教育資金の一括贈与は、改正でデメリットが最大に。

教育資金の一括贈与は、改正でデメリットが最大に。

教育資金の一括贈与が非課税になる制度が令和5年3月末まで2年間延長されることになりました。しかし一部これまでとは異なるルールが追加され、厳格化されたためメリットが削減されました。

教育資金の一括贈与は、名目上は個人資産の流れを良くして消費を活性化することが目的ですが、制度自体は一般の国民にはメリットもなく縁が薄い仕組みです。言ってみれば相続税が巨額になる資産家や富裕層向けの税制優遇制度です。

相続税の節税に知恵を絞っている資産家には、一見魅力的に見えるのですが、よく見るとデメリットもかなりあります。それをさらに制約を加えて厳格化し、使いにくくして延長するという、どうもよくわからない折衷案になっています。改正で問題となるデメリットを中心に教育資金の一括贈与の是非についてまとめました。

◆ 教育資金の一括贈与の改正点と無意味な延長。

資産がたっぷりあって相続税が山盛りかかるような財産家で、お孫さんが5人も6人もいらっしゃるような場合に、教育資金の一括贈与をおすすめすることがあります。たとえば、お孫さんが5人なら7,500万、暦年贈与を並行して10年後には5,500万、両方合わせてなんと13,000万も相続財産を減らすことができるわけですから、見逃す手はないと言えるかもしれません。

「教育資金の一括贈与で1500万まで非課税に!」と言えば、聞こえはとてもよいのですが、それほどうまく相続税の節税にならない場合があります。そもそも教育資金の贈与は親からでも祖父母からでも扶養の範囲であり、贈与とはみなされませんから贈与税もかかりません。あくまでもまとめて贈与し相続財産を減らしたいときに意味がある仕組みです。

教育資金の一括贈与は、タイミングよくうまく使えると相続税の節税になる場合があるのですが、令和2年度の税制改正と適用期限の延長により、メリットをそぎ落とし形だけを残した、抜け殻のような制度になりました。

改正点1

「もち戻しが3年から無期限に。」

受贈者が23歳未満、在学中、教育訓練中である場合を除き、2019年度の改正より教育資金の一括贈与の残額が3年もち戻しの対象でしたが、さらに厳しい条件が課され、贈与者が死亡した時点で条件を満たさない場合は、もち戻し3年が、何年前の贈与であっても相続財産にもち戻すとなりました。条件に当てはまらなければ、これなら普通に贈与しているより厳しい扱いになっています。

※相続発生前3年以内の生前贈与については、相続財産として課税対象に。

改正点2

「孫の相続税が2割増しに。」

孫やひ孫への代襲相続では、相続税の2割加算というルールがありますが、教育資金の一括贈与では、残額が相続税の対象となっても2割加算が免除されるという特典がありましたが、これがなくなりました。孫かひ孫にしておけば相続税がかかることになっても2割加算がないからお得、とはならなくなりました。

◆ 教育資金の一括贈与が節税にならないとき。

教育資金の一括贈与は、贈与者である祖父母が長生きすると節税としての意味がなくなる場合があります。途中で相続が発生しないとせっかく一気に多額を贈与した節税効果がないことになります。

孫が社会人になるまで長生きされる予定であれば、教育資金の一括贈与などせずに、その都度養育費の一環として必要なだけあげれば何の問題も税金もかかりません。もちろん金融機関に対してややこしい手続きや領収書の細工をしなくてもよくなります。

暦年贈与でも、そもそも現金化して渡しておけば、何に使ったか痕跡は残りません。おすすめしているわけではありませんが、ことさらに教育資金であることを証明するための領収書集めは手間なだけですので、現金で渡しておけばよいのです。

その現金の内で教育資金に使われるものもあるでしょうし、孫ではなく親の生活費やローン返済に回ることもあると思います。現金には名前が書いてないし、色もいていません。車を購入する頭金にしても区別ができるわけではありません。

養育費として渡す教育費に領収書は不要ですから、極端なことをしなければ、どこまでが贈与で、どこからが教育費かは、明確に判別できるものではありません。

◆ 教育資金の一括贈与が子や孫に喜ばれない理由。

暦年贈与で生命保険契約をすると、保険料は祖父母から毎年贈与され、相続が発生すると保険金が固有の財産として受け取れるのですが、生命保険の保険料として暦年贈与をすると、保険料の贈与を受けているのに子や孫には少しも喜ばれません。今すぐ使えないというか、遠い将来にしか現金化できない贈与は、有難さや感謝の気持ちを実感できないのです。

教育資金の一括贈与も保険料の暦年贈与とよく似ていて、手間多くして喜ばれないのです。自由に使えるキャッシュがないので無駄遣いができないという点では、大金をもらっているにも関わらず感謝されにくいところがあります。子や孫からは「こんなややこしいことせずに普通にくれたらええやん!?」という声が聞こえてきそうです。

実際のところは、孫に祖父母が教育資金の一括贈与をしてくれたら、両親は教育費の負担がなくなり自分がもらったのと同じになります。孫二人の教育費で3000万になりますから、自動運転の最新型テスラの新車でも買いたくなります。

これは、はっきり言って子のためにはなりません。宮仕えのサラリーマンはとっととやめて自由業に鞍替えしたい気分になります。

教育資金の一括贈与は待ったが正解。

◆ かしこい生前贈与のやり方はその都度贈与。

何度も書いてきていますが、かしこい贈与のやり方で一番よいのは、贈与せずに使いきってしまうことです。財産がなくなれば相続税も贈与税の心配もなくなります。むやみに生前贈与することは、決して子や孫のためにはなりません。生前贈与も相続財産も棚ぼたの不労所得です。大枚のお金があれば、汗水たらして家族のために働く気がなくなるのは自然の成り行きというものです。

宝くじの当選のような、想定外の不労所得が入ってくるといかにまじめで意志の固い方でも微妙に辛抱がきかなくなるのです。本人が自覚することはあまりないと思いますが、晩酌の酒も発泡酒からビールになり、大吟醸になります。

教育資金の一括贈与のデメリットで一番気を付けなくてはいけないことは、孫ではなく子の生活に緩みや綻びを生む可能性があるということです。お金というものはたくさんあればよいというものではなく、要るだけ巡り回ってくるというのがよいのです。あくまでお金はこの世だけに通用する方便です。物事の本質には関係がありません。

教育資金一括贈与は無意味か安心確実か?

◆ 後戻りできない教育資金の一括贈与の怖さ。

教育資金の一括贈与は、安易に信託契約しない方がよい理由があります。なぜかと言えば、この制度は不可逆的、要するに後戻りでない仕組みです。節税するつもりが、突発的な事態が発生し資産が目減りして相続税がかからなくなったり、老後の資金が不足したりするような可能性も考えておかなくてはなりません。

人生何があるかわかりません。家ごと土石流に流されることもあれば、経営する会社が左前になることもあります。株式の暴落で巨額の損失を被ることもありえます。おどかすわけではありませんが、慌てる乞食はもらいが少ない、などと言います。後戻りできない教育資金の一括贈与がベストの選択と考えなくてもよいかもしれません。

生前一括贈与はデメリットが大きいのでやめた方がよい理由

◆ 使い残しは相続税がかからなくても贈与税という超矛盾。

教育資金の一括贈与は、信託機関に預入した1500万を、孫が30歳になるまでに教育費として使いきらないと残額に贈与税が課税されます。医学系などのように学費が高い場合は、使い切るケースもあるかもしれませんが、国公立の大学や私立の文系では、まず使い切れないと思います。適用条件が教育費に厳しく限定されていますから、意外に関連の領収書を集めるのは難しいと思います。

贈与し過ぎで財産が減少し相続税がかからなくなっても、教育資金の一括贈与の残額に対しては贈与税が課税されるという、超がつく矛盾があります。

生前贈与でもめずに節税できるはずがない。

◆ 教育資金の一括贈与の改正とデメリット、まとめ。

結局のところ、今回の教育資金の一括贈与に関する改正では、受贈者側が条件を満たすことができない場合、30歳までに贈与された1500万を教育費の名目で使い切るしかないことになります。

教育費に限定されると使い切ることはむつかしいのではないかと思います。

残額に課せられる贈与税や相続発生後に課せられる相続税が、あとあと問題になる可能性があります。実感として、養育費や教育資金はその都度要るだけ渡してやるのが、シンプルで手間がかかりませんし、後の憂いもなくなります。

教育資金の一括贈与などという制度は庶民には関係がありません。資産家や富裕層の節税対策用に生まれた制度であるにも関わらず、富裕層の税逃れ目的の利用が後を絶たないという厳格化の説明は、マッチポンプの世界です。自分で火をつけておいて、燃え広がったから自分で慌てて消火しているようなばかばかしさを感じます。

資産家が娘の嫁ぎ先の外孫3名に教育資金の一括贈与をして節税をはかった例がありますが、孫は何も知らず喜びもせず、その代わりその娘婿が焼き肉屋の店長風情でBMWを買ったという話があります。その娘婿は自分の給料の半分くらいを長割り終身保険に入っているという家族思いの無計画です。別にうらやましいわけではないですが、教育資金の一括贈与はもらった孫やひ孫よりもその親に影響が大きいようです。

結婚・子育て資金の一括贈与の意味不明。

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