相続税を無税にする簡単手順、いくらまで可能か計算。
平成27年1月1日から、相続税の基礎控除が変わりました。同時に直系卑属(20歳以上)への贈与税の税率が緩和されています。基本的に増税となり、この結果多くの方が思いがけない相続税対策に取り組んでおられることと思います。一方、暦年贈与の相続税への持ち戻し期間が3年から7年まで順次延長されます。
基礎控除が下がることで、にわかに相続税の対象に組み入れられた新参者の少額資産家は何をどうすればよいのでしょうか。今回の一連の増税で、そもそも自分に相続税がかかるのか、それともかからないのかすらわからないのが現実ではないかと思います。
相続税をいくらまで無税にできるかと問われれば、相続税改正でも6,300万までなら相続税を0円にする簡単な手順があります。
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◆ 相続税を無税にできる限度額の計算例。
妻・子2人で一次相続、二次相続合わせて6,300万まで相続税を無税にできます。
改正後の相続税で試算すると、シンプル対策だけで6,300万まで相続税が非課税となります。この範囲ならあわてず騒がず、素人向きに簡単手順で相続税を0円にする対策完了です。
モデルケースとして夫(一次相続・被相続人)妻(一次相続、相続人/二次相続・被相続人)子2人(相続人)とし暦年贈与を子2人に対して基礎控除110万の範囲で10年続けたと仮定します。それを保険料にあてて終身保険を契約します。
契約した保険金が、1,500万であれば以下の計算式にあてはまりますが、保険金が大きくなるか、手持ち財産の評価が基礎控除枠の4,800万より大きいと相続税の申告が必要になります。
・一次相続の計算例。
基礎控除 3,000万
妻・子2人(600万×3人) 1,800万
死亡保険金控除(500万×3人) 1,500万
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①一次相続控除額 6,300万
死亡保険金の非課税枠と使うためには、条件があります。
契約者:親(被相続人)被相続人が保険料を負担していることが必要です。
被保険者:親(被相続人)被保険者死亡で相続となり保険金が出ます。
受取人:子(相続人)あまりないケースですが、受取人が相続人以外であると遺贈となり非課税枠の適用はありません。また、相続放棄した人は、死亡保険金を受け取ることはできますが、受け取った保険金に非課税枠を適用できません。
保険金は受取人固有の財産として遺産分割協議とは関係なくなりますが、みなし相続財産として相続税の対象となります。その場合、非課税枠の500万が有効に使えます。
別に難しい条件ではなく、通常はそういう契約形態になっていると思います。ただし今回の場合、死亡保険金が1,500万を越える契約になっていれば、基礎控除を越えてしまいますから、その分は相続税の対象となります。
二次相続では、相続人(配偶者)が一人減ります。相続税の控除枠もその分縮小します。二次相続でも死亡保険金控除の非課税枠を使えますから、有効な保険契約がなければ、一時払終身保険を契約しておくべきです。
・二次相続。
基礎控除 3,000万
子・2人 1,200万
死亡保険金控除(500万×2人) 1,000万
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②二次相続控除額 5,200万
単純計算ですが、暦年贈与を10年間続けられたとします。これで2,200万相続財産を減らせます。
ただし暦年贈与の相続財産への持ち戻しは3年から順次7年まで拡大されましたので、ある程度の期間にわたり贈与をしていないと相続財産の減額効果が限定的になります。
でも途中で相続が発生して、それ以前の贈与が相続財産に持ち戻されても、保険金が出ますので相続税の納税資金は確保できています。
もちろん暦年贈与の受贈分で終身保険に加入します。
二次相続では②二次相続控除額5,200万以下のまで減らせていれば、相続税はかからなくなりそうです。
・贈与したお金で普通の終身保険に入ること。
相続税で非課税枠となる生命保険は、親が契約者(保険料負担者)で被保険者という条件がありました。
それとは別に相続税の納税資金を確保しておくために贈与税の基礎控除の範囲で毎年110万円程度、子である予定相続人に贈与し、被相続人である親を被保険者とし、子を契約者かつ受取人にした生命保険契約に加入します。
二次相続用にも生命保険金非課税枠の相続人二人分の1,000万枠(500万×2名)が使えるように、妻を契約者兼被保険者とし子を受取人にした生命保険契約にも加入しておきます。
同時に、奥様から子に保険料を贈与し被保険者は奥様、契約者兼受取人を子にすれば相続税にかからない一時所得として保険金を受け取ることができます。
相続対策では、保険の種類は死亡保険金が約束されている終身保険がベストです。保険契約は他の対策とは、比較にならないほど安全確実・手間いらずでかつ金額が確定します。
相続税改正にあわてた、にわか被相続人候補はあちこちのセミナーで聞いてきた相続税対策に手出しをせずにシンプルに簡単手順で対策をしてください。
相続が発生した時もあとに残された新米相続人が、処理に困るようなややこしい仕組みに手出しをしないことが大事です。
簡単手順とは申し上げましたが、実際は配偶者に先に相続が発生したり、小規模宅地の評価減が使えなくなったり、資産のほとんどが換金性に乏しい不動産だったりしますから絵に描いたようにはいかないのです。
予定がぶれたとき、生命保険は強い味方となります。
暦年贈与と生命保険の単純手順で相続税が無税になる相続財産のバーをシンプルな事例でご案内しましたが、実際はこれほど単純なケースはありません。
また考え方によれば、相続税は超過累進課税という仕組みですから無理に相続税を0円にしなくても低いほうの税率を適用することが安全な場合もあります。
相続税がかかる場合は生命保険で納税資金を確保すること、そして相続税対策を複雑にしないことが大事ではないかと思います。
◆ 相続税を無税にする簡単手順、まとめ。
相続税を減らしたり、無税にしたりする相続税対策での注意点をいくつかまとめました。相続税がかかると言うことは、少なくともそれだけの資産があると言うことです。そう考えると悪くない話です。
相続対策はできるだけリスクが低く簡単で、景気などの外部要因に左右されにくいことが大事です。確実な効果が期待できる相続税対策を考えることが、老後の安心感につながるように思います。
1)効果的な相続税の節税対策は自分で遣い減らすこと。
一番効果的かつ確実安全な節税対策は自分で遣うことです。残すことばかり考えずに老後の生活を豊かにすることに投資して下さい。
時々は子や孫におこずかいをあげて喜ばれつつ世界一周旅行でも世界遺産巡りでもして優雅に暮らしてください。それが一番の節税ですね。
2)自分で管理できない難しい相続税対策に手を出さないこと。
リスクの高い金融商品や不動産に手を出さないこと。
資産の評価を下げる対策は資産価値を失うリスクがあります。素人はたとえ忘れても安全な対策に限ることです。人任せの相続税対策は失敗の元です。
3)万が一の相続税の納税資金を生命保険で用意すること。
先のことはわからないのが人生、相続税がかからないところまで対策をしても、地価の高騰や景気の変動、宝くじに当たる(あまり確率は高くないですが)等で資産が当初の想定より増加することもあり得ます。
相続税がかかるようになってもキチンと納税できるだけのキャッシュを生命保険で準備することです。