名義預金と名義保険、定期金贈与、親心の難しさ。
相続税の節税策として手堅い方法は生前贈与です。そのなかでもわかりやすく確実な方法が暦年贈与です。
暦年贈与でもらったお金を生命保険料にあてて無駄なく相続税の納税資金を用意すること
ができます。この方法もやり方を間違うと落とし穴に陥ることがあります。
hokenfpは名義保険などと呼んでいますが、自分が保険料を負担すべき契約者であることに対して自覚のない生命保険契約者も少なくありません。
できるだけわかりやすく、名義預金と名義保険、定期金贈与に分けて解説します。
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◆ 親の扶養から外れると贈与が始まります。
親の扶養家族になっている間は、よほど常識外れの贈与でもない限り問題になることはあまりないと言えます。契約者を子にした生命保険は子が独立すると親から子に保険料負担を変更しないと贈与になります。
もちろん親が契約者(保険料負担者)で子を被保険者にした保険契約も契約者を子に名義変更(契約者変更)すると贈与になります。
この辺の関係を理解していないと、保険料を負担していない子が年末調整で生命保険料控除証明書を会社に提出するようなことも起こります。通常バレる気遣いはないと思いますが、これは贈与以前の問題であり自分で払っていなければ所得控除には使えません。
◆名義保険を回避する方法。
相続税対策として暦年贈与を活用して贈与税の基礎控除(110万)の範囲で保険料を毎年贈与するスキームは一般的です。その意味を子が理解して協力的であれば問題は起こりません。
契約者が子=相続人、被保険者が親=被相続人、受取人が子=相続人というパターンです。当然保険料は子が負担しますが、その保険料の出どころは親からの贈与になります。
ところがよくできた子でも人生平穏ではないですから金銭的には困る時期があるのです。
贈与する親からすれば、保険料として贈与しているのに生活費や遊興費に使われたのでは、苦労して貯めてきた相続財産を守る事にはなりません。皮肉にも一応の節税対策に
はなりますが・・
そうならないように親が保険料引き落とし口座と通帳・印鑑管理をしてしまうとこれは名義を借りた保険契約であり贈与が成立していないとみなされることが考えられます。
これを回避する一番よい方法は、通帳も印鑑も子に渡し、よく言い含めて多めに贈与し、
いくらかは子が自由に使えるようにすることです。これなら「あげる」「もらう」の意志は明確ですから文句なしの贈与です。
子に少々知恵が回ればわかることですが、生命保険契約というは契約者の意志で解約することも契約者貸付を受けることも、いとも簡単にできます。それが心配というなら保険証券や印鑑も保険料の引き落とし口座の通帳も親が管理するほかないですが、これはではさすがにまずいことになります。
このジレンマを回避する仕組みとして、手間はかかりますが贈与契約書を毎年作って下さい。税務暑というのはまず形式要件を確認します。贈与は、贈与者と受贈者との意思の合致が必要ですが、それを客観的の証明するものが贈与契約書になります。
贈与の内容を記載した贈与契約書を作成して子に署名を求めると子に贈与の内容はわかりますが、遣いこみはできません。(解約となるとまだ保険会社各社とも実印か証券面の印を求めることが多いようです。)
ただ、このやり方は子にとっては大金をもらっているにもかかわらず自由に使えないので、その時は感謝されません。相続人たる親の死後にいくばくか感謝されますが、生きている間には感謝は期待できないので親としては腹が立ちます。親の立場で鷹揚に構えている他ありません。
立場上形式的には贈与は計画的になどと言っていますが、経験的に本当はそんなものでもないのです。ある意味で計画的な贈与計画などは人の気持ちが理解できない張りぼての虎です。
効果的な贈与とはライフイベントやあげたいときに、そして子が困っているときに手を差しのべて現金で少しずつ贈与することです。
援助は最後にすると最大の感謝をされると言いますが、タイミングを見て小金をあげてください。
たとえ親であろうとも、達観できた人間でもない限り死んでから感謝されても意味がないのです。
◆ 定期金贈与に注意、全額が課税対象。
定期的に子に現金を贈与することを暦年贈与と言います。毎年同じ金額を定期的に贈与すると「定期金贈与」と指摘を受けることがあります。
簡単に言うと初めから定期的に複数年にわたり贈与するという契約のもとに贈与すると、一括贈与したものとみなされるというわけです。せっかく毎年に分けて課税されないように贈与しているのに、最初から一括贈与だとは理不尽な理屈ですが、そういうことが課税する側ではまかり通ります。
用心するに越したことはありませんから毎年同じ相手、同じ金額、同じ時期に贈与をするのは避けてください。もっと気ままに分散させて下さい。
保険料を贈与するなら保険料を下回ると受贈者が困るので時々多めに贈与したり、110万以上の贈与を行い贈与税の申告をしてください。
そのうえで定期金贈与とみなされないためには、贈与のたびにしっかりと金額や内容を記載した贈与契約書があればまずは安心です。
◆ まとめ
名義預金や名義保険、定期金贈与が狙われるといっても、すべて贈与したいという親の気持ちから出ているものです。財産など残さず使い切ってしまえば憂いはないのですが、始末に始末、節約に節約を重ねて財を築いた経営者にとれば子や孫のために財産を少しでも残してやりたい親心でもあります。
気持ちは理解できますが、その親心が子や孫の人生にプラスに働く保証はありません。財産があれば豊かで穏やかの人生になるとも限らないのが人の運命です。
実は人間には神の計らいは分からないようにできています。何事も人がそうしよう思うためには長い体験の積み重ねがあります。自分で考えて判断しているようで、あながちそうでもないのです。運営とか宿命とかいう前に、生きている限り、定めの連鎖によりそうなるようにできているのです。
これは人間が大いなる意志の一部であるということに過ぎないのです。
贈与による不要不急の不労所得が人を幸せにするとは限らないとは、悲しいことですが厳然たる事実です。そのことはお金や財産が本質的なものではなくこの世でしか通用しない一時的かつ付随的なものであることを示しています。
少々アルコールの影響で神がかりになりましたが、くれぐれも贈与は節税だけでなく熟慮を重ねて慎重にとお願い申し上げておきます。