生命保険の受取人変更手続きを具体的にわかりやすく。
生命保険は死亡事故が発生すると、生命保険受取人に保険金が支払われます。契約で指定された受取人が、保険会社に請求することにより、生命保険金の支払いが発生します。
生命保険の受取人は、契約時に契約者が申込書に指定します。しかし年月が経てば、家族構成や親子関係の事情も変わります。それに伴い、生命保険の受取人を変更する必要が出てきます。
保険金の受取を誰にするか、どういう割合にするかは、相続の財産分与に関係するとても重要なことです。生命保険受取人にとれば、思いがけない大金を手にすることになりますから、その人の生活や人生にまで影響があります。
生命保険金は受取人固有の財産ですが、もめごとの原因になることもありますからよく考えて変更しましょう。
何から始めてよいかわからないという方のために、受取人変更の手続きを具体的にわかりやすくまとめました。
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◆ 受取人がどうなっているか確認したい、何を見ればよいかわからない。
だれでも人生の節目があり、家族構成が変わる時期があります。結婚したり子供ができたりすると、生命保険を見直す必要がでてきます。
独身のときは、生命保険の受取人を自分の親にしていると思います。しかし家族構成が変われば、配偶者に変更することを考えなくてはなりません。
結婚したら、受取人=親→配偶者へ変更する必要があります。
また契約している生命保険の受取人を誰にしたか、だいぶ以前のことなので、なんとなく覚えていても自信がもてないということがあります。
ところが保険証券はどこかに仕舞い込んで探し出すのも大変です。契約内容のお知らせは、よく見ないで捨てているというのがよくあるパターンです。
生命保険の受取人を変更しようと思っても、どこに問い合わせればよいか、問い合わせ先がわからないということもあると思います。契約したときの保険営業は、名前も忘れてしまっていて、何を見ればよいかわからないとなると困ります。
◆ 保険証券が見つからなければ、契約内容のお知らせ。
そういうときでも、最低限の情報が書いてある保険証券か、契約内容のお知らせを探し出すことが必要です。それが見つかれば契約内容や受取人の氏名、証券番号、カスタマーセンターなどの問い合わせ先がわかりスムーズに確認できます。
サポートに電話する場合は、まず最初に証券番号を聞かれます。保険証券が見当たらない場合は、電話での本人確認のため、氏名、生年月日、住所や電話番号を聞かれます。
担当営業が定期的に訪問していれば、連絡して契約内容を確認したり、受取人変更などを依頼したりすることができます。
それが面倒な場合は、保険会社の支社や支部の窓口に問い合わせすることもできます。
保険証券がない保険会社もありますが、保険証券が見つからなければ再発行をお願いしましょう。再発行で費用がかかるようなことはありません。
◆ 受取人を変更したいが、どうすればよいかわからない。
結婚したので生命保険の受取人を妻に変更したいが、どうすればよいかわからないとうときの問い合わせ先や手順を整理しました。生命保険の受取人変更は、費用がかかりません。必要な都度、何度変更しても問題にはなりません。
1)まずは担当営業に連絡。
生命保険の受取人変更には、保険会社か代理店の営業が保全手続きとして介入してきます。付き合いがあればまだ頼みやすいのですが、担当が変わっており、疎遠になっている生命保険会社や代理店の営業には、頼みにくいという事情があるかもしれません。
保険営業も商売ですから、縁ができたことを頼りに別の提案を持ってくると言うことがどうしても起こります。
2)マイページで変更、カスタマーセンターに連絡。
保険会社によって受取人変更は、保険会社のホームページからログインできるマイページなどから変更できるところも多数あります。この場合、ログインIDとパスワードが必要ですが、わかるように保存している方は少ないと思います。
ただ受取人変更は、被保険者の同意が必要ですから、契約者が被保険者(契約者・本人=被保険者・本人)でない場合は、オンラインで完結することは難しいので、カスタマーセンターに連絡して書類を取り寄せることになりそうです。
マイページにログインする方法やサポートに連絡して受取人変更を行えば、保険営業が関与することはありません。自分の段取りと都合でできますから、その点は気が楽かもしれません。どの方法でも一切費用がかかることはありません。
3)カスタマーサポートに電話する方法。
手軽な方法として、生命保険会社のカスタマーサポートのフリーダイヤルに電話して受取人変更の手続きすることが可能です。
サポートのフリーダイヤルは、契約内容のお知らせや、契約している保険会社のホームページに掲載されています。
電話での本人確認や保険証券が手元に必要ですが、新たな勧誘をすることはありません。サポートは、コールセンターやカスタマーサポートなどと言い方も様々ですが、お問い合わせ用のフリーダイヤルが書いてあります。
サポートに電話すると、オペレーターにつながるまでに何度も選択ボタンを押すようになっています。電話がつながったら手続き関係の用紙を郵送してもらい、変更内容を記入した変更請求書や本人確認書類などを返送するという手順を間違いなく自分で行えば完了します。
4)受取人変更に必要な情報と書類を確認。
生命保険の受取人変更も意外な手間が発生しますが、それほど難しいことはありません。
かんぽ生命などでは、保険証書、印鑑、保険契約の本人確認書類、会社所定の通知書、名義変更請求書などの提出を求めてきます。
保険会社により、少しずつ手続きや必要書類が違うことがあります。事前に契約している保険会社のホームページで、受取人変更にはどういう情報や書類が必要か確認されるとよいかもしれません。
◆ 生命保険の受取人変更をする場合の、基礎知識。
1)生命保険には契約者、被保険者、そして生命保険金の受取人が必ずある。
生命保険には保険料を負担する契約者、保険の対象として体を提供する被保険者、そして生命保険金受取人の3者が必ず存在します。
契約者=被保険者はよくあるパターンです。親が自分を被保険者にして生命保険をかければ契約者でもあります。
契約者=受取人はありますが、死亡保険金に関しては被保険者=受取人はあり得ません。被保険者死亡事故のとき生命保険金を自分で受け取ることはできないからですね。
ただし医療保険のように生命保険でも給付金の場合は被保険者=受取人となる場合があります。
契約者は生命保険契約を譲渡(名義変更)すれば変わることができます。しかし被保険者はその契約に関して不変です。
とろころが、生命保険の受取人は契約者の意思でいつでも変更自由です。簡単な変更手続きで指定されれば、受取人に保険金を受け取る権利が発生します。
生命保険の受取人指定は、契約者の意思で決まります。受取人に了解を取る必要もないので、自分が受取人であるという自覚がないこともよくあります。
2)生命保険の受取人は契約者(保険料負担者)が記入。
生命保険の受取人は契約者が、生命保険の受取人の氏名を記入することで成り立ちます。もちろん受取人を変更する権利も契約者にしかありません。保険料を負担した契約者が、誰に保険金を残したいかで受取人は決まります。
受取人が自ら指定するようなことはないわけです。したがって生命保険の受取人の指定および変更は契約者だけの権利です。
生命保険の受取人が保険金を請求するときは、本人確認は必須になります。しかし契約者が保険金受取人を変更する場合、保険金受取人の本人確認書類の提出は不要です。
ただ生命保険金受取人を変更する場合、被保険者の同意を必要とします。通常は被保険者承認のサインが必要になります。体を提供する被保険者にすれば、モラルリスクがありますから受取人変更は知っておく必要があるのですね。
契約者にすれば、自分が負担した保険料で誰かが得をするわけですから、その得をする人(生命保険金の受取人)を最適な人に指定するのは当然の権利というわけです。
3)生命保険の受取人は複数指定や割合指定も可能。
生命保険の受取人は、一人と決まっているわけではありません。極端なことを言えば受取人は何人でも枠があれば構わないということになります。生命保険の受取人の記入枠がなければ、申し出ることで何人でも指定可能です。もちろん変更も自由です。
複数の受取人を指定した場合は、受取割合を指定する必要があります。配分がわかればよいのでA男50%B子50%とかA男7割B子3割などと記載します。生命保険の受取人を変更する場合も同様です。
割合指定をした場合、保険会社によっては代表者に保険金が支払われることがあります。また生命保険の受取人は、自分が受取人であることを自覚していないと、後でトラブルになることもあり得ます。
4)生命保険受取人指定の制限に注意。
生命保険の受取人とは、誰でもよいというわけではなく一般的には2親等以内の血族(配偶者・子・父母・祖父母・兄弟・孫)が受取人の条件になります。(配偶者の父母・祖父母・兄弟姉妹等は姻族であり血族ではありません。)
2親等以内の親族がいない場合は、3親等以内の血族(伯父・叔父・伯母・叔母・甥・姪)ということも保険会社が認めれば可能です。
それは他人や血のつながりの薄い人に受取人を変更すると、モラルリスクが発生しますので、ここの縛りには生命保険会社も慎重です。
例外として戸籍上の配偶者でない場合も、条件がそろえば受取指定を認める保険会社もあるようですが、ハードルは高いと思います。指定できたとしても、内縁の妻のように戸籍上の第三者扱いの場合は、非課税枠がなく、相続税が2割加算となります。
受取人に年齢制限はありませんし同意も不要ですので、赤ちゃんでもOKです。ただし未成年が保険金を受け取る場合は、親権者が必要です。
4)受取人変更は課税関係に注意が必要。
課税関係は、ボリュームがあり長くなりますので、わかりやすくするため別のページにまとめました。3者3様の贈与税パターンに注意です。
下記のリンクをクリックしてご確認ください。
5)受取人指定は、確実な相続対策。
生命保険の受取人を指定しておけば、保険金は受取人固有の財産となります。生命保険の受取人で、相続でのもめごとをある程度防ぐことができます。
遺言書でも受取人変更ができるようになりましたが、それより受取人変更手続きの方が確実です。生命保険の受取人指定機能は、争族を未然に防ぐことができると言えそうです。
遺言書で受取人変更を指示しても、変更前の受取人が先に保険金請求をすれば保険会社は支払ってしまいます。もめごとの原因を一つでも減らすためには、やはり手続きを踏んで、受取人変更を行うことが大事です。
■生命保険の受取人が先に死亡したら、相続がややこしくなる原因。
◆ 生命保険の受取人変更手続き、まとめ。
オンラインで手続きが完了する保険会社が、大多数になり便利になりました。受取人変更の手続きを、ケースごとに具体的にお伝えしましたが、保険会社によって対応が異なることがあります。その点はご了承ください。
保険契約者は死亡保険金等の支払事由が発生するまでは、いつでも保険金受取人を変更可能です。
生命保険の受取人とその割合が指定されていると、保険会社は厳密に本人確認をして生命保険金を支払います。ただ生命保険の受取人は、契約者に指定される立場ですので、権利の大きさの割には、受取人という自覚があまりないことがありあます。
それでも受取人には、保険金を受け取るという大きな特権があります。それだけに、契約者の意思に基づき、保険金を渡すべき人に受取人変更をすることが大切です。
(本記事は2024年1月1日時点の情報に基づいています。税務の取扱等が変わる場合がありますので、記事の内容等は将来にわたって保証されるものではありません。個別の税務の取扱等については所轄の税務署等にご確認ください。本記事は、一般的と考えられる内容です。各保険会社の対応については、各保険会社へお問合せください。)
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