特別受益の持ち戻しが争族の火種になると大炎上。

相続では特別受益を言い出すと、遺産分割協議は泥沼にはまります。どうすれば特別受益の泥沼相続から抜け出せるのでしょうか。
相続税がかからない庶民でも、遺産分割協議では特別受益が問題になることがあります。相続が発生すれば、被相続人である親はそのとき亡くなっていますから、抑えが利かなくなります。
もめだすと、相続人同士があれもこれも言いたい放題になりそうです。まさに特別受益とは争族の火種と言えそうです。
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◆ 特別受益とは何か?

簡単に言えば、特別受益とは生前に親から受けた扶養の範囲を超える利益です。遺産分割協議で生前に贈与されたものを、他の相続人から特別受益と主張されると厄介なことになります。
なんでもかんでも特別受益と言うわけではありません。ひねくった言い方ですが「生計の資本」であれば特別受益となります。各家庭の資産レベルに違いがありますから、それが扶養の範囲なのか生計の資本なのかは簡単に決められません。
特別受益は、遺産分割の話であり、相続税には関係がありません。相続税の課税対象ではありませんので、特別受益を考慮する必要はありません。
ただ、特別受益には、やっかいなことに時効ということがありません。いくらでも昔の話を持ち出すことができます。考えれば考えるほど、特別受益はあれもこれも浮かんできます。
自分では特別受益とは思いもしなかったことを、特別受益と言われると温厚な相続人も黙っていられなくなります。なにしろ特別受益となれば、その分相続財産の取り分が減るわけですから、熱くなり炎上することもあり得るわけです。
◆ 民法の特別受益の規定。

なぜ個人の相続問題に民法の規定が割り込むのか、庶民にはわかりにくいところです。遺産分割などは、本来家族内で話し合えばそれでよいことです。しかし、それでは簡単にまとまる話ではないので、民法と言う客観的な基準を設けたものと思います。
相続人が納得していれば、民法の規定など無視すればよいのですが、もめるから基準が必要になったと言うことかと思います。
知らなければそれで済んでしまうかもしれませんが、民法には903条に特別受益の規定があります。相続の公平を旨としているようですが、もめるネタを提供しているような気さえします。
民法903条(特別受益者)
1.共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2.遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3.被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4.婚姻期間が二十年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
ただ、「3.被相続人が前2項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。」とあるように、被相続人が特別受益の持ち戻しを免除すると言えば、すべて治まるようにできています。
◆ 特別受益の範囲。

特別受益とは、一般では聞き慣れない言葉です。「トクベツジュエキ?何それ、お肌にいいの?」日常では意味が通じません。言ってみれば生前贈与ですが、それが扶養の範囲なのか遺産の前渡しなのかは、相続人の立場の違いにより難しい判断になります。
親にすれば子はすべて平等に育てたつもりでも、兄弟姉妹で差がつくのが普通です。昔は嫁にやる娘には花嫁道具一式にお金をかけて、相続のときは放棄するという暗黙の合意がありました。しかし言ってみれば、これも特別受益です。
マンションのローンの頭金を出してもらっても、同じく特別受益です。今どき大学までの学資は扶養の範囲ですが、他の兄弟が高卒で就職していれば、その差は特別受益と見なされるかもしれません。相続税に関係なく、相続には特別受益問題がねっとりとからみついてきます。
民法上、特別受益の対象となるのは以下の3つですが立場上4.項目目を追加しました。
1.遺贈
2.結婚または養子縁組のための贈与
3.生計の資本として受けた贈与
4.自社株贈与
実は5番目に生命保険金を入れるかどうか迷うところです。生命保険契約による保険金の受取人は、相続財産とは一線を画し、受取人の固有財産とされています。遺産相続協議にかかわらず、保険金を受け取る権利があります。しかし特別受益と言えないことはないのです。
やはり安全なのは、受け取り生命保険金の持ち戻しの免除を明記することです。
被相続人が、特別受益の持ち戻し免除の意思表示をせずに亡くなると大変です。特別受益の対象となる遺贈または贈与を受けた相続人は、原則として特別受益の持ち戻しを求められる可能性があります。
被相続人にすれば、生前に計画的に争いが起きないよう公平な生前贈与を行ってきたにもかかわらず、持ち戻しの免除の意思表示を忘れると、すべてご破算になってしまうというリスクがあります。
こうなると争いの種をまき散らしたようなもので、収まりのつかない相続人同士による特別受益の泥沼争族に突入するかもしれないのです。
■相続で遺留分の放棄をさせることはできるか、その意味と手続き。
◆ 特別受益の持ち戻し免除の意思表示。

生前に苦慮を重ねて、相続税の節税と財産分与に知恵をしぼってきた方にとれば、特別受益であっさりひっくり返されたのでは死にきれません。
相続ではこれまでの財産を築いた親の思いと意思が、反映されることが本来の姿です。死にきれませんとは申し上げました、そのときには被相続人はこの世の相続に意見することはできません。
それゆえ、遺言書で特別受益の持ち戻しを免除する意思表示を書き加えてください。わかりやすく言えば、遺言者が生前贈与などを遺産に加えないことを指示するということです。
最後に抜かることなく遺言書に一言
「遺言者は、これまで長男○○○○、にした生前贈与による特別受益持ち戻しについては、これをすべて免除する。」
と書き足せば、特別受益の持ち戻しは免除したことになります。
老婆心までに申し上げておきますが、遺留分に配慮し、相続人にはよくよく言い含めておくことが大切です。
ただし、注意すべきことがあります。特別受益の持ち戻しの免除の意思表示は、遺言書や遺産分割協議では有効ですが、遺留分の計算上は無効となります。
◆ 特別受益の泥沼争族、まとめ。

資産税専門の税理士や相続案件の多い税理士にとり円満相続を目指すことは、業務上のメリットがあります。相続人が権利の主張ばかりになると、まとまる話がまとまらなくなります。
相続税がかからなければ、身内だけで遺産分割を協議しなければなりません。第三者が仲裁に入らないと話し合いはさらに欲得されけだした言い合いに発展します。悲しいのは、すでに旅立った被相続人である親と言うことになります。
繰り返しになりますが、遺言書は被相続人の生前の意思です。そうなると唯一の武器が特別受益の持ち戻しの免除を明記した遺言書になります。
経営者に限らず、被相続人の多くは、うちではそのようなことは起こらない。ちゃんと言い聞かせてあるとおっしゃいます。そうはいかない人間の性(さが)が誰にも潜んでいるからこれだけ争族が多いのです。
我が子といえどもこの件に関しては信用してはいけないということです。円満な相続を考えるなら、ここを外されないようお願いしておきます。

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