相続の準備を終活と言わせない整理のコツをまとめ。
相続の準備と終活は同じ土俵で語られることが多いですが、別物と考えるべきです。終活という言葉の響きが好きになれない方向けの、相続準備のコツをお伝えします。
終活と言う言葉の響きには、役割を終えて死に急ぐイメージがつきまといます。相続の準備では、これで人生終わりという意味合いではなく、積極的に引き継ぐものを整理するという感じがあります。
■パスワードリストの管理はエクセル、デジタル遺品の整理は解決。
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◆ 相続の準備を終活と言うな!
世間では65歳をひとつの区切りとして、高齢者と定義しているようです。確かに体力も低下し、気力も前ほどではなくなります。視力もどうもすっきり見えない範囲が広くなります。
パソコンのモニターの文字を大きくしないと見づらいというような、衰えを感じる世代です。相続の準備などまだまだ先のことと思いつつも、家族葬の費用を検索したり、遺言書の情報を集めたりするようになります。
しかし、世間から高齢者と言われようが、抵抗すべきところは抵抗したいのです。家族のための相続の準備を、終活とは言われたくないのです。終活と言う言葉の響きは本人にとれば人生店じまい、除夜の鐘が鳴るようなわびしさが漂います。いよいよという感じの寂寥感があるので、好きになれないというのが本音でしょう。
そんな意味合いではないという方もいらっしゃると思いますが、終活と言う言葉は使いたくない、はっきり嫌いな言葉です。終活ではなく相続準備と言えば、よりよく老後を生きるための前向きな整理と言えると思います。
■終活では保険を見直すだけでなく、財産整理が何より重要なわけ。
◆ 相続の準備の肝は5つ、コツはネット検索とできるとこから。
相続の準備をすると言っても、何から手を付けてよいやらわからないという方が多いと思います。
もともとサラリーマン人生で、資産管理や戸籍・家系図などに縁がない方は大変かもしれません。財産目録を作成したり、戸籍の収集と法定相続情報をそろえたりすることは、最初ハードルが高いと思います。
しかし最近は便利になりました。ネットで検索すれば専門家の情報はすぐ手に入ります。本屋に行けば、欲しい情報を一冊にまとめた書籍が売っています。専門家に依頼しなくても、単純な家系の方なら情報は容易に揃えられるかもしれません。
ただ、そもそもその情報がどこに行けば入手できるのか、お金はいくらかかるのかわからないと思います。その内容を読み解く知識、情報に不足がないかどうかなどの判断が必要になります。
最初は戸惑うと思いますが、何度も通う覚悟で腰を落として取り組んでみてください。そのうちわかるようになってきます。できるとことからコツコツと始め、やめないこと、そしてあせらず止まらないことです。
1)まず財産目録をエクセルでリスト化。
不動産の登記簿謄本、固定資産税納税通知書、保険証券、保険の契約内容のお知らせ、預金通帳、株式・債券の明細、ゴルフ会員権、書画骨董などを、パソコンの表計算ソフトであるエクセルにまとめてしまいます。
できるだけ細かなところまで、物件が特定できるよう正確な記録を残します。エクセルで表形式にまとめると、タテヨコの組み合わせで抜け落ちがなくなり一覧性がとてもよくなります。全体像をざっくりとつかむには、エクセルが一番便利です。
一気に完璧なものはできませんから、定期的に見直し、手を加えていきます。エクセルの場合、項目を追加したり削除したりするときは、全体を書き直す必要がないのでとても管理がしやすくなります。最後にまとめ上げれば、遺言書に添付できる財産目録になります。
2)ID・パスワードなどの管理者情報の一覧をエクセル化。
あちこちに散らばって保存したりメモしたりしているIDやパスワード類は、誰でも一覧表になるくらいあるはずです。
パソコンや携帯、マイナンバーカードからキャッシュカードの暗証番号、クレジットトカード暗証番号、ネットで買い物をするときのIDやパスワード、数が多くとても覚えられる量ではないと思います。
■パスワードリストの管理はエクセル、デジタル遺品の整理は解決。
相続となると、ネットに関する管理者情報が一番困りものです。これらをエクセルにきちんと整理しておくことで、あとに残された相続人の負担を大幅に軽減できるのです。
できれば相続準備としてだけではなく、ご自分の日常の覚えとしても役に立ちます。あちこちにメモしないでエクセルを使い一つにまとめることです。この際大事なことは、すべてをもれなくリスト化することです。
■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。
3)戸籍の収集と法定相続情報の整理。
相続の準備でもう一つ重要なのは、法定相続情報です。家族の戸籍謄本、先々々代までの原戸籍をもとに、法定相続情報を整理してください。
ちょうど家系図を作成する手順です。ご自身を被相続人として、それにかかわる予定相続人を確定し、証明する戸籍を揃えます。
転居が多い方や再婚などで予定相続人が散らばっている方は大変ですが、これは避けて通れません。法務局で法定相続情報を証明してくれる制度がありますが、結局、ご自分で必要な戸籍は集めなくてはなりません。
相続が発生する前に被相続人が法定相続情報を整理できれば、とてもわかりやすくなります。隠し子がいても身に覚えがある当人しかわからないことです。
相続の準備では、予定相続人の手を煩わさないようご自身で法定相続情報を整理してください。
経験的には、先々々代までさかのぼることがあります。聞いたことがないご先祖様の名前まで出てくると思います。
■相続登記に必要な書類と手順を、実際にやった素人がわかりやすく。
4)その上で遺言書作成
上記の項目を整理された方にとって、遺言書作成は容易になっているはずです。相続財産の目録ができていれば、遺言書は9割がたできたようなものです。
法定相続情報を確定させれば、予定相続人が確定します。ここまでくれば遺言書に抜けやモレが少なくなります。相続準備の最後の仕上げに遺言書をお書きください。
■遺言書の書き方はシンプルに、財産目録はエクセルで超簡単見本。
5)家族への説明とペーパー出力、保存場所の共有。
せっかく整理しても、秘密主義では困ります。相続財産の目録もパスワードなどの管理者情報の一覧も法定相続情報もエクセルで作成したものは、プリントアウトして綴じておいてください。
そして保管場所を、予定相続人に教えておいてください。遺言書も含めて保存場所の共有がとても大事です。できれば作成した資料をもとに家族に一度でも説明しておけばより完全です。
個々の項目の具体的な手順や仕様は、ここには書いていません。過去の記事にあるものはリンクを添えておきました。決まった形があるわけではないので、それぞれの方の内容に合わせてわかりやすくエクセルにまとめられればよろしいかと思います。
◆ 相続の準備と整理のコツ、まとめ。
相続税がかかると思われる資産家は、早めに何かしらの相続準備をされているものです。
生前贈与や生命保険契約、不動産投資などで資産を圧縮すると同時に納税資金の準備もぬかりないと思います。
ところが相続税がかからない方、あるいは相続税の基礎控除が下がってから、にわかに相続税が心配になってくるような層の方は、相続準備ができていないことが多いようです。
相続税がかからなくても、財産の整理は必要です。どのような相続でも必要な手間は、一通りかかります。でも相続税がかからないからこそ、気軽に相続準備ができるということがあります。終活でない相続の準備は、自分のためでもあるし家族のための準備でもあります。
相続が発生するとお葬式や法要、家財整理など、残された家族が行わなければいけない作業は多彩です。相続税の申告が不要でも、相続関連のほかにもたくさんしなくてはならないことがあります。
相続準備のポイント5項目を整理しておくと、後に残された経験がなく知識が少ない相続人にとって、これほどありがたいものはないわけです。
終活のセンチメンタルな部分は切り捨てて、事務作業として相続の準備を楽しんでいただきたいと思います。とりあえず、パソコンのモニターがフツーに見える間に取り組まれることが良いようです。
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