雇用調整助成金の再延長、甘い汁はモチベーション最悪。

雇用調整助成金の再延長、甘い汁はモチベーション最悪。

雇用調整助成金の特例措置として申請対象期間が延長され、令和4年9月末までとなりました。給与の締めの期間が1日でも含まれれば申請することができます。

現場の計画や事情を無視して急遽、期限までの範囲で所定の割合に達する日数まで社員を休業させるよう経営陣からお達しが出るという繰り返しのパターンが出現します。

当然、現場は混乱します。単純に有給が増えるのと同じですから一般社員は不服があろうはずがありません。ところが幹部社員は休業させる人選や戦力ダウンの中からやりくりを組み直さなくてはなりませんから大変です。しかし問題はそれだけにとどまらないのです。

会社はわずかばかりの雇用調整助成金で、社員に予定外の休業をさせます。そうすると社員も人間ですから易きに流れ、仕事を継続するための緊張の糸がゆるむのです。一度ゆるんだ糸を締め直すのは何倍もの骨がいります。

雇用調整助成金の悪循環、コロナショックの病巣。

◆ 度重なる雇用調整助成金の再延長。

雇用調整助成金はコロナ禍で売上を落として、経営が苦しくなり社員の雇用を維持することが困難になった企業に対する補助金です。売上減少で業務量が減少した社員を、解雇ではなく休業として一定額の給料を支払い復活の日まで雇用を維持するためには資金が必要です。その資金を補助する仕組みが雇用調整助成金です。

コロナ禍は終息するどことか第7波のピークが見えない状況で過去最大を更新しています。そのため雇用調整助成金も何度も延長という措置がとられました。

老婆心までに申し上げておくと、よく似ていますが「雇用継続給付金」とは別物です。雇用継続給付とは、高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付が支給されます。

◆ 雇用調整助成金は資金繰りの麻薬。

社員数が多いと雇用調整助成金を繰り返し受給すればそれなりの金額が営業外収益として残ります。本業の赤字を少しでも埋めることができるので、その弊害を考えずに雇用調整助成金の受給に走ってしまう傾向があります。

経営とはある面ではキャッシュをショートしないように回していくことです。そういう意味から言えば経営者が雇用調整助成金のキャッシュに目がくらむことは致し方がないのかもしれません。

ただ、経営に余裕のある企業までが無理に休業させて、雇用調整助成金を得ようとするのは弊害が大きいような気がします。そのときのメリットと後のデメリットを考えずに受給申請に走ってしまう理由は、雇用調整助成金が一種の麻薬のような、安易な快楽なのかもしれません。

◆ 経営者は補助金に頼らず経営の立て直しをすべき。

雇用調整助成金の弊害と呼べるものに、社員のモチベーションの低下があります。売上が減少すれば、現場の仕事量は減ると考えるのは、ある一面からすれば早計なのです。人は仕事をするとき、いつも100%で働いているわけではありません。忙しい日もあれば、余裕のある日もあります。どこの職場でも業務量には波があり繁忙期があります。

採用するときは、繁忙期に対応できる人員を揃えようとします。そうすれば必然的に閑散期の業務密度は低下してくることになります。ところが職場というのは売上が落ちたから一律に業務量が低下するとは限らないのです。どこの職場でもやりくりということがあり、手が空いたときにやることがあります。

例えば5Sと言われる整理整頓、原料の発注、繁忙期に向けての在庫の確保など雑多な業務があります。決して手持無沙汰に遊んでいるわけではなく、メリハリをつけながらこれまでできていない課題を次から次へ処理しなくてはならないことがあります。

◆ 雇用調整助成金の悪循環、まとめ。

本当であれば、休んでいる場合ではなく売上が落ちているときこそやるべきことがあるはずです。雇用調整助成金目当ての休業は、社員の余裕率を削ることになります。しかし一番の問題点は、職場に対する緊張感と責任感の糸がたるんでしまうことにあります。

休業という時間的余裕は、社員にとり棚ぼたの特別有給という甘い汁になります。売上が落ち込んで経営が厳しいときに、ぬるま湯と言ってもよいかもしれません。厳しさが欠けると、社員のモチベーション低下につながります。有給休暇ではない休業の甘い汁は社員をダメにすると申し上げたいところです。

わずかばかリの雇用調整助成金のために、社員の意欲を削ぐようなことになりかねないことが懸念事項として残ります。経営は社員の力をいかに引き出すかです。これが保険営業なら休業と言われても休んでいることなどできるはずがありません。なぜなら自分で成果が出なければ地位が維持できないばかりか、家族を食べさせていけないからです。

本当に、売上低下が厳しくて社員の雇用が維持できないような企業には、ギリギリのところで効果があるかもしれませんが、財務的に余裕のある企業が雇用調整助成金を稼ぐために社員を休業させるのは、職場間の不公平による不満を生むだけでなく、モチベーションに悪影響を与えることを知るべきだと思います。ひとこと付け加えるなら、不正受給が頻発しており対応が厳格化されています。ご注意いただきたいと思います。

保険営業の持続化給付金請求は違法か!?

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