想いを残す「相続メモ」と生命保険の受取人指定で争族を回避。

想いを残す「相続メモ」と生命保険の受取人指定で争族を回避。

争族を回避するためには、生前に親の意思表示が必要です。相続と言えば遺言書のように申し上げてきました。しかし庶民感覚で考えると、遺言書はまだ一般的であるとは思えません。とくに二次相続で遺言書はあまり見かけません。

遺言書は法律文書としての形式要件を満たしていないと、法的効力がありません。そうかといって、専門家にお願いしてお金をかけてまで遺言書を残そうとは思わないのが、普通の感覚のように思います。

でも被相続人が何も意思表示をせずに相続をむかえると、仲のよい兄弟姉妹でも場の空気が変わり波風が立つとしたものです。

親の責任として、思いを残す「相続メモ」を提案します。遺言書のルールに従った相続メモなら、遺言書として法的効力をもちます。しかし遺言書のルールにこだわらない相続メモは、被相続人の意思をメモ書きにしたものです。

その際の注意点として、生命保険の名義変更・受取人変更を含めてご案内しました。

■相続での争いは譲れない人間の本性をさらけ出す深い理由。

◆ 争族を未然に防ぐ「相続メモ」のオススメ。

相続税がかかるか、かからないかにかかわらず、親としては遺産の分け方をご自分の意思として残しておく必要があります。

誰でも寄る年波には逆らえず、いざとなったら首尾一貫したことを説明できるとも限りません。できる限り日付の入った書面で、ご自分の意思を書いた相続メモを残すことをオススメします。

遺言書でも遺書でもありません。「相続メモ」とでも呼ぶ感じで結構です。特別な経済的事情や普段から仲が悪くない限り、親が「相続メモ」にご自分の意思として分け方を生前に指示しておけば、争族はある程度まで回避できると思います。

相続が発生する前ではなく、さらに言えば認知症になる前に相続メモは書いておくことが必要です。気力もありご自分の意識や気持ちがクリアなうちに、書面にしたためることが大事です。そしてお盆とか年末年始とか家族が集まるときに「相続メモ」の内容を説明しておくのです。

もし相続メモに遺言書としての効力を期待するのであれば、被相続人の氏名と日付、捺印があれば広告の裏に書いても有効な遺言書となる可能性があります。遺言書は自筆(手書き)が条件です。相続メモにルールはありません。できれば手書きの方が、気持ちが伝わるように思います。

■特別受益の持ち戻しが争族の火種になると大炎上。

◆ 生命保険は、受取人変更と受取人割合変更。

生命保険の受取人変更は「相続メモ」書いても効力はありません。契約時に指定した受取人は、契約者が保険会社に申し出て変更しない限り変わることはありません。

契約者と受取人は、何度でも変更することができます。保険会社に言えば無料で変更OKです。ただし縁遠い親戚や親族でない人を受取人に指定することは、モラルリスクがありますから変更できない場合があります。

相続が近くなると、頭がしっかりしているうちに生命保険の受取人を見直す必要があります。人生の時期により相続人のかかわりや重要性が変化し、受取人を見直す必要が出てくることがあります。受取人は何人でも指定できます。受取りの割合も変更できますから、微妙な差をつけることも可能です。

まったく遠慮なく何度でも保険会社もしくは、窓口の営業職員に申し出てください。これにより絶対に費用が発生することはありません。

親が年老いても家に寄りつかない長男もいます。何かと言っては親の金を無心する子もいます。一生懸命世話をしてくれる娘もいます。公平に受取人を指定していても、だんだんとそうはいかなくなります。

少しでも世話になった子には、多く渡してやりたいのが人情です。ご自分が指定しておかないと、兄弟姉妹が相続の分配で喧嘩するようなことにならないとも限りません。

・生命保険の受取人指定は絶対確実。

受取人は最後に一度見直して、納得のいく分け方を指定することが、よろしいようです。生命保険の受取人は固有の権利として守られます。保険会社は契約者が指定した受取人に指定の配分以外は、絶対に払うことはありませんから確実です。

保険会社の受取人指定は、正式な遺言書以上に確実なのです。繰り返しますが「相続メモ」で保険金の受取人を変更しても、遺言書のような効力はありません。

受取人は保険会社に申し出て受取人変更の手続きをしてください。その結果を「相続メモ」に書くようにしていただければよろしいかと思います。

■相続はもともと不公平、兄弟でもめるとあの世で親が涙。

◆ 家屋敷などの不動産は、相続メモで意思表示を明確に。

家屋敷、土地などは生前に誰に渡すかを意思表示することです。遺言書が書ければ一番良いですが、身内を納得させるだけなら、自筆のメモ=相続メモでもよいのです。

自分で書いて、子らにきちんと説明しておくのです。不満がある子もいるでしょうが、親の意思であればまだ納得させやすいのです。生前に、それも認知症になる前に遺産の分割を指示しておくと、争いは起こりにくくなります。

相続メモを書くときの注意として、手間はかかりますが不動産が特定できるよう地番などを固定資産税納税通知書などで確認してください。相続メモと言えども、間違いないように書くことが、あいまいさをなくすことになります。

◆ それでも相続は疑心暗鬼、ぎくしゃく、欲得のるつぼ。

そんなことはうちに限ってないとお思いでしょうが、相続はそういう安易な楽観を打ち砕きます。争族はどこの家庭にも起こりえることです。相続が見えてくると子らの頭には計算が立ちます。

これは性格や人間性に関係なく起こる疑心暗鬼でもあります。何度でも申し上げますが、うちに限って争族はないというのは全くの妄想です。人がいれば欲得は避けられません。

相続の本質は、貧乏人の財産の奪い合いなのです。この問題だけは人間の理性を越えて、まともな人の自制心を破壊します。相続という欲得のるつぼとは、経験した人だけがわかる泥沼なのです。せめて「相続メモ」で親の意思が明確であれば、納得しないまでも自制心が働きます。

■相続財産を教えてくれない親の本音と秘密主義。

◆ 生前に遺言書でなくても正確な意思表示。

なかなか、先立つものが少ない相続は難しいのです。また分けるものが少ないほど激し争いになることは、世間の事例を見るまでもなくはっきりしています。ゆえに親の意思明確にした「相続メモ」は有効になると言えると思います。

生前に親の意思を「相続メモ」で子らに伝えることは、遺言書以上の効果があります。遺言書を書くならご自分の意思が決まっているわけですから、堂々と生前に伝えればよいのです。自分の死後に開封される遺言書はもはや死にゆくものには関係ありません。

生前に遺言書でなく、正確な意思を伝えることは大きな意味があります。条件が整った遺言書は法的には有効でしょうが、所詮過去のものです。生前であればこそ、自分の気持ちに沿った修正が可能になります。それゆえより確実な「相続メモ」と生前の説明を提案申し上げています。

◆ 「相続メモ」が書けない親の想いと割り切り。

 

相続メモには、遺言書を書くときと同じハードルがあります。財産をどの子にどれだけ相続させるかが、容易に決められないのです。相続メモは財産分与の指定をすることが主な目的です。

また年とともに子らとのかかわりや孫のことも気になりだすと、想いが変わってくるので腹が決められないと言うことも起こります。そのうち財産構成も変わってきます。

もう一つの懸念点は、親の財産構成を相続人たる子らに知られたくないという秘密主義もハードルとなります。意外に親の財産を子らに知らしたくないという思いは大きいのです。

財産分けを相続メモに書いておくには、相続財産をオープンにしなければできません。どうしても財産の全容や財産分与の指定を相続人に知られたくないというのであれば、遺言書を書いて法務局に預けておくほかありません。

親の想いと秘密主義は、割り切らないと相続メモは書けません。遺言書なら秘密は守れますが、財産分与は腹を決めないと書けません。「相続メモ」は親の手の内を子らに明かして、想いを伝えるところに意味があります。

■相続財産を教えてくれない親の本音と秘密主義。

◆ 生前に「相続メモ」で争族回避、まとめ。

生前相続として提案させていただいている「相続メモ」のコンセプトは、役に立つシンプルな方法を提示することです。

相続税がかからず、日頃仲のよい家族が相続と言う関所を通ることで仲違いしないためにできるこことは何か。その方法として「相続メモ」は有効だと思います。ただみなし相続財産である生命保険の受取人指定には、適していませからご注意ください。

もともと人間はお金という魔物がなければ、皆仲良くしたいと思っています。その方が経済効率的に有利なのです。相続で争わないためには決定権のある被相続人が、生前に自分の意思を「相続メモ」で明確に伝えることです。そうすれば争いごとの大半の目は、未然に摘み取ることができると思います。

相続で親の本音は秘密主義、親の公平は子の不公平。

あの世ではできない相続準備、生前にやることリストをくわしく。

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