経営者が法人で加入するガン保険は無駄か!?
ガン保険は個人で加入することが普通ですが、中小企業では法人契約のガン保険と言うものがあります。
契約者が法人ですから保険金も法人受取が原則です。被保険者としては、経営者も社員も対象になります。
ガン保険にはガン診断給付金、入院給付金、手術給付金、ガン死亡保険金などがあります。
法人契約のガン保険の場合は、すべての保険金を会社が受取ります。一般の感覚では妙なもので、ガンにり患した人が保険金を受け取れないガン保険です。この法人のがん保険にも使い道はいろいろあります。
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◆ 法人契約のがん保険は会社のための保険
法人契約のガン保険は養老保険の福利厚生プラン(ハーフタックス)のように死亡保険金が遺族受取とはなっていません。
会社が保険料を受け取り、経営者や従業員がガンにり患すると会社が保険金を受け取ります。何のための保険かと言うとガンにり患した社員の戦力ダウンを会社が穴埋めする資金として活用するものです。一部見舞金を出すような会社もあるでしょうが、基本的には会社のための保険です。
◆ 経営者がガンになるとどうなるか。
経営者も人間ですから病気にもなりますしガンにもかかります。
多くのオーナー経営者に接してきた経験から申しあげると、中小企業の経営者に共通する特質は臆病、用心深い、猜疑心が強い、執念深い、生への執着心が強い、医者のことばを信用しない、自分だけは特別という思いこみがあります。
その上、経営というストレスは半端ではないので医者にガンを宣告されようものなら会社も含めて一大事です。医者の診断を鵜呑みにしませんから、著名な専門医を見つけて納得のいく治療を受けようとします。
そして社員やステークホルダーには徹底して秘密にします。
経営者がガンにり患すると信用リスクが発生します。後継者が独り立ちして事業承継が完了していれば大事には至りませんが、そうでない場合はうかつに情報を漏らすことはできません。
情報が洩れれば金融機関だけでなくステークホルダーに動揺が走ります。
◆ 経営者のガン保険は意味があるか!?
法人で契約するガン保険は無駄なのでしょうか。ガン保険を法人で契約すると契約形態は
契約者=法人、被保険者=経営者、受取人=法人となります。
経営者がガンと宣告されるとガン診断給付金や入院給付金などの保険金は法人が受けとり雑収入となります。零細企業なら資金繰りのいくばくかの足しにはなると思いますが、ある程度の規模の中小企業には金額的には期待ほどの効果はありません。
結論的に申し上げればガン保険では経営者のリスクはカバーしきれないのです。経営者が個人でガン保険に入っていたとしても医療費の足しになる程度で経営リスクには無力です。
◆ 経営者はガンを乗り越えなくてはならない。
経営者は会社と従業員に対して責任があります。経営者はのんびり入院生活などしていられるはずもなく、一日いくらの入院給付金を稼ぐために入院している余裕はないのです。
よほど運が悪くなければガンは治る病気になりました。一刻も早く退院して、会社運営に復帰しなければ、会社存続の危機になります。
治る病気なら、経営者は早く治して退院しなくてはなりません。例え医療費がいくらかかろうと最高の治療を受け経営に復帰しなければなりません。
経営者はガン保険にかかわりなくガンを乗り越える責任と宿命を負っています。この責任の重さが免疫力を高めるとも言えます。
とは言え、意志力も免疫力も抗ガン剤治療も無力なケースもずいぶん見てきました。寿命というものは、意味があって与えられるものと言えるのではないかと思います。
◆ ガン保険は意味を考えると別の使い道が。
ガン保険は経営者にとり無意味のように書きましたが、視点を変えるとそうではない面があります。
例えば従業員を被保険者としたガン保険は節税効果の高い時期がありました。もはや既得権だけになりましたが保険料を全額損金で処理できたので簿外に巨額の緊急予備資金をプール出来ました。今は半損処理となりましたので、うまみも半減したというものの解約返戻率が高いものがあります。
また経営者を被保険者としたガン保険は時機を見て名義変更して経営者の引退後の医療保険として活用することができます。
ガンになるまでは法人で保険料を払い続けタイミングを見て個人に名義変更するととても美味しいガン保険になります。
ガン保険によっては解約返戻金がわずかか、全くないものもあります。大きなガン保険を個人契約に付け替えるのも無理なくできます。できれば払込免除特約でもついていれば個人負担なしでガン保険を手に入れることも可能です。
◆ まとめ
ガン保険や医療保険を法人で契約しても経営者の不在リスクをカバーできるようなものは、あまりありません。経営者に必要なものは事業保障リスクをカバーする保険、簿外に緊急予備資金を蓄積できる損金商品が重要です。ガン保険は事業保障としては無力なので、余裕があれば法人でガン保険を契約して時機を見て経営者個人名義変更する手ですね。
ただ、ガン保険はガンにならないとまともな保険金は出ませんから損得勘定で考えるものではないということも付け加えさせていただきます。
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