遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?

遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?

遺言書があれば、遺言書に従うのが普通と言えると思います。厳密な話では、相続人全員が合意すれば、傍目(はため)に不公平であろうと遺産分割協議で決着できます。長男が他の相続人を押し切って独り占めしようと、他の相続人の納得があれば、どのような分け方でも誰からも文句を言われる筋合いはありません。

そういう意味では、遺言書か法定相続かあるいは遺産分割協議かという優先順位は、相続人全員が合意できなければ、遺言書優先となります。遺言書がなければ相続人同士の協議になり遺産分割協議をまとめることになります。話がまとまらないような場合の落としどころは、法定相続に従い遺産分割協議書を仕上げて実印を押すことです。

■遺言書の効力がものを言う、絶対必要な7つのケース。

◆ 遺産分割の話し合い期限は10カ月。

相続が発生したとき、相続人は亡くなった親の財産をどのように分けるか決めなくてはなりません。相続税がかかる場合は10カ月という期限がありますが、相続税がかからなければいつまで揉めていてもかまいません。

とは言っても相続税の基礎控除が下がったために、本来相続税など関係がなかった層も、相続税の心配をしなくてはならなくなりました。このためぎりぎりのボーダーラインにいると思われる相続税予備軍では、やはり10カ月がめどになります。相続税の申告期限までに決着を考えないとまずいことになる可能性があります。

また、相続税がかからないような相続では、正式な遺言書を書くこともあまりないようです。遺言書がなければ、相続人同士が相談して分け前を決めることになります。その記録を残して、実印をつけば遺産分割協議書となります。遺言書がない場合の遺産分割は、法定相続を基本に特別受益や介護に対する貢献、それぞれの家庭の経済的な事情により、話し合いで決めなくてはなりません。

◆ 遺言書を破棄するとどうなるか。

正式な形式要件を満たした遺言書は、破棄したり偽造したりすれば犯罪です。

有印私文書偽造罪が成立し刑事罰の対象となります。

ただ誰も存在を確認したことがない遺言書を先に見つけた相続人が、自分に不利な遺言の内容を知り、破棄するということはあり得ないことではありません。

それゆえ遺言書の保管は、タンスや仏壇・貸金庫などではなく、公正証書遺言にするか法務局保管制度を利用すべき理由があります。

遺言書の破棄や偽造がバレた場合、刑事罰だけではなく、相続欠格となり相続権を失い元も子もなくしてしまうかもしれません。遺言書を破棄したい誘惑にかられたとしても、そこは自重しなくてはならないわけです。

遺言書を破棄すれば罪になりますが、遺言書を相続人全員が無視して相続人合意の上で遺産の分け方を決めることは可能です。親不孝かもしれませんが、違法ではありません。

遺言書を無視して相続人同士が分け方を相談しても、利害が絡みますからそう簡単に話がまとまるとも思えません。有効な遺言書がある場合は結局、遺言書に従わざるを得ないと言うことになりそうです。

■遺言書を破棄したら罪になるかを事例で説明。

◆ 相続人に反対者がいれば遺言書は無視できない。

相続は争族、あるいは争続となることが多いのは、金銭が絡むゆえの宿命でしょうか。遺言書があっても相続人全員が合意し、納得できれば遺言書と異なる遺産分割協議でもかまわないと申し上げました。

しかしそれは裏を返すと相続人に一人でも遺言書を無視するような遺産分割協議に反対者がいれば、遺言書に従わなければいけないということです。

遺言書でも遺産分割協議でも、相続人全員が納得できる分け方があるとも思えませんから、遺言書を無視して遺産分割協議となることは、そもそも無理があります。

また遺産分割協議では議長がいるわけでなし、相続権がない外野が口うるさく収まらないこともあります。相続人は主に配偶者と子である兄弟姉妹ですから、発言力の強いものが仕切ることになると余計に反発が出てきます。結局、遺言書を無視することはそれほど簡単にはできないということです。

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◆ 遺言書>遺産分割協議>法定相続、優先順位まとめ。

相続での優先順位を検証してきました。庶民の相続では、遺言書もなければ改まって遺産分割協議をすることはないと思います。

相続税はかからないですからそのまま二次相続まで放置するケースが結構あるように思います。昨今の田舎相続では、売れない実家と耕作放棄した農地が遺産として残ります。

価値が低い負動産は、固定資産税と管理費用がかかるだけなので譲り合いになります、というか押し付け合いになり妙な争族が勃発する気配です。都市部では財産はあってもキャッシュがないという相続が、身内のもめごとを複雑にします。

財産があってもなくても、人と人がからむ相続ではそれほど簡単に収まりません。

道は譲れても相続は譲れないのが人間の性(さが)です。

そうであればこそ遺言書は、相続で効力を発揮します。遺産分割協議だとか法定相続だとか考えなくても、相続人が一番納得できる仕組みが遺言書だと言えると思います。

遺言書を書くときは遺留分に配慮し、キャッシュが足りない場合は生命保険で代償分割が可能な契約を結んでおくことです。

生命保険では死亡保険金控除、相続人一人当たり500万の控除が大きく、一石二鳥になると言えると思います。遺言書か法定相続か遺産分割協議か、相続の優先順位は?と問われれば、生命保険と遺言書のセットが最右翼の対策と言えるのではないかと思料いたします。

遺言書優先の原則と遺産分割協議の矛盾について。

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