贈与の種類は生前贈与と死因贈与、違いとメリットをわかりやすく。

贈与は相続以外で、無償できる財産移転手段です。被相続人から相続人へ、言い換えれば親から子へ財産を移す方法は、相続するか贈与するかのどちらかになります。
税率の高い相続税を少しでも節約しようとするならば、贈与税の基礎控除(110万円/年)の範囲で、毎年きっちり贈与を繰り返すことが王道と言われます。
贈与と一言でいっても、色々な贈与があります。知っていると知らないとでは、相続税対策の選択肢が大きく異なります。相続と贈与の本質的な違い、贈与のバリエーションについて解説します。しっかり理解されて早めの対策が大事です。
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◆ 相続と贈与の基本的な違い。

相続と贈与は、それぞれの基礎控除の一定額を越えた部分は課税対象です。親から子へ資産を移すという点では同じですが、移転する金額の大きさ以外にも違いがあります。それは贈与が贈与者の意思によって行われるのに対し、相続は被相続人の死亡によって必然的に開始されるという点です。
もうひとつの相続と贈与の大きな違いは、相続は民法で定められた法定相続人に相続の権利が発生します。しかし贈与は相手を選びません。相続人以外の誰にあげても贈与です。
またほとんどの贈与は生前に行われますから、贈与の相手を選べるだけでなく贈与者が贈与の時期を選べるということもあります。
◆ 贈与の種類とバリエーション。

贈与には単純な贈与から条件付き贈与など、様々な贈与パターンがあります。通常の贈与では、知らなくてもよいのですが、こういう贈与もあるという参考になさってください。
生前贈与:
生前贈与には贈与税の基礎控除(110万)を活用して行う暦年贈与があります。またそのほかに教育資金の一括贈与、結婚子育て資金の一括贈与、住宅取得等資金贈与などの制度化されたものがあります。これらを活用すると、大幅な相続税の節税になる場合があります。
またケースによっては、相続時精算課税制度を利用した一括贈与という手段も有効なことがありますが、節税効果を見極めた上での慎重な選択が必要です。相続時精算課税制度での贈与は、節税効果があるわけではありませんので、相続時にあらためて精算課税されます。
将来的に値上がりが予測されるものを、相続時精算課税で贈与すれば、贈与時の価額に固定されますから、値上がり分は節税できることになります。
2023年(令和5年)度税制改正大綱で贈与税の見直しが行われ、相続時精算課税制度に、別途贈与税の基礎控除110万円の枠が新設されました。詳しくは下記のリンクをご参照ください。
負担付き贈与:
贈与に対して何かしらの負担を求めると、負担付き贈与になります。家を贈与するから老後の面倒を見てほしいなど、受贈者に負担を条件として贈与を行うことがこれにあたります。
条件付き贈与:
贈与に条件を付けると、条件付き贈与になります。たとえば国立大学に合格したら車を買ってあげるとかいうのも条件付き贈与です。親子間ではよく見かける空約束です。第三志望の私立大学に合格しても、車を買う羽目になるのはどこの親も同じです。
実際の親子間では、条件を付けてもあいまいな口約束ということもあります。もともと子に相続させるつもりの財産の一部ですから、書面で条件を明確にして契約書で残すようなことも普通はしないと思われます。
◆ 遺贈と死因贈与。

生前贈与とは異なる、特殊な贈与があります。遺贈と死因贈与とは、相続と同じで死亡することで発効する贈与契約です。贈与には違いないので、贈与の相手は相続人でなくても構いません。贈与ですから、お世話になった隣のおばさんでも、昔からの友人でも構いません。
遺贈:
遺言書によって行う贈与のことを遺贈と言います。遺贈によれば、相続人以外に財産を渡すことができます。もともと相続財産は被相続人のものですから、自由に処分する権利があります。(ただし相続人の遺留分は侵害できません。)内縁の妻や愛人など、相続権のない人に財産を残すには遺贈が確実です。ただし相続税がかかる場合は、遺贈で財産を取得した受遺者も相続税を負担しなくてはいけません。
死因贈与:
死因贈与とは遺言書によらず、自分が死んだら財産をあげるという約束です。口約束でもOKですが、生前に贈与者と受贈者が合意し契約が成立していなければなりません。二人だけの口約束だけではもめるもとですから、書面で契約書を残すくらいが必要なところです。
◆ 口頭の贈与と書面による贈与。

贈与は「あげる」「もらう」の合意があれば有効です。本来別に書面で契約する必要はありません。親子のやり取りでは、いちいち贈与契約書などむしろ不自然です。
しかしながら税務署対策で、贈与契約書などを作成される方もあると思います。課税当局は税務調査で暦年贈与を名義預金とか定期金贈与などと言う無理筋を言ってきます。それに反証するためには、贈与契約書も意味があります。
贈与は口約束だけで成立します。しかし遺贈だけは、必ず遺言書で行わなければなりません。また口頭の贈与はいつでも解消できるのに対して、書面による贈与は解消できません。さらに口頭の贈与であっても、贈与が完了していれば解消はできません。
親子間では「あげるもらう」は当たり前、「あげない、返せ」も日常茶飯事です。贈与の口約束を反故にするくらいは、驚くにあたりません。面倒をみると言った娘に一時払い終身を名義変更して贈与します。
もらった娘は、贈与税など知らんふりはよく見かけます。親子喧嘩の結果、名義変更した保険を返せとなり、再度親に名義変更するなど、実際にあります。付き合う保険営業も大変ですが、課税当局も相続発生までは放置です。
◆ 贈与の種類、まとめ。

贈与は知識をしっかりと押さえ、時間をかけて行うことが必要です。うまく使えば、結構大きな資金を移動することができます。計画的によく話し合い、相互に理解・納得の上で贈与を始めてください。
注意点が3点あります。
その1)子や孫かわいさに、贈与のし過ぎにご注意下さい。老後資金が枯渇するばかりか不労所得を持たせると子や孫の道を誤らせることになります。我が子や孫と言えども、キャッシュを持たせるとろくなことはありません。
■生前贈与の注意点とデメリット、相続税対策の失敗と老後の後悔。
その2)暦年贈与は相続発生前3年分が相続財産にもち戻しでしたが、7年に延長されました。最悪は7年前までの贈与が持ち戻しとなり、相続税の課税対象となります。計画的に早めに始めてください。
その3)遺贈された財産は受遺者(もらう人)が相続人でなくても、贈与税でなく相続税が課税されます。また受遺者が被相続人の配偶者、父母、子以外の場合は相続税の2割加算があります。あっさりもらえるわけでもないのです。
■相続人以外への遺贈は2割加算、生命保険の受取人が孫なら2割加算 。
贈与には、単純なあげる・もらうの贈与以外にも、いろいろなバリエーションがあり、それぞれにルールがあります。やはり特殊な贈与という感じになりますので、出番はあまりなさそうです。
・暦年贈与は持ち戻し無しの相続時精算課税制度一択。
また贈与税の改正で、暦年贈与の持ち戻し期間が7年に延長されたのは、確かに痛いと思います。しかし相続時精算課税制度を選択し、新設された贈与税の基礎控除110万円を確保すれば、暦年贈与の持ち戻し加算の延長は、関係なくなります。相続直前の贈与でも持ち戻す必要がなくなりました。
生前贈与の基本は体調管理に気を付けて、長生きすることです。また相続税がかからない方の場合は、贈与税などという理不尽な税金を払うことがないようご注意ください。生前贈与や相続時精算課税制度を活用して、目立たないように課税をクリアしてください。
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