終活では保険を見直すだけでなく、財産の整理が何より重要なわけ。
老後とは何歳から?で検索すると65歳が一番多いようです。確かに定職はリタイヤしているお年です。公的な年金支給も65歳からとなっていますから、妥当なところかもしれません。老後という年代になると「終活」という言葉が気になりだします。
終活とは「人生の終わりのための活動」だそうです。人間が自らの死を意識して取組む身辺整理を、カッコよく言っているのではないかと思います。終活で最初に浮かぶのはエンディングノートかもしれません。しかしそれより大事なことは、保険の見直しと生前の財産の整理です。
本稿では終活における保険の見直しと財産の整理を考えます。
■あの世ではできない相続準備、生前にやることリストをくわしく。
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◆ 終活の基本は生前の財産整理。
終活という言葉は、正直あまり好きになれませんが、それが生前の財産整理のきっかけになるならよしとします。生前の財産整理は必ずやっておかないと、後に残る家族が困ることになります。これがやってみるとなかなかの難物、集中的に取り組まないといつまでも中途半端で、整理は終わりません。
老後に十分な財産がある方は、相続税の節税をお考えになればよろしいのですが、普通のサラリーマン老後では、財産をしっかり管理して老後のキャッシュフロー表を作成することが大事です。
老後資金不足が言われていますが、それを補うためには計画的な収支計画を前提にした終活をお考え下さい。
終活を意識したら、それをきっかけに生前の財産の整理と申し上げました。それだけではなく老後破産をしないような収支管理が、終活以前の基本と言えると思います。
◆ 終活では無駄な保障はそぎ落とす。
生命保険で用意する保障は、保障の目的がありそれをカバーするものでなくてはなりません。終活する段階では保障の目的が変化します。終活の一環として、保険を見直すということが必要になります。
わかりやすく言えば子供たちが独立し、配偶者の生活費も心配がいらなくなれば、家族に対する保障は少なくすることができるはずです。
子供が小さい時は、将来にわたって必要になる生活費や学費をまかなうための保障額が必要です。しかし社会人となり自前で生活できれば心配がなくなり、親としての責任でかけている保障も必要なくなります。
契約している保険は「契約内容のお知らせ」が保険会社から毎年届くと思います。それを自分なりにエクセルにまとめて一覧できるようにすると、いらない保険、残す保険が見えてきます。
財産の整理は、エクセルで財産目録にまとめることです。その作業で見えない問題が見えてきて、理解が深まります。
生命保険では払える保険料を考えながら、最低限の保障を残します。がん保険と葬式代だけの終身保険を残すとか、配偶者の老後生活の保障を残すだとか自分の価値観でじっくり考えてみてください。
今となっては無駄になっている保障をそぎ落として、保険料の縛りから身軽になってください。詳しい人に相談するのがよいのですが、相手を間違えると保険をすすめられることになるかもしれません。
■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。
◆ 老後の助けは終身保険。
老後に役に立つのは終身保険です。今は高嶺の花となりましたが、予定利率高かりし頃の終身保険は超お宝保険となりました。ただ終身保険は、死亡保険金を次の代に残すことが役割です。
大した相続財産もなく、築30年の老朽マンションを残しても迷惑がられるだけです。でも1,000万の終身保険を残せば、受取人となった子に心から感謝されると思います。保険金というのは被保険者の死後にしか支払われません。ですから保険金を手にして喜ぶ顔は見られませんが、冥途の土産話にはなるでしょう。
保険金を受け取った子は無駄使いせず、一時払終身保険に加入します。またその子を受取人に指定して、親から引き継いだ財産を保険という形で固定し、寝かせておきます。
本当に万が一のとき、どうしてもお金が入用なとき、残してくれた親に感謝しつつ有効に活かしていきます。財産を生命保険にすることで、貴重なキャッシュの世代を超えた引き継ぎができますが、これも生命保険の機能の一つです。
◆ 終身保険の終身払の苦悩と払済。
終身保険で悩ましいのが、終身払いです。保険には払込満了と言って保険料の支払を終える時期がありますが、これをエンドレスにしたのが終身払いです。
なぜ終身払いにしたかと言えば、同じ保障でも保険料がだいぶお安くなるからです。保険料が払えなければ保障は確保できません。払える範囲でできるだけ大きな保障を望むと、保険料の支払期間が長くなります。その最終形が保険料の終身払いということになります。
定年を迎え、年金生活に入るとこの終身保険の終身払いが負担になります。保険金が受け取れれば負担はなくなりますが、かといって早めに旅立つこともできる相談ではありません。
経済的に余裕のある方や予定利率の高いころの終身保険は、60歳払込満了とか70歳払込満了などの設計ができました。終身保険は払込満了になると保険料の支払いが終わり、保障だけが一生涯続きます。
終活で保険を見直すとき、終身払いになっている終身保険をどうするかという問題に直面します。保険料を払い続けることができるなら、それがベストです。ただし長生きすればするほど、損になるというジレンマが生じます。平均寿命を越えて生きると、払い込んだ保険料の合計が受けとる保険金より多くなるという逆転現象が起こります。
・保険料が払えなければ払済を選択。
収入と支出のバランスを考えて、老後生活の資金繰りに影響が出るような場合は、終身払いになっている終身保険は「払済(はらいずみ)」にします。
払済とは保険料の支払いをストップし保障だけを残します。うまい話はないわけで、それまで支払った保険料で終身保険を残しますから保障額は下がります。
保障がなくなるわけではありませんが、終身保険を払済にすると保障が低くなることを覚悟しなくてはなりません。保険料を払い続けることができないから払済にするわけで、背に腹はかえられないという選択です。
解約という判断もありますが、最後の手段です。緊急に資金が必要ということでなければ、解約ではなく払済という選択肢は次善の策と言えるかもしれません。
◆ 終活と保険見直し、まとめ。
終活と保険の見直しを考えながら、ふと相続問題と貧困で不幸にまみれながら小林一茶が詠んだ俳諧「これがまあ終の栖か雪五尺(これがまあついのすみかかゆきごしゃく)」を思い出しました。
終活も人生も思いどおりにならない嘆きのようでもあり、一茶らしくあっけらかんとしているようでもあります。ちなみに雪五尺とはなんと積雪が一メートル五十センチになっているということです。この句には、見方を変えれば、雪におぼれそうな絶望感があります。
終活とはきれいごとばかりではなく、相続問題を含めた財産管理です。その中には争いを防ぐ手段として遺言書を書くことも含まれます。終活にはかならずお金がからみます。決して終活という言葉のイメージほどに生易しいことではないと考えるべきです。
この年になって思うことは、財産目録と引継ぎ事項は整理しておきますが、ことさらに終活などと改まる気にはなれないのです。斜に構えているわけではないのですが、我ながら若干へそ曲がりです。