保険営業は契約後も終わらない|原戸籍を求めて走り回った話。

生命保険の営業というと、多くの人は契約を取る仕事だと思っています。

確かに新規契約を獲得しなければ収入にはなりません。
しかし長く保険営業をしていると、契約を取ることよりも、
その後の手続きに時間を取られることがあります。

その中でも印象に残っているのが、原戸籍を追いかけて役所を回った出来事です。

生命保険は契約するときより、受け取るときの方が難しい場合があります。

◆ 保険は契約より受取手続きが難しいことがある。

保険金や満期金を受け取る場面では、保険会社から様々な書類を求められます。

普通であれば戸籍謄本や印鑑証明書程度で済みます。
ところが契約から何十年も経過しているケースでは事情が変わります。

契約者が亡くなっている場合、受取人も亡くなっている場合、さらには
相続人同士が疎遠になっている場合など、こうなると話は一気に複雑になります。

保険会社はお金を支払う以上、本当に正しい相続人なのか
確認しなければなりません。

その結果、出生から死亡までの戸籍を追いかけることになります。

◆ 原戸籍は簡単には集まらない。

戸籍は転籍するたびに移動します。
結婚や転居を繰り返していると、複数の自治体から戸籍を取り寄せなければなりません。

しかも昔の戸籍は手書きです。達筆すぎて読めないこともあります。
さらに相続人が遠方に住んでいる場合もあります。

中には海外在住というケースもあります。
本来なら契約者や相続人が行うべき手続きですが、
高齢になるとそれ自体が難しくなります。

◆ 原戸籍を集めても契約にはならない。

当時の契約者は高齢で、公団住宅に一人で暮らしておられました。
年金生活ですから新しい保険に加入する予定もありません。

被保険者になることも難しく、ご親族も遠方です。
紹介につながるような環境でもありませんでした。

つまり営業という視点だけで見れば、時間をかける意味は
ほとんどないお客様だったのです。
それでも原戸籍を集めなければ満期金を受け取ることができません。

委任状をいただき、役所を回り、戸籍をたどり、何とか必要書類をそろえました。
役所への交通費もかかります。新規契約のアポイントも後回しになります。

その結果、月末になると自分の仕事が山積みになり、
締め切りに追われることになります。

営業成績にはならないし経費もかかります。さらに紹介も期待できません。
それでも放っておくことができないのです。

◆ チョコレートケーキとお茶。

必要書類をそろえて訪問したときのことです。
契約者の方はとても喜んでくださいました。

「本当に助かりました。」
そう言いながらチョコレートケーキとお茶を出してくださったのです。

保険営業として考えれば、まったく採算は合いません。
時間も手間も交通費も持ち出しです。
しかし帰り道で不思議と嫌な気持ちは残りませんでした。

保険営業を続けていると、契約より感謝の言葉の方が心に残ることがあります。

もちろんそれだけでは食べていけません。だから保険営業は難しいのです。

人情だけでも成り立たないし、かといって数字だけでも続かないのです。
その間で揺れながら仕事をしているのが、保険営業の現実なのです。

◆ 保険営業は数字にならない仕事が一番大変。

保険営業という仕事は契約を取ることだけではありません。
むしろ長く続けていると、契約後の仕事の方が重くなります。

戸籍集めや保険金請求、名義変更や相続対応などがあり
保全業務と言いますが、これらは成績にはなりません。

しかし誰かがやらなければ契約者は困ります。

原戸籍を求めて役所を回ったあの日のことを思い出すたびに、
保険営業とは営業職でありながら、ときに福祉や行政手続きの
手伝いに近い仕事でもあると思うのです。

長年のお客様から、「頼むわ」と言われると断りにくいものです。
契約したときだけ愛想よくして、その後は知らないというわけにもいきません。

◆ 保険営業は時々ボランティア。

役所で代理として戸籍を取り寄せるために、
委任状を書いてもらう必要があります。

また必要書類を整理したり、相続人に連絡を取るような
こうした作業を続けていると、「自分は何屋だろう」と思うことがあります。

保険営業のはずが、行政書士でも司法書士でもない仕事をしているような
感覚になります。

もちろん正式な法律業務ではありません。
しかし高齢者の手続きを手伝っていると、
結果としてボランティアのような仕事になることがあります。

◆ お客様は保険ではなく安心を買っている。

保険営業の評価は契約件数で決まります。
しかしお客様が覚えているのは、意外と契約時の説明ではありません。

困ったときに動いてくれたことです。たとえば戸籍集めに奔走したことや
給付金請求を手伝ったことなど、施設に入居したあとも顔を出したこと。

そういうことの方が記憶に残ります。

保険商品はどこの会社でも似ています。
しかし担当者との関係は同じではありません。

◆ まとめ|契約後に見える保険営業の本当の仕事。

保険営業という仕事は契約を取って終わりではありません。
むしろ長い付き合いの中で発生する保全業務の方が、
人間関係の濃さを感じることがあります。

原戸籍を求めて役所を回った経験も、その一つです。
収入だけを考えれば、効率の悪い仕事かもしれません。

しかし保険営業の価値は申込書を書いてもらうことだけではありません。
困ったときに頼られ、最後まで伴走することも仕事の一部です。

だから保険営業は、単なる金融商品の販売ではなく、
人と人との関係で成り立つ仕事なのだと思います。

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