生命保険で同居の嫁の相続悲劇を救済する方法。
家制度ははるか昔になくなりましたが、家の嫁という考え方はまだまだあります。
核家族化が進んだとは言え、息子が結婚すればその嫁は自分の娘と同じことです。
誰しも確実にもれなく老います。果ては体が弱り人のお世話になります。
息子の嫁に世話にならなければならないことも起こります。
お世話になった嫁には感謝の気持ちとして、いくばくかの財産を残してやりたいと思うのも当然です。
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ところが相続は嫁に限りなく冷たくできています。
実の親子ではないので相続人ではなく、遺産を受け継ぐ何の権利も保証されていません。
まだ相続人である夫が存命なら表立ってはないにしても意見を言えるでしょうが、田舎では相続に口を挟まない嫁がよい嫁とされたものです。
親と同居するのは長男の嫁が多いと思います。同居の嫁は遺産分割に関しては、家のことも親のことも責任を放棄している他の兄弟に比べると著しく不公平なのです。
この状態を同居の嫁の相続悲劇として、少しでも解消できる方法について生命保険を柱に列挙しました。人生経験と生命保険の知識がお役に立てば幸甚です。
1)同居の嫁に相続権なし。
同居の嫁は息子の配偶者です。被相続人たる親から見れば、いくら世話になっても血がつながっていません。赤の他人ではないですが、法的には姻族という事になります。
よって相続権が元からありません。相続権がないから当然ながら相続人一人当たりの相続税の基礎控除(600万)も生命保険死亡保険金の非課税枠500万もありません。
意図的に手を打たなければ、同居の嫁に相続に関しては権利も特権も一切ありません。
2)同居の嫁を生命保険の受取人に指定。
生命保険金は受取人固有の財産として判例が確定しています。同居の嫁を生命保険の受取人に指定すれば誰はばかることなく報いることが可能になります。ただし注意すべきことがいくつかあります。
・生命保険金は受取人固有の財産ですが、相続税の納税義務が発生します。
・納税義務が発生しても相続人ではないので相続税の基礎控除(600万)も死亡保険金控除(500万)も使えません。
・嫁が受け取る生命保険金が相続財産に合算され計算されるので、他の相続人にとっては増税になります。
・もし生前贈与を受けていれば、相続として納税義務が発生した時点で贈与3年以内のもち戻しが発生します。
生命保険では各社微妙な違いがありますが、受取人は原則として、配偶者および2親等以内の血族(祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫など)とされています。
生命保険にはモラルリスクということがあります。嫁は血族ではなく姻族ですから原則外になります。
よって息子の嫁を死亡保険金の受取人に指定する場合は、個別に理由等を確認することになり、ケースによっては調査が入る場合があります。でも受取人に指定できないということはありません。
3)同居の嫁には遺言書で遺贈。
簡単なようでなかなかできない遺言書ですが、書き方さえ間違わなければもっとも簡単に同居の嫁に財産を遺贈することができます。
遺言書で指定すれば、相続人でなくても財産を渡すことができます。この場合、他の相続人にも配慮しないと後後揉めることにもなります。
世話になった嫁が孤立して困ることがないよう、他の相続人の遺留分を侵害するようなことがなく、また遺贈の意思を言い含めておくことも必要です。
4)同居の嫁を養子縁組して相続人に。
他の相続人がとやかく言わないなら、確実な方法としては嫁を養子にしてしまうことです。そうすれば晴れて相続人となり権利も特権も発生します。
相続税の基礎控除(600万)も死亡保険の非課税枠500万も使えます。
明快かつ確実な手法ですが、心情的にひっかかる方もあろうと思います。
養子縁組の手続きには証人が2名必要ですが、書類さえ整えば簡単です。
5)まとめ
そうは言っても実際はなかなか遺言書も書かない方が多いですし、嫁を養子縁組するのは他の兄弟姉妹の手前、はばかられることがあるのもわかります。
相続権のない嫁にいくばくかの財産分与を考えるなら生命保険で受取人指定をすることが最も簡易でベストではないかと思います。
ただ言えることは本当に同居の嫁に感謝の気持ちがあるなら、頭がしっかりしているうちに上記のいずれかの手を打つことをおすすめします。
老いというのは体力だけでなく気力も失われていきます。何かを形にするにはエネルギーが必要です。
いつかやろうと思って先延ばしにしているうちに思いがけずハードルが高くなってくるものです。