逓増定期の名義変更、遡及パブコメで壊滅。
国税庁から4月28日に『「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)(保険契約等に関する権利の評価)に対する意見公募手続の実施について』というパブリックコメントが公開されました。
要するに逓増定期保険の名義変更による個人への資金の移動は許しませんよということになりました。
さらには令和元年の7月8日までの契約に遡及し、名義変更のスキームは完全に封じられました。
まだパブリックコメントの段階ではありますが、概ねこの方向で6月末ごろには通達が発遣されるものと思います。
◆ 今回のパブコメが意味するところ。
コロナ禍で税金が減収見込み、少しでも税金を増やすことが狙いだと考えられます。またそれだけではなく、保険を利用した節税スキームを徹底的に封じることで、これまでの保険業界と課税庁とのイタチごっこに終止符を打とうとしたものであるように思います。
保険商品の認可は金融庁ですが、金融庁が認可した保険商品に国税庁が網をかけるという構図が繰り返されてきました。まさに縦割り行政の弊害とでも言うべきものです。その行きつく先が今回のパブリックコメントと言うことになりました。
その結果、保険業界は超低金利の時代背景もあって取り扱う保険商品から金融商品としての意味を失うことになりました。本来の保障に特化した販売に移行せざるを得なくなります。羽振りのよかった保険代理店もベンツを売り払うよりなくなることでしょう。保険業界の構図が変わっていくことが目に見えるようです。
◆ 逓増定期保険も法人税基本通達9-3-5の2が適用。
バレンタインショックから最高解約返戻率によって損金算入割合が規定されましたが、逓増定期の名義変更に使うような保険は、4年~5年後の最高解約返戻率は85%超が普通になります。
ルールに従えば9割資産計上になりますので、損金算入割合はわずかに1割と節税効果はほとんどありません。
解約返戻率が低い時期に節税効果はありませんが、4回目か5回目の保険料を支払うと一気に解約返戻率がピークになります。ピークになる前年に解約返戻金相当で譲渡しますから、名義変更すると保険積立金と解約返戻金の差額が雑損失になります。法人で保険料の9割を積立てている保険積立金が、少ない解約返戻金では回収できませんから、その差額が法人の損失になるのですね。
でも利益の出ている法人であれば、節税しつつ法人の利益を個人に付け替えていることになります。
課税当局にすれば、名義変更時の雑損失による節税効果と役員報酬以外のルートで役員個人に臨時の一時所得が発生するという点が許せないところなのだと思います。本来役員賞与というべきものであり、法人に役員賞与の支給として課税されるべきであり、個人では一時所得ではなく通常の所得課税がなされるべきと考えるのは当然な面があります。
■「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(案)
(保険契約等に関する権利の評価)に対する意見公募手続の実施について
◆ 逓増定期の名義編変更、これでおしまいまとめ。
hokenfpの立場としては、記事のネタがどんどん削られていくような感じです。法人保険に特化した記事を書くためにはそれなりの保険商品が必要です。
しかし、最近の法人保険市場は停滞気味です。毎期の決算ごとに契約していた節税保険も今期は一件もありませんでした。目先の節税効果がない保険商品に魅力を感じないのです。
肉が食べたいのに魚をすすめられているようなミスマッチがあります。
これまで節税保険のメリットを享受していた経営者の頭を切り替えるような話法が必要です。決算期にこだわらずに保険本来のリスクを伝えながら顧客の懐にはいりこみチャンスを待つ感覚が必要ですね。
保険営業の基本に戻ると、接触回数をふやすこと、契約のチャンスはタイミングがあること、そのときその場にいないとチャンスは拾えないということがあります。魚がいないところに釣り糸を垂れていても食いついてはくれませんから、よくよく見極めて確率の高いところを攻略することです。
見込み客が増えて契約が順調に取れるようなときは、保険営業はまことにおもしろい仕事ですが、歯車がかみ合わなくなり締め切りに追われるようになると後手に回ってしまうことになり、苦しいばかりです。
ある意味では、逓増定期の名義変更だけが独り勝ちしている構図は崩れましたから、これで保険業界としては公平な土俵になったということかと思います。
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