あの世ではできない相続準備、生前にやることリストをくわしく。
被相続人が相続発生前、すなわち生前にやるべきことは遺言書の作成以外にいろいろあります。相続では、この世を去り行く被相続人が我がこととして準備することが大事です。相続の準備という点では、予定相続人である配偶者や子供たちが、困ることがないように配慮することはとても重要です。
やるべきことを箇条書きにしました。それぞれ詳しく説明します。
・財産目録の作成
・不動産の測量と地籍の確定
・生命保険の受取人変更
・被相続人の出生から今日までの戸籍集め
・遺言書作成
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◆ 財産目録の作成。
相続では、整理された財産目録があれば遺言書の作成も簡単になります。それだけではなく、遺産分割協議や相続登記でも財産目録は相続人の手間を大きく減らすことができ感謝されます。
突然相続が発生して、一番困ることは相続財産の把握です。不動産やデジタル遺産があれば、尚のこと情報を見つけ出し整理する手間は半端ではありません。
また相続人は、親の遺産がどれだけあるか知らされていないことも多く、遺品の中から必要な情報を見つけて、ひとつずつ問合せを入れながら遺産の詳細を確定していかなくてはなりません。
貸金庫でもあれば、見逃してしまうリスクもあります。あとから見つかるとややこしいことになり、相続手続きのやり直しが必要になるかもしれません。
・財産構成に最も詳しいのは被相続人。
ところが、被相続人にとれば自分がこれまでに築いてきた財産ですから、どこに何があるかほぼつかんでいると思います。手元の資料がどこに保管されているかもわかります。
当然のことですが、財産の持ち主である被相続人が財産目録を作成するのが、最も手間がかからず抜けやモレが少なくなります。
株式などの証券関係、生命保険契約、取引銀行の通帳や不動産の固定資産税納税通知書などの保管場所も被相続人であれば、最初から手の内にあります。
財産目録を正しくもれなく一つにまとめることは、持ち主の被相続人でも時間と手間がかかります。もれなく整理したつもりでも必ず抜けているものがあとから見つかるものです。
さらに財産目録は、正確にその物件が特定できなくてはなりませんから、情報の取り直しなどの手間も覚悟しておく必要があります。それなりに手間のかかる財産目録です。しかしこれだけは生前に整理してエクセルにまとめておくと、相続の手続きが圧倒的にスムーズに進むものと思います。
とくにデジタル遺品の整理は、困りものです。パスワードなどを一覧にして、プリントアウトして保存するようにしてください。そして保存場所を家族と共有しておくことが大事です。
財産目録の項目や作成手順など、くわしくは以下のリンクにまとめてあります。
■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。
■パスワードリストの管理はエクセル、デジタル遺品の整理は解決。
◆ 不動産の測量と地籍の確定。
不動産の相続は、固定資産税納税通知書があれば、必要な情報は把握できます。それだけで相続や相続登記は可能ですが、相続税の納税のため売却が必要であるようであれば、土地家屋調査士に依頼して所有する不動産(土地)の測量と地積の確定が望ましいと思います。
また実家を離れて長い相続人などは、固定資産税納税通知書をみても、それがどこの地番なのかわからないと思います。ましてや境界がどこまでなのか知る由もありません。
不動産の財産目録ができれば、それをもとに相続人を現地に案内して境界となっている目印を教えておく必要があります。ここは押さえておかないと後で困りますし、トラブルの原因となることがあります。
また不動産の全体像を把握するために、法務局へ出向いて、現地の公図と登記簿を上げておくとわかりやすくなります。ここまでやっておけば、あとは相続で引き継いだ後の相続登記や売却なども進めやすくなります。
◆ 被相続人の出生から今日までの戸籍集め。
人にもよりますが、生命保険でも相続でも戸籍集めに泣かされることがあります。複雑な家系の場合、出生から今日までの血縁のすべてを証明する戸籍謄本の一式を集めておかなければ、相続人が相続の手続きに困ることになります。
なぜかと言うと相続人を確定しなければ、相続手続きができないからです。それを証明する書類が、被相続人の出生から今日までの戸籍ということになります。
生まれてから同じ所に住み、離婚もせず品行方正であればそれほど困ることもないと思います。しかし人の一生はそれほど単純ではなく、至る所に波風があり迷いあり後悔があります。
波乱万丈とまでいかなくても、人それぞれ何かしら事情があり、一筋縄ではいかないものです。戸籍は時代ともに変わり電子化が進んできましたが、故に古い戸籍や改製前の戸籍は入手に手間がかかります。家制度の時代と異なり、結婚すれば親の戸籍から出て夫婦で新しい戸籍を形成します。
・戸籍は改製され、改編され、再編成され複雑化。
当然、結婚以前の戸籍を揃えることも必要になります。厄介なのは法改正で戸籍が再編成されるは「離婚」「転籍」「死亡」は省略されてしまいますから、それ以前の戸籍にさかのぼって確認しなくてはなりません。
驚くことに当然といえば当然ですが、きちんと保存されているものです。時間と根気をかければ、たどることはできるようになっています。自分のルーツ探しのようなものです。
過去の戸籍に有効期限はありませんから、生前にしっかりと出生から今日までの戸籍謄本一式を集めておくと、相続人は大いに助かります。
■相続登記に必要な書類と手順を、実際にやった素人がわかりやすく。
◆ 生命保険の受取人変更。
生命保険契約があれば、財産目録に記載してください。その際重要な点は、生命保険金の受取人を確認することです。
契約するときは、それほど深く考えずに受取人を指定していると思いますが、相続にかかってくると財産の全体の割り振りを考え指定し直しておく必要があります。
生命保険金は、相続財産を離れて(相続税はかかります。)基本的に受取人の固有の財産になりますから、相続財産の分割で不公平になるというようなことも起こります。
また相続では保険金にならず、保険契約のままでみなし相続財産として、新たな契約者に引きつぐケースもありますので、その場合の契約形態に変更も考えておく必要があります。とくに保険金の受取人指定は遺言書の指定と同じ効果がありますので、よく考えて、しっかり見直し、変更した受取人にそのことを伝えておくことで間違いが少なくなります。
生命保険でも契約者が存命ならば、差入証で済むと思います。」しかし契約者が死亡した被相続人の場合、手間がかかります。原戸籍[はらこせき](改製原戸籍[かいせいげんこせき])を求めて昔の本籍地を訪ね歩くようなことにもなります。
生命保険の受取人変更に関しては、下記の記事に草しく解説しています。
◆ 遺言書作成。
財産目録がほぼ完成し、戸籍集めが終わると相続関係説明図ができるまでになっていると思います。その時点ではまだ相続は発生していませんが、被相続人として相続関係説明図に加えてください。
不動産の詳細なリストもできており、生命保険の受取人変更も手続きが済んでいると思います。そこからいよいよ相続財産を誰に何を引き継がせるか決めて、遺言書を書き上げてください。
遺言書は、簡単なようでも細かいルールがあります。とくに法務局保管制度を利用する場合、細部まで規定がありますので、間違いのないように遺言書を自署してください。財産目録はパソコンOKになりましたので、プリントアウトしてルールに従ってセットすれば完成です。
財産内容が変わったら、エクセルの財産目録を修正して再度提出すれば、費用はかかりますが何度でも変更可能です。遺言書のルールや法務局保管制度については、以下のページに詳しく書いています。
■遺言書の法務局保管制度は自筆証書遺言が検認不要、費用激安。
◆ 相続準備でやることリスト、まとめ。
相続を迎える前にやるべきこととして、生前にやるべき相続準備のリストを解説してきました。
それぞれの内容は、さらに奥が深いので別記事として内部リンクで紹介しています。手順に従って遺言書を書き上げるまでには、数カ月はかかるかもしれません。それだけに、相続はいつ発生するかわかりませんし、財産目録や遺言書を仕上げるためには集中力と熱意も必要になります。
誰でも年をとると、体力や気力が落ちやる気が次第になくなってくることがあります。病気にならない前に、元気なうちにまとめられるよう、早めに取りくみ始めることが大事です。
財産を整理し、遺言書を書き。生命保険の受取人を見直し、その上で戸籍謄本一式をそろえておけば完璧です。そこまでできれば、いつお迎えが来ようと安心できるというものです。
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