生命保険の受取人変更でかかる税金をわかりやすく。

生命保険の受取人変更でかかる税金をわかりやすく。

一般に金融商品は、被保険者も受取人もなく契約者がすべての権利を持ち、判断します。しかし生命保険には契約者以外に受取人があり、それによって課税関係が変わります。安易に変更すると、納税額が増える場合がありますから、受取人指定は慎重な判断が必要です。

■生命保険の受取人変更手続きを具体的にわかりやすく。

◆ 相続税がかからなければ、受取人変更は贈与に注意。

相続税には基礎控除があり、死亡保険金控除という非課税枠があります。多くの相続では、相続税がかかることはありません。相続税がかからなければ、受取人変更にかかる課税関係で注意すべき点は、贈与にならないようにすることだけです。

・相続税の基礎控除(配偶者、子2人)

3,000万+600万×3人=4,800万

・死亡保険金控除

500万×3人=1,500万

・相続税の合計控除額6,300万

生命保険金の非課税枠が使えれば、6,300万まで相続税がかかりません。相続税の申告も不要です。

相続税がかからないのに、受取人指定を間違えて贈与税がかかるというのは、大損となりますのでご注意願います。

■令和4年分 相続税の申告事績の概要

相続税の申告数は、相続発生件数のどれくらいの割合なのでしょうか。国税庁の資料から見ると、相続税の基礎控除が下がる前(2014年)では、死亡者数のわずか4.4%、相続税の基礎控除が下がった2012年では、9.3%、2013年では少し増えて9.6%となっています。

このことからわかることは、9割以上の相続で相続税はかからないので、そもそも受取人指定で相続税がかかることを考える必要はあまりないということです。

実際上は、相続税の申告をすることで相続税を免れるケース(小規模宅地の評価減等)も多数あると思いますから、相続税の実質の納税者はさらに少ないと考えられます。

◆ 受取人変更は課税関係に注意が必要。

生命保険金を受取人が受け取ると税金の対象になります。契約者と被保険者との関係により受取人にかかる税金は相続税、所得税(一時所得)、贈与税の3パターンがあります。

・相続税パターン

契約者  被保険者   受取人

親            親本人           子または妻(相続人)

上記の場合、相続税がかかるのであれば、保険金は相続税の対象となります。保険金は受取人固有の財産とされていますが、相続税はかかります。しかし相続税がかからなければ、一番お得な形態です。

・一時所得パターン

契約者  被保険者   受取人

親            妻        親本人

この場合は、契約者本人が保険金を受け取りますから、一時所得となります。保険金全額が所得となるわけではなく、これまでに支払った保険料はマイナスできます。

払い込んだ保険料以上に受け取った部分に所得税がかかります。この場合、注意すべきことは受取人を子などに変更してはいけません。贈与になり贈与税の対象となります。

一時所得は50万円の基礎控除があり、それを引いた残りの半分に所得税がかかります。当然、翌年には所得税に対応した住民税がかかってきます。一時所得は実質、半分以上が非課税となりますから、とてもお得な税制です。

(死造保険金-払込保険料総額)-50万(基礎控除)/2=所得税の対象額

一時所得パターンで、契約者(親)が先に亡くなった場合、保険契約を妻に相続してください。相続税がかからなければ、二次相続で保険金が子に非課税で渡ります。

契約者  被保険者   受取人

妻            妻        子

◆ 受取人に贈与税、やってはいけない3者3様。

生命保険といえども、こっそり内緒で、宝くじのように課税関係無縁で大金は入らないのです。生命保険金が受取人に支払われると、保険会社から税務署に保険料負担者が誰か、保険金をいくら受け取ったかなど課税に必要な情報が記載された支払調書が提出されます。

・贈与税パターン

契約者  被保険者   受取人

親(夫)   妻              子(相続人)

この形態は3者3様と言います。契約者と被保険者、受取人がすべて異なります。被保険者(妻)死亡で受取人である子が保険金を受け取ると契約者である親(夫)からの贈与となり、贈与税の課税対象となります。

相続税がかからない庶民であっても、税務署から贈与税のお尋ねがくる可能性があります。

この贈与税がかかる3者3様は、受取人変更では避けていただく必要があります。ただし、契約者である親(夫)が先に亡くなり、保険契約を妻が相続すると以下のように相続税のパターンになり問題がなくなります。

契約者  被保険者   受取人

妻    妻          子(相続人)

下記は贈与税の計算式です。死亡保険金に、ほぼまるまる贈与税がかかります。受取人は保険料を負担していませんから、払込保険料を控除することもできません。

死亡保険金-110万(贈与税の基礎控除)=贈与税の課税対象

相続税がかからないのに贈与税とは、あんまりですので生命保険受取人変更ではとくにご注意ください。

■生命保険の受取人が先に死亡したら、相続がややこしくなる原因。

◆ 生命保険受取人変更にかかる税金、まとめ。

士業のサイトや保険関係のサイトでは、相続税がかかる方を前提に説明していますが、普通の庶民では相続税がかかることはあまりありません。

9割以上の相続で、相続税の申告は不要になっています。相続税がかからないのであれば、相続税パターンが断然有利です。

受取人変更で注意すべきは、3者3様の贈与税パターンです。親が子に保険をかけて受取人を孫にすれば、贈与税パターンです。夫が妻に保険をかけて受取人を子にすれば同じく贈与税パターンです。相続などで契約者変更があれば自然に解消しますが、それまではやはり贈与税のリスクがあります。

生命保険の受取人変更で課税関係が気になったら、見直していただくことがよろしいかと思います。

補足として、被保険者が生存中に病気になって受け取る入院給付金などの生存保険金は、上記の課税パターンとは関係なく、基本的に非課税です。また、相続などで生命保険契約の名義を変更しただけでは課税されません。保険が解約返戻金や保険金などのお金に代わるとき、課税関係が発生します。保険会社から税務署に支払調書が提出されるのも、保険契約がお金に変わったときです。

死亡保険金の非課税枠と受取人の絶対お得な組み合わせ。

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