法人保険の損金ルール、改正前の既得権見直しチャンス。

法人保険の損金ルール、改正前の既得権見直しチャンス。

法人保険の損金算入ルールは、時期により大きく変わってきました。そして最後には、バレンタインショックで最高解約返戻率による損金算入ルールが規定され、ほぼメリットがある損金率はなくなりました。

しかし、過去の多くの通達では既契約への遡及が見送られています。損金算入ルールにおいては、改正前と改正後の二重のルールになっています。

基本的には、保険の契約時期で判断することになります。

改正前のルールを適用する場合と、改正後のルールを適用する場合があり、法人保険の損金算入ルールの変遷を正しく理解できていないと、適切な経理処理ができなくなります。

■法人保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

■法人保険の解約時期を誤る大損リスクと解約管理のポイント。

◆ 既契約の節税保険は、改正前の損金ルールと解約時期に注意。

生命保険契約というものは、定期的に見直さなくてはなりません。しかし、事業保障を目的とした保険であれば、それほど頻繁に見直す必要はありません。事業規模の拡大に合わせて、保障額を追加すればよいのです。

ところが、節税目的で契約している法人保険は、細心の注意で解約時期を見直さなくてはなりません。

国税庁の通達により、節税保険はほぼ封じられました。しかしそれまでに契約している既契約の節税保険が、山のようにあるはずです。既契約は、改正前の損金ルールで処理することが認められています。国税庁の通達でも既契約に遡及するということは、混乱が大きくなるのであまり踏み込みませんでした。

■節税保険、バレンタインショックまとめ。

その結果、契約者は安堵するのですが、同時に節税保険のメンテナンスもおざなりになりがちです。せっかくの繰り延べた利益を、みすみす無駄にしてしまう例が後を絶ちません。

また社員を被保険者とした節税保険などは、名目が福利厚生です。きちんと説明できるメンテナンスができていないと、税務調査で問題視される可能性も否定できません。

◆ 法人保険のメンテナンスとは、解約すべき保険の整理。

法人保険のメンテナンスとは、適切な事業保障が確保できているか、解約時期になっている節税保険はないかを確認します。また福利厚生の名目で社員にかけている保険は退職者の解約ができているか、などを定期的に確認することです。

法人保険に限らず生命保険は一度契約してしまうと、保険料は毎年口座振替で自動的に処理されます。経理担当者もさしたる注意を払わずに、前年度通りの事なかれ主義の経理処理をして済ませているケースがあります。

とくに経理担当者が変わったり、保険営業の窓口担当者が変わったりすると引継ぎが不十分となります。その結果、解約逸機が起こりやすくなります。組織内で保険契約ごとの損金ルールの変遷などが、正しく引き継がれるとはとても思えません。

また証券会社や銀行系の保険代理店を通じて契約していると、そもそも顧客サービスとしての解約時期の案内は期待できません。保険の見直し提案があっても、過去の既契約の流れを考えない底の浅い提案になりがちです。

■保険の払済は保険会社によりバラバラ、問合せた驚きの結果。

◆ 節税保険の解約逸機は損失重大。

法人保険のメンテナンスがとくに重要だと申し上げる理由は、解約逸機ともなれば半端ではない利益損失が発生するからです。解約返戻金の損失額は数字でしか見えませんが、それは札束が消えているのと同じことなのです。

また企業の売上伸長に伴う事業保障の上乗せが、適切にできていないと大変なことになる可能性があります。節税保険を解約したら事業保障が大幅に少なくなっていたというような、本末転倒の事態も起こり得るのです。

また退職者の解約や新入社員への付保が適切にできていないと、税務調査で福利厚生とはみなされないリスクもあります。会社は生き物であり日々刻々と経営状況は変化していきます。その変化に保険も対応させる必要があります。

法人契約の保険はその目的を理解して、解約や追加契約を定期的に行うメンテナンスが必要なのです。そのためには、改正前のルールを含めて正しい知識をもたないと間違いの原因となります、

◆ ピーク越え大量のがん保険、全損保険が野放し状態。

法人保険の既契約なかには、節税目的でかけてきた全額損金のがん保険が残っていると思います。契約者は法人、被保険者は役員・従業員で給付金・保険金の受取りは法人という仕組みです。このがん保険は改正前のルールが適用されますから、相変わらずおいしい保険料の全額を既得権として費用で処理できます。

多くの企業では付保規定を作成して、福利厚生として全額損金処理してきたがん保険が、残骸のように大量にあると思います。平成24年の国税の通達により、それまで全額損金で処理できたものが1/2損金に変わりました。しかし元々が節税目的で加入していますから、利益の繰り延べ効果が薄れた時点から、新たな加入はしていないもの思われます。

社員全員に付保することで福利厚生としてきたものが、その意味がなくなりました。しかし、既契約は全額損金できます。がん保険を部分的に継続しているという、不思議な契約形態になっているものと思います。

管理者がしっかりしていれば、退職者の解約は定期的に行っているかもしれません。しかし1/2損金で新規契約はしていないはずですから、全員付保という福利厚生目的は崩れてしまっています。まさに野良化した全損がん保険と言えると思います。

■がん保険、法人の全損既契約は保険金請求が大問題になる深い理由。

◆ 解約返戻率が悪化するがん保険に注意。

保険会社によりますが、がん保険は被保険者の年齢が60歳を過ぎたころから、解約返戻率が徐々に悪くなります。なかには単純返戻率が60%以下というような契約もまぎれているかと思います。

保険料はまとめて口座振替されていますから、個々の契約の解約返戻率まで確認している経理担当者はさすがにいないでしょう。法人契約のがん保険はいたるところにほころびがあり、損失が出てきている状況です。

いまどきでは価値が高い全額損金の既契約ということで、残していると思います。しかしここでしっかり見直し、出口対策に合わせて一気に整理しないと、傷口が拡大するばかりとなります。この件は誰もアドバイスしてくれないと思います。

◆ 法人保険の損金ルール、改正前の既得権、まとめ。

会社で契約する法人保険は、目的が事業保障だけではないので、管理するときは細心の注意が必要になります。利益が毎期出ている企業では、改正前のルールで保険料を損金で処理できる保険に大量に加入されていると思います。

国税庁は、保険業界の新商品に規制をかけるイタチごっこを繰り返してきました。そしてそれに終止符を打つべく、最終通達ともいうべき法人税基本通達9-5-3の2を令和元年に発遣し、節税目的である保険商品すべてに網をかけ規制を導入しました。

その結果、それまででも結構ややこしくなっている損金算入ルールが、一層複雑になりました。説明を聞いただけでは、簡単に全体像を理解できないと思いますが、できるだけわかりやすくかみ砕いたつもりではあります。

既得権と改正後のルールをきちんと分けて、間違いなく経理処理しなくてはなりません。それにからんで保険積立金の取り崩しや解約返戻金の処理もあります。複雑にはなりましたが、経理処理の正解は一つです。

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