相続税がかからなくても遺留分の大問題。

相続税がかからなくても遺留分の大問題。

相続税がかからないフツーの庶民の相続でも争族は熾烈な身内の争いに発展しがちです。どの相続人にも民法で定められた遺留分の権利はありますから、遺言書で指定したとしても同居する長男だけにすべてを相続させることはできません。

他の相続人である兄弟姉妹の遺留分に配慮して遺言書を書けばよいのですが、相続で分けるものが不動産だけという場合や生命保険による代償分割などの準備ができていない場合は大変です。住んでいる家は売却できないので、分けられる現金が足りないとやはり争いが泥沼化し家庭裁判所まで行く例が多いようです。

家制度が崩壊し、個人の権利が増大した結果、平等という権利意識が争族を激化させている面があります。田舎では、今でも嫁に出した娘や独立している次男などが相続に口を出すと煙たがられます。仲のよい家族、親族でも被相続人たる親が亡くなると抑えが効かなくなり、言いたい放題になることもあります。

更にはネットで検索すれば、相続関連の情報はいくらでも手に入ります。遺留分や生前贈与、特別受益の持ち戻しなどの専門用語も詳しく解説していますから、相続人として主張できる権利を確認できますし、専門の税理士や弁護士を探すこともネットで簡単にできる時代です。

そういう時代だからこそ、被相続人も相続予定者も相続関連の知識で武装しておく必要があります。知っていると知らないとでは遺産分割協議や遺言書の内容を相続人で確認するときに大きな差が出ます。相続の知識があれば、専門用語を駆使してその場を押し切ってしまうこともあり得ます。よいか悪いかわかりませんが、時代が相続税のかからないフツーの庶民にまで遺留分などの専門知識を求めていると言えると思います。

◆ 遺言書に優先する遺留分。

遺留分を一言で言えば、相続人に認められた法定相続の半分を受取る権利です。相続人であれば多少親不孝でも出来が悪くても遺留分をもらえる権利があります。

家を出てから盆暮れにも帰ってこない、帰ってくれば金の無心かトラブルのような、寅さんのような人でも遺留分の権利はしっかり守られています。

おいちゃんとおばちゃんの遺産は姪御であるさくらに全部相続させると遺言書で書いても、寅さんは1/4を遺留分として相続できるわけです。遺言書で財産分けを指定しても、遺留分の権利は侵害することができません。遺言書より優先する権利が遺留分なのですね。

親不孝ものでも遺留分は法的権利と申し上げましたが、遺留分の権利を放棄させることはできないのでしょうか。また出来の悪い身勝手な推定相続人を廃除できるのでしょうか。どちらも仕組みとしてはありますが、実際的にはハードルが高くとても難しいと言えます。ですから、遺留分は遺言書に優先する最強の権利だとお考え下さい。

◆ 遺留分の時効は1年。

遺留分の権利を主張することができるのは、遺言書で自分の遺留分が侵害されていることを知った日から1年とされています。遺留分の権利を本人が知っていたかどうかは自己申告です。どうでも言い訳可能ですが、遺留分という制度そのものをしらないと言うケースもあります。誰も教えなければ権利の主張はできませんが、ずっと後になってから誰かに入れ知恵され、遺留分の権利を主張されるとやっかいです。やはり遺産分割協議で決着させておくべき遺留分です。

兄弟姉妹に遺留分がない件は下記に詳しく書きました。

■相続税、兄弟姉妹に遺留分がない理由。

◆ 遺留分計算の特別受益には時効が10年。

特別受益のもち戻しには時効がありませんが、遺留分の計算をする場合、特別受益の持ち戻し範囲は相続発生前の10年に限られます。「他の相続人に明らかに損害を加えることを意図した生前贈与」は特別受益のもち戻し時効の対象外ですが、証明することは簡単ではなさそうです。

また特別受益の持ち戻しの免除の意思表示は、遺言書や遺産分割協議では有効ですが、遺留分の計算上は無効となります。そうなると生前に株価の安い時期に自社株贈与を後継者一人に集中した場合などにリスクとなります。自社株贈与の憂いを完全に除去できる除外合意という事業承継のウルトラCもありますが、ここでは触れません。

意図せずに遺留分を侵害してしまうような遺言書にならないよう、遺留分に細心の注意を払い、配慮した遺言書が必要な訳です。

特別受益と遺留分減殺請求は経営者の落とし穴。

◆ 遺留分の大問題、まとめ。

遺産が少ない家庭ほど相続ではよく揉めるというのは実際の事例でも、統計データからでも明らかです。

遺産というのはよく考えれば形こそいろいろですが結局はキャッシュと同じことです。遺産分割協議では目の前に一万円札が積み上げてあり、その分捕り合戦をしていると思えば、ほぼ間違いありません。

たとえば単純に、何の責任も負わずに100万円の札束が棚ぼたでもらえるとしたらこれほどありがたいことはないのです。相続とは金、そういうことですから、簡単に譲歩できないし骨肉の争いにもなるわけです。

財産が余るほどあれば、100万ぐらいの現金であれば兄弟喧嘩するくらいなら譲ってしまうかもしれませんが、生活に困窮していれば喉から手が出るほど欲しい当座の現金です。それゆえに相続では迫害され、遺言書では無視されて法定相続分すらも相続できなかった相続人の最後の砦として遺留分があります。

相続税がかからなくても相続はあります。相続があれば遺留分は額の大小は別にしても必ずどこにもあるわけです。全てのひとはいつか相続人になる必然性があります。そしてその相続人に保証されている権利が遺留分だとすれば、これは相続税がかかるかどうかを越えた相続上の大問題と言えるのではないかと思っています。

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