
タワーマンションなどの収益物件に投資して、相続課税を免れる手法が問題視さ
れ、最高裁で国税が勝訴という結果になりました。
いわゆる「タワマン節税」に対し、国税側の主張を認める最高裁判断が示されたと
いうことです。
税制に従って適法に節税し申告したとしても、
それを「看過しがたい不均衡を生じさせ租税負担の公平に反する。」として
追徴課税されました。
制度に沿って行われたとされる対策であっても、
結果として否認される可能性があることが明確になった点で、
影響は小さくありません。
これまで同様の手法で、多数のタワマン節税が行われています。
今回の判決で相続税の調査を待つ納税者のなかには、
戦々恐々という方もおられるのではないかと思います。
納税者の立場から見れば、どこまでが許容され、どこからが否認されるのか、
その線引きの見えにくさに戸惑いを感じるケースもあると思われます。
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◆ 伝家の宝刀とは?国税勝訴の影響は大きい。

今回の判断で鍵となったのは、財産評価基本通達の総則6項、
いわゆる例外規定です。
「著しく不適当と認められる場合には別途評価する。」とあります。
条文自体はシンプルですが、具体的な数値基準や明確な線引き
が示されているわけではありません。
そのため実務上は、通常の評価方法では適切でないと判断された
場合に適用される余地がある規定と理解されています。
総則6項は、伝家の宝刀とも言われています。
伝家の宝刀とは、代々家宝として伝わっている名刀は、いざというときにしか使わないので、このような大仰な言い方をします。
わかりやすく言えば、切り札であり奥の手のことです。
規定自体には、具体的に何も書かれていません。
国税長官が職権で著しく不適当と認定すれば、
節税策は否認され、追徴課税や加算税、延滞税が課されることになります。
ただ納税者側からすれば、税法に則り適正に申告していても、
内容によっては否認される可能性があることになります。
最高裁の判断は、国税側の言い分を認めました。
結果的に今後に影響が大きい判例ができました。
◆ 判断基準があいまいな「どこからがアウトか」が見えにくいこと。

不動産を活用した相続税対策は、これまでも一般的に行われてきました。
タワーマンションもその一つとして広く利用されています。
ただ今回の判例を見る限り、単に形式的に制度に沿っているだけでは足りず、
実質的な評価の妥当性まで問われる可能性があることが示唆されています。
ここで生じるのが、納税者側の悩みです。
どの程度までが許容されるのか。
どこからが「著しく不適当」と判断されるのか。
この判断基準が明確に示されていないため、結果として予測が難しい領域が
残ることになります。
たとえて言えば、国税の伝家の宝刀で網はかけられましたが、
その網目の粗さが見えないのです。
何事も程度問題ということがあります。制度的に問題がない節税策であっても、
やりすぎると伝家の宝刀を抜かれる可能性があるということです。
実務的に安全な対策として言えることは、
事前に税務署に相談されることが確実ではないかと思います。
◆ タワマン節税の仕組みとズレる要因。

タワーマンションによる節税は、評価方法と実勢価格の差を利用したものです。
相続税評価は、以下の基準でで算定されます。
土地:路線価
建物:固定資産税評価
敷地の持ち分の相続税路線価と、建物部分は固定資産税評価の合算で評価されます
一方で市場価格は、それとは大きく乖離する場合があります。
とくに都心部のタワーマンションでは、この差が顕著です。
この評価差が、節税効果の源泉になります。
タワマンの固定資産税評価を決めるのは行政側です。
それを利用して相続税評価を容認してきたのは課税庁です。
しかしながら、制度として認められている評価方法であっても、
その適用結果が著しく不均衡と判断されれば、
別の評価が行われる可能性があります。
言い換えると、形式的な適法性だけでは十分ではない場合がある
ということです。納税者側には、違和感が残る結果となっています。
今回の判断を受けて、納税者側からは次のような疑問が生じやすくなります。
・どの時点で「やり過ぎ」と判断されるのか
・事前にどこまで予測できるのか
・同様の取引でも結果が変わる可能性はないのか
こうした点について、明確な基準が示されているとは言い難い部分があります。
この「予見可能性の低さ」が、
節税対策の難しさを一段引き上げている要因とも言えます。
◆ タワマンブームこそリスク。

大手不動産会社の営業部長からの情報では、
都心のタワマンなどは人気の物件ですから、建築前の募集段階ですぐに売れてし
まそうです。それも高い物件ほど売れ行きがよいとのこと。
タワマンは評価額を否認されるリスクだけではなく、
一時のブームという可能性があります。
今でこそ人気ですが維持費用も高くなるため、ブームが過ぎると値下がり幅が大
きくなる可能性も否定できません。
その結果、将来的には実勢価格が下がり、節税額を上回る資産価値の低下
ということもあり得ます。
評価減効果は高くても、
それがそのまま損失になってしまうというリスクも考えられます。
今回の判例は、タワマン人気に水を差すことは間違いないと思います。
借入金がある場合は、高く売れる間に処分して清算しておく手も考えるべきかも
しれないところです。
◆ 節税したつもり、自分で払うわけではない相続税。

タワマン節税は、相続税を節税することが目的です。
相続税は、一所懸命知恵を絞って、借金までして節税を考えた被相続人が、
自分で払うことはできません。
あの世に旅立ってからでは、相続税が実際に節税できたかどうかを知ることはで
きません。相続税は被相続人ではなく、相続人が負担する税金です。
別の視点では、相続人にとり維持コストの負担が重いタワマンです。
また資産価値が下落する可能性もあります。
相続人にとれば、否認リスクがあるタワマンと
借金だけを残されても困ることがあります。
それゆえ過大な節税策は、
相続人の負担になるというリスクも考えておく必要がありそうです。
節税のために組まれたスキームが、
相続人にとって必ずしも合理的とは限りません。
管理コスト、流動性、将来の価格変動などの要素を含めて、
最終的な負担は誰がどのように受けるのかという視点が欠かせません。
■終活では保険を見直すだけでなく、財産整理が何より重要なわけ。
◆ 税制が変わる、例外規定が適用されるリスク。

相続税の節税目的でタワマンに投資したり、不動産を購入したりする場合、
現行の税制が今後も続くことを前提としています。
実務的には、相続が発生したときに、
税制がどう変わっているかということが問題となります。
節税対策をしてもルールが変われば、
あてが外れることも過去の事例が示しています。
しかし相続の発生時期ばかりは、
自由がきかず前倒しするというわけにもいきません。
税制が変わる、あるいは例外規定が適用されるというリスクを前提とした、
節税策の落としどころを見極める必要がありそうです。
◆ タワマン節税に国税の網、まとめ。

タワマン節税を引き継いだ相続人の中には、
相続税の税務調査を前に対応を検討されている方も少なくないと思われます。
修正申告を選択するのか、あるいは更正処分に対して不服申立てで争うのか。
いずれにしても、今回の判例を踏まえると判断は簡単ではありません。
相続税対策として、不動産投資が勧められてきたケースは
これまでも多く見られます。
中には借入を伴い、
賃貸マンションやアパート経営に踏み切った事例も珍しくありません。
確かに、現金のまま保有するよりも不動産に組み替えることで、
相続税評価を抑えられる可能性があるのは事実です。
ただし今回の判例を受けて、その評価が想定どおりに認められないケースも
意識せざるを得なくなりました。
結果として、修正申告を求められる可能性も現実的な検討対象に入ってきます。
近年の動きを見ると、各種の節税スキームに対する見直しが進んでおり、
課税当局の対応は以前よりも慎重かつ厳格になっている印象を受けます。
もっとも、納税者の側からすると、どこまでが許容範囲で、
どの時点で判断が変わるのかを事前に見極めるのは容易ではありません。
備えようとしても、打てる手が限られる場面もあるのが実情です。
そうした意味では、節税対策というものが、
結果次第で評価が大きく変わってしまう側面を持っていることは否定できません。
タワーマンションのような資産は、そもそも誰もが関わるものではありませんが、
相続税の問題そのものは、資産規模に応じて多くの人に関係してきます。
余計な心配を抱えずに済むのであれば、それに越したことはありません。
そんなことを考えると、日々の安心感があるだけでも、
一杯のビールの味は変わってくる――そう感じる場面もあるかもしれません。
「タワマン節税に伝家の宝刀|最高裁判決で見えた“否認ラインの曖昧さ”」への3件のフィードバック