法人で契約している保険の解約返戻金は構造的な変革を起こすためのしばらくの
間の資金となることでしょう。そのためには、現状の契約をいち早く整理して解
約返戻金推移表を完成することです。貴重な解約返戻金ですから、テクニックを
駆使して出口設計をし、無駄に税金を納めすぎることがないようお願いしておき
ます。

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