生命保険の受取人変更12の実務ポイントをどこよりも詳説。

生命保険の受取人変更にかかる実務ポイントをどこよりも詳しく解説しました。

生命保険は死亡事故が発生すると生命保険受取人に保険金が支払われます。もちろん受取人が保険会社に請求することにより生命保険金の支払いが発生します。CIMG2233

簡単なことの様で、いろんな複雑な仕組み、税制などの問題がからみ保険金受取人の運命を左右します。

もちろん生命保険の受取人変更はそういう意味で重要になります。

知っておいて損はない生命保険の受取人変更の知識を12項目にまとめました。特に生命保険の受取人変更は慎重にかつ速やかに行うことが重要です。ご一読いただければ幸甚です。

生命保険の受取人の無自覚が大損を招く!?

 ① 生命保険には契約者、被保険者、そして生命保険金の受取人が必ずある。

生命保険には保険料を負担する契約者、保険の対象として体を提供する被保険者、そして生命保険金受取人の3者が必ず存在します。

契約者=被保険者はよくあるパターンです。親が自分を被保険者にして生命保険をかければ契約者でもあります。契約者=受取人はありますが、死亡保険金に関しては被保険者=受取人はあり得ません。

被保険者死亡事故のとき生命保険金を自分で受け取ることはできないからですね。ただし医療保険のように生命保険でも生存給付金の場合は被保険者=受取人となる場合があります。

契約者は生命保険契約を譲渡(名義変更)すれば変わることができます。被保険者はその契約に関して不変です。

ですが、生命保険の受取人は契約者の意思でいつでも変更自由です。受取人は簡単な変更手続きで指定されれば権利が発生しますが、すべては契約者の意思です。

生命保険受取人をテキトーに書く大間違い。

② 生命保険の受取人は契約者(保険料負担者)が記入。

前項でも述べましたが生命保険の受取人は契約者(保険料負担者)に変更を指定する権利があり、契約者が生命保険の受取人の氏名を記入することで成り立ちます。もちろん受取人を変更する権利も契約者にしかありません。

受取人が自署するようなことはないわけです。したがって生命保険の受取人の指定および変更は契約者の権利です。

ただ生命保険金受取人を変更する場合、契約者だけでなく被保険者の同意を必要としますから通常被保険者承認のサインが必要になります。体を提供する被保険者にすればモラルリスクがありますから受取人変更は知っておく必要があるのですね。

契約者にすれば自分が負担した保険料で誰かが得をするわけですから、その得をする人(生命保険金の受取人)を指定するのも変更するのも当然の権利です。

③ 生命保険の受取人は複数指定や割合指定も可能。

生命保険の受取人は一人と決まっているわけではありません。極端なことを言えば受取人は何人でも枠があれば構わないということになります。生命保険の受取人の記入枠がなければ申し出ることで何人でも指定可能です。もちろん変更も自由です。

但し生命保険の受取人ともなると変更するにも誰でもよいというわけではなく一般的には2親等以内の血族(配偶者・父母・子・祖父母・兄弟・孫)が受取人の条件になります。(配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹等は姻族であり血族ではありません。)

それは他人や血のつながりの薄い人に受取人を変更するとモラルリスクが発生しますので、ここの縛りには生命保険会社も慎重です。複数の受取人を指定した場合は、受取割合を指定する必要があります。

配分がわかればよいのでA男50%B子50%とかA男7割B子3割などと記載します。生命保険の受取人を変更する場合も同様です。

生命保険の受取人とその割合が指定されていると保険会社は厳密に本人確認をして生命保険金を支払います。

自筆証書の遺言書は握りつぶせても生命保険の受取人は確実に履行されますから安心です。

生命保険の受取人指定は遺言書より確実な理由。

④ 生命保険の受取人変更は費用がかからず何度でもできる。

生命保険の受取人変更は費用がかかりません。必要な都度、何度変更しても問題にはなりません。

遠慮する必要など全くないのですが生命保険の受取人変更には保険会社か代理店の営業が保全手続きとして介入してきます。

付き合いがあればまだ頼みやすいのですが、担当が変わっており疎遠になっている生命保険会社には変更手続きが頼みにくいという実態があります。

生命保険の保全(受取人変更)は営業職員の仕事ではありますが、普通成績にはなりません。CIMG2086

商売ですから縁ができたことを頼りに別の提案を持ってくると言うことがどうしても起こります。

不要ならはっきりと断わるか、生命保険会社のサポートのフリーダイヤルに電話して受取人変更の手続きするかです。

サポートのフリーダイヤルは電話での本人確認や保険証券が手元にないと話が進みませんが、新たな勧誘をすることはありません。

用紙を郵送してもらい変更内容を記入して返送するという手順を間違いなく自分で行う必要があります。生命保険の受取人変更も意外な手間が発生します。

生命保険金受取人が死亡後、受取人を変更しないと難儀になる理由。

⑤ 生命保険金は相続財産とは別の受取人の固有の財産。

これは大きな特色でありメリットなのですが生命保険金は受取人固有の財産という考え方が定着しています。すなわち遺産分割の対象にならないのです。

生命保険の受取人変更はそういう意味で相続にからんで重要な判断になります。

生命保険金として相続財産を受取人の立場でもらうと、不思議なことに受取人個人のものになってしまうのです。判例がそうなっているから仕方がないのですが、受取人に指定されていない他の相続人にしてみれば不公平極まりない話です。

結果として生命保険の受取人指定は遺言と同じ効力があることになってしまうのです。

この仕組みを活用して生命保険を代償分割に活用できるということがあります。よって生命保険の受取人変更は同様の権利ですから安易な手続きの割に重要なことになります。

◆代償分割と生命保険で相続のもめごとはクリアできる。

しかしながらです。高額な生命保険金の場合、受取人固有の財産と言いながら裁判で争うと生命保険金は特別受益と判断される場合があります。

どういう基準で高額と判断するかはケースバイケースですが30億資産がある場合1億や2億は特別受益とは言えないですが、1億の資産で6000万の保険金なら「到底是認することができないほどに著しい」不公平になるようです。

金額だけでもないので一概には言えないところです。相続財産の他に受取人として生命保険金を受け取るわけですから他の相続人にすれば何とも納得しがたい話です。

相続の場面では、単に生命保険の受取人を変更したからといってそれで何もかもがスムーズにいくとも限らないわけです。

保険の受取人は妻から子へ変更が一番お得。

⑥ 生命保険金は受取人固有の権利であるが相続税の対象。

ところがです。当たり前と言えば当たり前なのですか受取人固有の財産と言いながら生命保険金は相続税の対象になります。受取人を変更してもみなし相続財産として課税対象となります。

生命保険の受取保険金はみなし相続財産として相続税が課税されるのです。

固有財産ということで喜んだのもつかの間、税法的には逃れるすべはなかったということです。もちろんくどい様ですが生命保険の受取人を変更すれば新しい受取人に納税義務が移行します。

もちろん受取人変更を内緒にするような裏ワザは残念ながらありません。そこまで甘くはないわけです。

ただし一週間ほどでキャッシュになりますから生命保険の受取人にすれば、相続税の納税資金としては何より確実です。

⑦ 生命保険の受取人は遺言書で指定すれば優先的に変更できる。

これは私も知りませんでしたが、保険会社各社「遺言による受取人の変更ができるようになりました。」とあります。これは結構なことのようですが、そんなに変更することがうまくいくのかどうか、気になるところです。よく読むと但し書きに

「遺言で新しい受取人をご指定いただいても、相続人の方などから当社へご連絡をいただかなければ、当社は新しい受取人を知ることができないため、そのご連絡の前に従来の受取人からの請求があれば、従来の受取人に保険金をお支払いします。お支払い後、遺言による受取人変更のお申し出をいただいても、遺言で指定された方に改めてお支払いすることはできません。」とあります。

そりゃそうですが知らなければ生命保険金は早い者勝ちになりませんか、とはいらざる心配でしょうか。

とにかく間違いをなくすためには公正証書遺言にすることです。というより、生命保険金の受取人を変更しておく方が費用がかからずに、かつはるかに確実です。

生命保険の契約者変更と受取人変更 | 課税関係を解明。

⑧ 相続放棄をしていても生命保険金は受け取れる。

ここがすごいと思うのは私だけではないと思います。親の借金が大きくて相続財産を借金が上回るような場合、相続放棄をしたくなります。

ところが生命保険金は受取人固有の財産であると申し上げた理屈がここでも通用します。親の借金を背負うくらいなら受取人を変更して他の相続人に譲りたいところですが、生命保険はうまくできています。

相続放棄をしていても生命保険金は受け取れるのです。それも堂々と

「生命保険はその人が死んだ瞬間に、他人にお金を渡す契約が発生するもので あるから、相続財産には含まれない。」何とも杓子定規な理屈ですがこれが判例として定着しています。よって受取人変更は重大な意味があると言うことです。」

債権者にとれば全くふざけた話です。少しでも誠意があるなら解約して解約返戻金を返済に充てろと言いたくなります。

◆親の借金は相続放棄しても受け取れる保険金の有り難さ。

⑨ 生命保険の受取人は2親等以内の血族なら孫にも指定できるが代襲相続となる。

生命保険金の受取人は配偶者の他、祖父母、父母、兄弟姉妹、子、孫などの2親等の血族の範囲で指定することができます。いつでも変更可能ですからハロー効果バリバリに直近で世話になった親族に変更することも可能です。

この内、祖父母や兄弟姉妹、お孫さんは相続人ではないので生命保険金の受取人に指定すると微妙な問題が発生します。生命保険の受取人変更も慎重にと申し上げておきます。

生命保険の受取保険金は相続税の対象になりますが生命保険金の非課税枠の500万(一人あたり)の枠は相続人以外には使えませんからお間違いなきよう、ともう一つ、

お孫さんが受取人になると相続税としては一代飛ばしの代襲相続となりますから、お得はお得ですがその人にかかる相続税額は2割増となります

⑩ 生命保険の受取人変更は「忘れるリスク」と「それどころではないリスク」がある。

生命保険の受取人は変更する予定でとりあえず指定すると、ほとんどの場合そのままになります。よくよく事情がないと受取人変更ということまで知恵が回らないのです。

家庭の事情が変わると生命保険の受取人を変更したくなることがあります。ずいぶん昔の契約だと今は担当窓口さえわからないし、受取人変更を申し出るだけでもはばかられる気持になるのも無理からぬことです。

生命保険の受取人変更の手続きをお願いしたら新たな生命保険を提案されたというようなことも起こりますから面倒なことは避けたい気持ちもわかります。

さりとてサポートに自ら電話して手続きするのも面倒なものです。簡単な事務手続きと思いきやどこに何を書けばよいのかさえわからないこともあります。CIMG2088

そんなこんなで受取人変更を億劫さにかまけてためらっているうちに忘れてしまうのです。

ときどき生命保険の受取人変更のことを思い出しながら先送りしていると今度は体力気力が低下して、特に病を得るとそれどころではなくなります。

相続のゴールに近づくということは「忘れるリスク」「それどころではないリスク」がどんどん高まるということですから、わかりやすくまとめると生命保険の受取人変更は元気なうちに早めがベストです。

生命保険の受取人の無自覚が大損を招く!?

⑪ 事業承継にからむ生命保険の受取人変更や再検討は元気なうちによく考えて。

一定の資産があり事業承継が絡むときは生命保険の受取人変更は重要になります。特に後継者に資金を集中したい思いと事業承継を考えると、経営者は遺言と保険設計でも受取人指定に重きを置きます。

予定していた後継者が適任でなくなったりすると生命保険の保険金の受取人変更は速やかに行わなくてはなりません。

長男に継がせるつもりが嫁に引っ張られて長男はサラリーマンを続けることになり長女を後継者に指名しなおすような事例も見てきましたが、事業承継としては混乱の極みです。当然受取人も変更せざるを得ません。

経営者の生命保険管理は事業承継が絡みますから特に元気なうちにしっかり見直さないといけません。安易に先延ばしして経営者に万が一のことでもあれば、後に残る家族だけでなくステークホルダーに多大の迷惑を及ぼすことを考えなくてはいけません。

経営者にとって生命保険の受取人変更はよくよく考えて元気なうちに見直すことです。

⑫ 生命保険の受取人にかかる税金をケースバイケースで説明すると。

最後の項目ですが生命保険の受取人変更との関係もあるので受取保険金の税金について説明します。国税庁のサイトに下記の表があります。

No.1750 死亡保険金を受け取ったとき
被保険者 保険料の負担者 保険金受取人 税金の種類
 A       B       B      所得税
 A       A       B      相続税 
③ A       B       C      贈与税

保険料の負担者とは契約者のことです。一番上の所得税のパターンは契約者が家族の誰かに生命保険をかけて自分で生命保険金を受取った場合です。自分で払って自分で受取ってますからその差額は一時所得(所得課税額=一時所得-50万/ 2)で税金としては一番お得になります。

二番目の相続税のパターンでは、一番多いケースですが親が自分を被保険者兼契約者として子を生命保険の受取人にするケースです。当然生命保険金は相続財産に合算され相続税が課税されます。(ただし受取人固有の財産ですね。)

三番目の贈与税のパターンは被保険者・保険料の負担者(契約者)・保険金の受取人がそれぞれ異なります。業界用語でいうと三者三様という保険契約の形態です。

父親が契約者で母親が被保険者で子が受取人のようなケースです。母親死亡時の生命保険金はもともとは契約者である父親のものです。それゆえ母親の死亡保険金は生存している父親から子への贈与と見なされ贈与税の対象となります。CIMG2097

一番お得なのは特別控除額の50万を引いた残りの半分に所得税が課税される所得税(一時所得)です。(相続税がかからないなら相続税の②がお得です。)

生命保険の受取人変更で気を付けて頂きたいのは一番損になるのが三者三様の贈与税のケースです。

生命保険金の受取人変更は税金の種類に注意して指定してください。

老婆心ながら死亡保険金を一時金で受領した①の所得税の場合は一時所得になりますが、年金形式で受領した場合には雑所得の扱いになります。生命保険金は一時所得で受け取っておき計画的にお使いください。

あれこれ書きましたが、生命保険の受取人変更は簡単な手続きですが、奥が深く抜けがあるやもしれません。ご指摘いただければ加筆・追記して参ります。

分かったつもりでも自分の場合はどうなるのか、どうすればよいのかわからないことも往々にしてあります。そういう場合は是非とも専門家にご相談されることが解決への近道であることは申し添えます。

編集後記と言うか愚痴になりますが、生命保険の受取人変更についてどこよりも詳しく書いたつもりですが「生命保険 受取人変更」で検索しても上位どころかいつも圏外です。キーワードも生命保険と受取人変更はどこよりも多く織り込んでいます。故に生命保険受取人変更というキーワードがくどいように頻出します。読みづらいときはお詫び申し上げます。

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