贈与税の税率が複数になると間違えやすい複数贈与の計算。

贈与税の仕組みは、本来シンプルです。一年間に贈与税の基礎控除の110万円以上もらった人が越えた金額に対して、贈与税の課税基準に従って申告納税する必要があります。
しかし平成27年1月1日から、贈与税の課税パターンが二重化しました。直系尊属とそれ以外の場合で税率が異なるため、複数の人から贈与を受けると贈与税の計算では注意が必要です。贈与する人の組み合わせによって、贈与税計算が多少複雑になる場合があります。
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◆ 贈与税が複数になる贈与税の計算方法。

贈与税の計算は、それほど複雑ではありません。でも複数人から贈与を受けた場合は、注意が必要です。
問題となるのは、直系尊属(両親、祖父母)から20歳以上の子が贈与を受けた場合だけ、贈与税率が変わりました。そのためそれ以外の一般贈与の税率と直系尊属の税率が異なり、二重化することになったのです。
親や祖父母からの贈与は税率が低くなり、それ以外の贈与では税率が高くなりました。贈与税計算で問題となるケースは、直系尊属からの贈与とそれ以外の贈与が混在する場合です。
それぞれの贈与で税率が異なるので、贈与税の速算表の両方を使う様な計算になります。もらった合計額から基礎控除の110万を引いた後にそれぞれの税率をかけ、税額控除をマイナスします。
その計算結果を、もらった人ごとに比例按分し贈与税を算出します。その税額の合計が贈与税の納税額となります。説明ではわかりにくいので、以下の事例を参照してください。
事例:父親から300万、叔父さんから200万もらうと。
父親(直系尊属)300万+叔父(一般贈与)200万=合計500万
まず合計金額から基礎控除をマイナスします。
500万-110万=390万(課税対象額)
直系尊属の父親、一般贈与の叔父さん、それぞれの税率で計算。
父親 390万×15%-10万(税額控除)×300/500(比例按分)=29.1万円
叔父 390万×20%-25万(税額控除)×300/500(比例按分)=21.2万円
計算した両方の贈与税の税額を合計します。
29.1+21.2=50.3万円(納税額)
このルールは知らないと、贈与税の計算を誤るところです。複数の人から贈与を受けた場合、年間でもらった金額を一度すべて合計します。基礎控除を差し引いてから、それぞれの税率の計算を行い、比例按分して合計します。
基礎控除の110万をそれぞれの贈与に反映させ、異なる税率と異なる税額控除を計算し、最後に贈与額に応じて比例按分してから合計します。
これは、知らないとできないですね。
◆ 贈与税はもらった人計算、もらった人単位で納税。

贈与とは「自分の財産を無償で誰かにあげる。」ことです。財産と言うからにはお金でなくても贈与になります。現預金はもちろん不動産や株式、貴金属やその他の動産、生命保険の名義変更でも贈与ということになります。
また両親からそれぞれに贈与をうけたら、その合計から基礎控除の110万を引いた残りの金額に贈与税がかかります。
贈与税に関係する人は、贈与者(あげる人)受贈者(もらう人)があります。贈与税は財産をもらった人、つまり受贈者が納税します。親から子に贈与するときは勘違いされる方が多く、あげる側の親が納税する気満々です。しかし贈与税の納税責任は、もらった子にあります。
親から子に贈与するばあいは、もらった子が贈与税をきちんと納税できるよう余分にあげる配慮が必要です。贈与税は原則として現金一括納付ですから、そのことを子にきちんと説明して納税させなくてはなりません。
子にしてみれば親からお金をもらって、贈与税がかかるとは考えないものです。しかし贈与税はあくまでもらった人単位で合計し、もらった人が納税するのです。
◆ 贈与税は一年分の合計金額が課税対象。

贈与税の基礎控除は、年間110万円です。少額にして何回かに分けて渡せば、贈与税は免れると考えるのは甘い考えです。受贈者(もらった人)単位で1年間のもらったお金を合計して考えなくてはなりません。
もちろん両親それぞれから贈与を受けることもあります。それ以外の親戚が贈与してくれることもあります。全部合わせて、贈与税は一年分の合計金額が課税対象です。ただし複数の人から贈与を受けた場合、前項のような税率の違いを考慮しなくてはなりません。
合計する期間は、毎年1月1日から12月31日までの期間の金額合計です。贈与を受けた日から1年のカウントが始まるのではありません。たとえば12月31日の贈与はその年に合計されるだけで、翌年のお年玉とは合計されません。元旦からはまた新しい贈与税の合計が始まります。
◆ 贈与税の非課税範囲。

子に渡すお金のすべてが、贈与税の対象になるわけではありません。課税されない贈与がほとんどですから、ここを見極めることが必要です。
たとえば課税されない代表的なものが、扶養にかかる生活費や教育費です。親には子を扶養する義務がありますから、これを贈与税の対象にはできないのです。
他にも支給型の奨学金や一人暮らしの子に対する仕送り、大学の入学金や授業料、家族旅行の費用なども非課税範囲と言えるでしょう。
他にも冠婚葬祭費、お祝い、お中元も原則非課税です。離婚して財産分与を受けた時も、贈与とはみなされません。
現実には親子関係であれば、年に何回も現金を渡します。お小遣いやカメラが欲しいとか車が欲しいなど、小金からまとまったお金を渡すこともあります。いちいち覚えていられるものでもありません。
扶養の範囲で渡す分は、ノーカウントが原則です。線引きは難しいですが、少額のお年玉まで贈与とは言わないでしょうが、お年玉が200万ならこれは贈与税の対象です。通常の生活に必要な範囲は、非課税と考えれば問題とならないようです。
親が子の結婚式の費用300万を負担しても贈与とはならないように、あまり神経質に考える必要もないところです。親が子名義の生命保険の保険料を、長期間負担することもよくあります。合計するとそれなりの金額になりますが、子が独立するまでは、贈与とは言われません。
・みなし贈与に注意。
注意すべきは「みなし贈与」です。贈与したつもりがなくても実質贈与は課税対象になります。例えば不動産の名義変更をして相場より安く子に譲渡すると差額は贈与とみなされます。マンションの頭金を貸し付けて、返済を求めなければやはりみなし贈与です。
生命保険の名義変更でもお金が動くわけではありませんが、権利が移動し、贈与税の対象となります。ただし名義変更しただけでは贈与になりません。解約して解約返戻金を受け取ったり、死亡保険金を受け取ったりすれば、その時点で贈与となります。
◆ 贈与税の税率が複数になると間違えやすい計算、まとめ。

一口に贈与といっても色々あります。制度と仕組みはシンプルですが、実際の生活にあてはめてみると判断に迷うこともあります。
また贈与税は庶民が日常的に意識するものではないので、贈与税の対象と言われてもピンとこないのです。知らないうちに贈与になり基礎控除の110万を大きく超えているような場合もあります。気が付いたら期限までに、贈与税の確定申告をした方が安心です。
知らなかったでは済まないのが税金です。税務署から「お尋ね」が来てからでは、無申告加算税とか延滞税などというつまらないコストが余分にかかることがあります。
相続税がかからないような方には、税務署もあまり着目しないようです。しかしそれでも通常考えにくいような多額の贈与や住宅の頭金支援などは、目立ってしまいます。そして生命保険の名義変更となると、税務署も責任上放置できないという事情があります。しっかりとした知識を元に、贈与の方法とタイミングをお考えください。
