相続|特別寄与料は争族の火種。

相続|特別寄与料は争族の火種。

2019年に、なんと40年ぶりに民法が改正されました。

その中の相続法も大きく改正されました。運用開始からいくばくも経過していませんが、税務的な抜け穴や、問題点も見えてきました。改正民法は以下のページにまとめてあります。

■改正民法2019|相続法改正まとめ。

法律の改正はどうしても机上の理論になりがちです。法律に影響を受けるのは人間です。人の気持ちに配慮できていない法律の改正は、問題を改善するどころか争族の火種になることさえあります。今回は新設された特別寄与料の問題点について、その恩恵を受けるであろう相続人の嫁の立場で記事を書きました。

なぜ相続権のない配偶者の嫁の気持ちがわかるかということですが、相続権のない疑似養子の立場を経験していますので、特別寄与料の請求権に疑問を感じているわけです。相続人以外の特別寄与料の請求権の詳細は下記の記事をご参照ください。

改正民法2019|相続人以外の特別寄与料の請求権。

◆ 介護問題の本質は、介護人の気持ちの理解から。

相続税がかかる場合でもかからない場合でも、介護という問題は発生します。自宅で介護しようとする方もいれば、施設のお世話になる方もいます。一般的にそれなりの資産がないと、行き届いた施設に入居するということも難しくなります。資産がなければ施設入所どころではなく、デイサービスなどを利用しながら付き切りで昼夜の介護が必要になる場合があります。

自宅でアルツハイマーが進んで認知症になった方は介護がとても難しくなります。困るのは夜中の徘徊です。世話する人はおちおち寝ていられません。警察から連絡が来ることもあれば、勝手に出歩いて転倒して救急車で運ばれて慌てるようなことも珍しくありません。介護疲れで現実から逃避したいと考える人の気持ちはなってみないとわからないのです。それは相続人でも相続に縁のない相続人の嫁でも同じです。

介護される人は、介護する人にとっては、血がつながっていようがいまいが親です。親だからこそ介護の責任を感じてしまい、自分を追い詰めるのです。他人であればビジネスライクに対価に見合う処理をしておけば責任はありません。しかしそうはいかないのが身内の介護の難しさです。自らの責任を果たすべく懸命に取り組んでいる介護人の苦労をとその気持ちを推し量ることが円満相続につながります。

◆ 家庭裁判所に労苦を算定される腹立たしさ。

特別寄与料などという、権利と言われるような問題にしたくない配偶者の嫁の気持ちは理解できると思います。金が欲しくて介護したとは思われたくないし、そんなつもりでもないでしょう。

金を渡せばそれで文句ないだろうというような、介護の苦労を金額換算しようとする考え方に腹が立つはずです。

相続権がないからこそできる無欲の介護もあります。金で済むなら最初からヘルパーでも何でも頼めばいいのです。身内の介護には介護する人の思い入れがあります。欲得や計算高い気持ちでできる介護でもないのです。そいう意味では特別寄与料という新制度は介護する人の気持ちを汲んでいるとはいい難い面があります。

家庭裁判所で介護ヘルパーに支払う対価をもとに特別寄与料を算定されたのでは、身内で介護する人にとって全く小ばかにされたような気分になります。できるものなら相続人の責任で介護をしてみればいくばくかは介護の苦労がわかるはず、と言いたくなります。

◆ 問題解決どころか相続を深刻化させる特別寄与料。

相続人以外の親族と言えば主に嫁(被相続人の兄弟姉妹や甥姪という場合もあります。)です。親の介護を請け負うとなればどうしても嫁の背中にのしかかってきます。自分の配偶者の親ですから、血はつながっていなくても自分の親として介護の責任を感じるのは当然です。

これまでは、他の相続人からは感謝されるどころか介護費用の使い込みを疑われたりすることすらありますから、報われない立場でした。それに報いる制度として特別寄与料が創設されたのですが、相続というものはそもそも公平にはできていません。

特別寄与料は介護した嫁などから、相続人に対して特別寄与料を請求することで制度として機能します。他の相続人にとれば自分の相続財産の分け前が減るわけですから、面白くありません。結局、欲得の絡み合いになりますから、立場の弱い嫁では、権利と言えども引かざるをえないか、あるいは言い出しにくい話なのです。

◆ 特別寄与料は争族の火種、まとめ。 

特別寄与料の請求権者は「特別寄与者」と呼ばれます。特別寄与者としての請求権がある人は相続人以外の被相続人の親族です。

親族とは6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族ですから、相続人の嫁や兄弟、甥姪、孫などの相続人でない人が特別寄与料を請求できます。

寄与料の算定方法はここではパスしますが、介護する人にとれば心中複雑に気持ちになる無情な算式です。請求できる期間は相続の開始を知ってから6カ月となっています。

嫌な話ですが、相続人と特別寄与者で話し合いがまとまらないと家庭裁判所の調停に進みます。弁護士を頼めば費用も掛かります。そこまで争族になるくらいなら権利請求などしたくないと思うでしょう。

それやこれや、介護する嫁の立場と気持ちを思うと、よほどドライにわりきれないと新設された特別寄与料は、残念ながら介護問題の切り札にはならないような気がします。

養子縁組みで相続人不和に!

 

養子縁組の難しさは当事者になるとわかる。

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です