生命保険、支払調書の抜け穴をOB税理士に確認。

生命保険、支払調書の抜け穴をOB税理士に確認。

生命保険の契約者は保険会社に申し出れば、簡単に名義変更ができます。契約者とは保険料負担者ですから、生命保険契約を名義変更すれば、元の契約者がそれまでに支払った保険料は新しい契約者が贈与を受けたことになります。

混乱を避けるため使う言葉を定義しておきます。下記のイコールでつなぐ言葉はほぼ同じ意味で使用します。

契約者=保険料負担者
名義変更=契約者変更

年間110万円以上贈与すれば、贈与税がかかります。例えば親が契約者で、子を被保険者にして一時払いで1,000万の終身保険を契約し半年後に契約者を子変更すれば、まぎれもなく子への1,000万の贈与になります。この場合、もちろん契約者の親も被保険者の子もお元気で相続は発生していない場合です。

ここで名義変更とは生命保険の契約者変更のことを意味します。また今回のテーマである保険会社から税務署への通知は「支払調書」と言います。

生命保険の名義変更をした場合、保険会社から税務署に通知はいかないのでしょうか。それまでの抜け穴だらけの支払調書は平成30年に改正され、名義変更によるみなし相続財産の見落としを防ぐ目的で細かく規定され、保険会社はその通達に従う義務があります。

しかしそれでも実務的に事例を見ていくと抜け穴があったりします。いかにも怪しい話ですが、保険営業をされていれば、よく出くわすケースです。資産税担当で相続税の税務調査をしていたOB税理士に確認して裏を取った話です。お役に立つかどうかではなく、こういうこともあるということで気楽にお読みください。

◆ 支払調書の改正による生命保険の名義変更。

支払調書の取り扱いに関しては以下の記事に詳細に分析しています。どういう条件でどのような内容の支払調書が税務署に行くのか詳しく書いています。それにより生命保険の名義変更はすべて贈与として税務署に捕捉され課税対象となるのでしょうか。

■生命保険の支払調書が危ない理由。

課税当局の考え方ですが、生命保険は名義変更しただけでは贈与とはなりません。よって贈与税の時効は名義変更しただけでは始まりません。保険金を受け取ったり、解約返戻金を受け取ったりしたときに名義変更していれば贈与となります。早い話、保険がお金に変わるとき贈与が開始します。100万ずつ減額解約すれば支払調書が税務署に行かないという話法は通用しません。最後に解約したときにそれまでの保険料負担者、解約返戻金などの総額が支払通通知書により税務署に知られることになります。

■保険の支払調書で隠れ贈与がバレバレに!

今回の支払調書の記載事項の変更は、相続時の契約者変更を捕捉しみなし相続財産として生命保険の権利に対する課税モレをなくすことが目的です。例えば契約者が親、被保険者が子という場合です。親が保険料を払って子に保険をかけるというパターンですが、親の死亡により相続が開始しますが、子は生きていますから生命保険金は支払われません。しかし親が保険料を負担した生命保険契約ですから、子が契約を引き継ぐにしてもその権利は相続財産として課税されなくてはなりません。こういう場合に支払調書が発行され保険料の負担者と名義変更の回数が税務署に通知されます。

◆ 名義変更に網をかけたつもりが抜け穴。

ところがです、この支払調書の通知義務は契約者死亡による名義変更となっています。契約者死亡が条件になっているのです。

何が抜けているかと言えば、相続が発生する前に名義変更を行えば支払調書は発行されないことになります。ホントにそう書いてあります。課税当局は生命保険の名義変更に網をかけたつもりでも、結構大きな穴があります。通常、保険会社との契約では契約者変更(名義変更)は簡単にできます。でも名義変更だけでは支払調書は税務署に行かないはご承知の通りです。とすれば、名義変更後にしばらくして元契約者である親が死んだとしても保険会社は知る由もありません。現在の契約者と被保険者が存命であれば保険会社にとって支払調書を発行する理由がありません。もちろん税務署も支払調書が来なければ名義変更の事実を知ることはできません。

今後支払調書が発行されるとすれば、何十年も先の被保険者である子が死亡して生命保険金が支払われたときです。そのとき支払調書には確かに過去の保険料負担者と契約者変更の回数は記載されていますから、数十年前の相続時にみなし相続財産としての生命保険契約が課税対象として見落とされていたことが判明します。

でもその時に相続税を払うべき子は被保険者としてあの世です。それより、一度相続で見落とされたみなし相続財産は、時効が開始します。その場合相続税は5年(意図的な場合は6年)で時効となります。というふうに考えることができます。

◆ 資産税担当OB税理士が支払調書の抜け穴を確認。

こういう抜け穴解釈は一般的に都合のよい解釈となり、課税当局には通用しないとしたものですが、念のため資産税を担当していたOB税理士に確認してみました。資産税担当の調査官といえば、相続税調査に来る泣く子も黙る国税調査官です。当然、税務署での対応や考え方はよくわかっているわけです。

OB税理士によるとその抜け穴は気がついていなかったとのことです。支払調書が相続発生時の名義変更のときだけ発行されるとは考えていなかったようです。しかし、確認していただくと生前の名義変更は支払調書の対象外です。あくまでも生命保険契約がお金に変わるときか、あるいは契約者死亡による名義変更時にだけ支払調書が発行されるというルールは確認できました。

OB税理士によれば、保険会社が通知しなければ、生前に行われた名義変更は知ることができないそうです。

ただし、相続税の申告内容に疑念を持てば全保険会社に照会をかけることもあるそうですから、安全とばかりは言えないということもあります。

◆ 相続税がかからない方の名義変更には関心なし。

ただ、OB税理士に念押しで聞いたことですが、相続税がかからないレベルのサラリーマン庶民が保険契約の名義変更をしようが、それが贈与税の対象になっても特に関心はもたないそうです。相続という網で受けたときにかからない贈与にまで手間はかけていられないそうです。

しかしながら、養老保険などで満期保険金の受取人を契約者以外にしていると支払調書が発行されますから、贈与税の対象となます。支払調書から贈与とみなされると税務署としては放置しておけないのです。贈与ではありませんかと「お尋ね」がありそうです。

◆ 税務署の調査能力は甘くないのでやりすぎ注意。

支払調書の発行ルールの変更は、完全に網をかけられるわけではなさそうです。しかしそうかと言って、やりすぎはいけません。例えば相続発生前に巨額の一時払い終身保険を何本もかけて名義変更するような乱暴なやり方は捕捉されやすくなります。税務署の調査権限と能力は甘くないのです。銀行に照会をかければ、家族全員の過去10年分の銀行口座の動きを税務署は知ることができます。

OB税理士によれば、お金の動きが追えれば、たいていのことはわかるそうです。疑念をもたれないよう、やりすぎにはご注意いただきたいと思います。

◆ 支払調書の抜け穴、まとめ。

生命保険の名義変更に関して、気になっていたところをOB税理士に確認した結果をまとめました。支払調書の記載事項の変更は生前の名義変更を通知する義務までは定めていません。確かに出口課税ということで、生命保険契約が保険金や解約返戻金に変わるときに支払調書が発行されれば、それまでの保険料負担者は明白になります。

税務署の立場では名義変更しただけでは贈与とはならず、名前だけを借りた元の契約者の名義保険と考えるようですから、贈与でもないのに支払調書はいらないという理屈だと思います。

相続税がかからない程度のご家庭で、遺言書も書かれないようなケースでは、生命保険の受取人指定で財産分与を決めることがシンプルでもめないコツです。

生前の財産分けとして契約者は親、子を被保険者とした一時払い終身保険を契約し契約者を子に名義変更します。これを子それぞれに契約しておくとすっきりします。一時払い終身保険や年金保険は販売停止の保険会社が多くなりましたが、まだ取り扱っている保険会社もわずかながらあります。

老婆心ながらご注意申し上げると、子が新しい契約者として保険契約を解約すればキャッシュに変わり支払調書が発行されます。この場合、支払調書では保険料負担者と解約返戻金を受け取った人が違うことを明らかにします。さすがにこれは贈与ですから税務署は放置できません。よって解約するにしてもせめて相続が終わって6年後以降にしていただきたいところです。

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