N生命の逓増定期は起死回生か時限爆弾か!?

N生命の逓増定期は起死回生か時限爆弾か!?

追記2021/6/25:
国税庁により逓増定期保険の名義変更にかかる保険契約の権利評価の見直しが行われました。2021年6月25日、資産計上額で評価するという通達(所得税基本通達36-37)が発遣されました。さらには2019年7月8日までの契約に遡及し、逓増定期の名義変更スキームは完全に封じられました。

※過去の記事ですので、これまでの経緯として参考程度にお読みください。

2021/3/16追記、緊急速報!?信頼できる筋からの情報です。法人契約の定期保険を個人に名義変更した際の対価見直しを検討中とのこと。要するに逓増定期保険の名義変更でこれまで解約返戻金相当額で譲渡できたものが、資産計上額で評価となるともはや逓増定期保険の名義変更スキームは終わりです。ついに来たかという感じですが、時期的には2019年7月8日以降契締結した契約、2021年6月末の改正となりそうです。但し未確認情報ですので取り扱いにはご注意ください。

先日、銀行系の保険代理店がN生命の新商品ですと言って逓増定期保険の提案を持ってきました。N生命はこれまで普通の逓増定期はありましたが、この種の逓増定期保険を持っていませんでした。

解約返戻率の推移をみると驚くような仕掛けです。思わず代理店営業に「これはやりすぎではないか!」と言わずにおれませんでした。ざっくりと紹介しておきます。くわしいことは各自保険会社にお問合せ下さい。

■逓増定期保険の名義変更、ホワイトデーショックまとめ。

◆ 圧倒的な解約返戻率の落差、83%超。

逓増定期保険の名義変更に使う保険は、最高解約返戻率ができるだけ高く、直前の解約返戻率ができるだけ低いものが最もおいしくなります。N生命の逓増定期保険はその落差が圧倒的なのです。

解約返戻率の落差がなんと83%超もあるのです。最高解約返戻率の前年の解約返戻率は1%以下というきわものともいうべき保険です。バレンタインショックのほとぼりも冷めないうちによくこんな極端な保険を金融庁が認可したものです。

◆ 最高解約返戻率85%未満、4割損金が可能。

この保険の工夫は最高解約返戻率が85%を越えないところにあります。返戻率としてはよくないのですが、4割の保険料を損金処理することができます。損金としてはこれまでの1/2損金には劣りますが、実質返戻率を押し上げる効果があります。

単純返戻率が85%に届かなくても実質返戻率は98%に近くなります。令和元年の6月28日の通達以後は、新規契約で実質返戻率が100%を越えるものは一部を除いてほとんどなくなりましたので、これは仕方がないところです。

◆ 6年目に名義変更、解約、一時所得。

N生命の逓増定期保険が他社と異なるところは、名義変更後、6回目の保険料を支払って後に解約返戻金が一気に増加します。5回目ではなく6回目というところが時間がかかるイメージになります。名義変更して解約後、一時所得を手にするまで6年かかるというわけです。

事業承継で後継者などに資金移動する計画では、他社の保険もうまく組み合わせて雑損失が出る時期をコントロールする必要がありそうです。保険金をMAXで設計すると保険料が伸びないまでも5年分の保険積立が法人にありますから、そのほとんどが一次的な雑損失になります。

タイミングを間違えると赤字の上塗りになりますから、そういう場合は法人で解約返戻金を受け取り、帳尻を合わせるようなことも起こりえるかもしれません。

◆ 事務手数料[3%&Tax]を組み合わせて実質返戻率100%越え。

N生命は法人専門で昔から節税保険がお得意の会社です。がん保険を大量に契約されている中小企業もおありかと思います。N生命と多数の契約をされている場合、団体契約として事務手数料3%とその消費税が保険料から割り引かれていることもあると思います。

■法人保険の事務手数料は3%の値引きと同じ意外と大きい。

法人保険で解約返戻率を比較するときこの事務手数料割引3%はとても大きなことになります。何故なら解約返戻率が97%なら計算上は解約返戻率が100%を越えてしまうことになるからです。

実はN生命の逓増定期保険は団体契約に組み込めるそうですので、単純に考えれば解約返戻率に3%をオンして考えることができるわけです。4割損金メリットに加えること事務手数料3%で実質返戻率が101%を越えてしまうのでその間の保障を確保しつつ実質的な損失はないことになります。実質返戻率100%越えは価値が高いと言えると思います。

逓増定期の名義変更が安全な根拠をOB税理士に確認。

◆ 網がかかれば法人で解約、実質損失なしで保障確保。

今回のN生命の逓増定期保険が、バカ売れすると同じことの繰り返しになりそうです。金融庁が保険商品を認可して、契約者が税法に従って処理していても国税庁が待ったをかける例のパターンです。

名義変更がいけないとは言えないので、網をかけるとしたら名義変更時の評価額は累計支払保険料とされればもはや名義変更のスキームは実質的に消滅してしまいます。

そうなればその時のこと、網がかかればピーク時に法人で解約して解約返戻金を受け取れば何も起こりません。資金移動はできませんでしたが、保険料で支払ってきたキャッシュはもとの財布に戻るだけです。実質的な損失なしでその間の保障を確保したことになりますから、損は発生しないわけです。

◆ 法人保険専門のN生命の起死回生か通達への時限爆弾か。

N生命は中小法人対象に節税保険を広く販売してきましたから、一昨年の法人税基本通達の発遣は大きなダメージを受けているものと思います。関係する代理店の情報でも一時は9割減などという噂が飛び交っていました。実際実情はかなり厳しいと想定できます。

そのN生命が起死回生の切り札として開発した逓増定期保険ですから気合の入り方が違うように思います。若干保険料は伸びないのと、6年かかる長丁場が気になるところではありますが、逓増定期の名義変更というスキームには十分適用可能な保険だと思います。

ただ、解約返戻率の推移をみていると解約返戻率のグラフの曲線は、5年目から6年目まではほぼ直角に伸びています。さすがに目的が見え見えであり、やりすぎのような気がするのはhokenfpだけでしょうか。

この新商品、逓増定期保険はN生命にとって起死回生の砦でしょうが、保険営業の世界にとっては諸刃の剣かあるいはいつか爆発する時限爆弾の様相も呈していると思います。

◆ N生命の逓増定期保険まとめ。

弱点は保険料があまり伸びない点です。40歳の男女2名でMAX保障額が1,4000万、保険料で1,000万強になります。当然現行の税制に従いますから保険料の6割は資産計上となり、数年間は節税効果は見込めません。

ただ5年経過後に名義変更するときはたっぷりと雑損失が出ます。この雑損失をうまくいかせて節税につなげられるだけの利益が出る企業でないと使えません。

逓増定期保険の名義変更は、法人から個人、法人から法人、個人から個人へ利益を付け替えることが主目的ですが、名義変更時に法人に発生する雑損失を利用した節税プランが有効です。5年6年先の経営はどうなっているかわからないという企業は名義変更せず法人で解約すればよいだけです。

最悪のケースがあるとすれば、急な資金需要が発生し解約返戻率のピークが待てないという場合だけですね。その時は早期に解約すると救いがたい損失につながりますから、財務体質が安定的に強固な企業におすすめです。

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