相続税調査は8割NG、元国税OB税理士にツボを確認。
すでにご案内のように平成27年1月1日から相続税の基礎控除が引き下げられ、増税となりました。
[基礎控除が5,000万⇒3,000万、相続人一人当たり控除が1,000万⇒600万]この条件は相続税のボーダーライン近くにいる無自覚の相続税対象者にとり、かなり厳しいバーとなりました。実際の数字で見てみると平成27年の死亡者数は、全国で約129万人です。平成26年は約127万人ですからそれほど変わりません。相続税がかかるからと言って、被相続人は早めに死ぬというわけにはいかないものです。
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◆ 相続税の課税対象者は倍増。
被相続人(死亡した人)の中で相続税の課税対象となった人数は、平成26年は56,239人であったものが平成27年で103,043人となり一気に倍増しました。予想されていた事とは言え課税割合(全死亡者数に占める課税された被相続人の割合)は、平成26年分の4.4%から平成27年は8.0%へと大幅に増加しました。
これは、生前贈与や生命保険での対策、不動産投資をしてなお納税を余儀なくされた方の数ですから、そのすそ野はとんでもなく広いように思います。
◆ 相続税調査は申告担当の税理士に相談。
相続税の課税対象者が倍増した結果、相続税調査の対象者も倍増したことになります。
相続税調査は税務調査の一種ですが、たびたびあるものではありませんから、経験を積むということもできません。相談するにしても誰に相談すべきかわからないものです。
主に税理士さんに相談するしかないのですが、とくに相続税調査に強いのがOB税理士です。あたり前と言えばあたり前です。もともと相続税調査をする側にいれば事情に明るいのも、ツボを押さえることもできます。
◆ 国税OB税理士に相続税の税務調査のツボを確認。
その1)ターゲットは「富裕層」「無申告」「海外資産」ということです。
相続税がかかるかどうかの境目の庶民感覚では、無申告が相続税調査の対象となります、無申告とは、相続税がかかるにもかかわらず、勝って解釈して、まったく相続税の申告をしない場合です。申告漏れと言うのは相続税の申告はしたけど抜けていた、あるいは過少申告というケースです。
その2)知らなかったは通用せず「非違」となります。
知らなかったで時効を向かえようという考えは、税務調査では通用しません。「非違」とは違法、非法と同義です。相続税調査の8割で「非違」とは驚くべき割合です。その多くが税法に対する無知、素人解釈が原因です。
税法に対する誤解、事実誤認に基づくものは課税を免れる正当な理由には当たらないそうです。
その3)相続税は実質課税です。
相続税調査で指摘される多くのケースは、名義預金です。名義が変わっていても実質的に被相続人に帰属する財産は、相続税の課税対象になるのです。
妻のへそくりや名義保険などは、格好のターゲットになります。資金の出所と管理者が、被相続人であれば名義預金と判断されます。贈与の事実が証明できなければ、贈与税の時効も開始しないのです。
その4)税務署はお金の動きをすべて知っている。
相続税調査のときに家族を含めて、過去10年、20年のお金の移動、財産の移動、生命保険契約等もすべて調査官の手の内にあります。
税務署には調査権限があり、家族名義の金融機関の通帳を見れば、お金の動きは明白になります。もちろん無申告の贈与もわかってしまいます。
おおよその目算を立てて、その裏を固めるために調査に来るのです。世間話のように見えても、誘導尋問と言うことがあります。税務調査におけるプロの仕事は、決して甘くないのです。
その5)フツーの相続人はほとんど悪意の相続人。
相続税の申告において、時効を迎えることができる善意の相続人とは、相続税の申告、納付を必要ないと信じきっていた人のことです。
たとえば少しでも相続税の申告はしないといけないと分かっていた相続人は、言ってみれば悪意の相続人と呼びます。申し訳ない言いぐさですが、課税当局から見れば、ほとんどの相続人は悪意の相続人に該当するのではないでしょうか。
となれば無申告加算税から、故意ととられると重加算税という重い税もあり得るのです。
◆ 相続税調査は8割NG、まとめ。
あまたいらっしゃるであろう相続税の無申告者の皆さんに申し上げたいことがあります。ゆめゆめ相続税の申告を無申告のままで時効を迎えることなど、期待しない方がよろしいようです。
結論は都合のよいように勝って解釈して、無申告とならないようご注意いただきたいと言うことです。決して相続税調査は甘くないのです。
いろいろ申し上げましたが、筆者は税務署のまわしもではなく、善意の第三者です。仕事がら、知り合いの国税OB税理士の話を総合した結果であるとご理解下さい。
ちなみに贈与税の調査は少ないですが、年間3,000件以上あります。驚くことに贈与税調査では非違が9割超にも及ぶのです。もちろん、問題のありそうなところを調査対象に選定しているでしょう。それゆえ率が高いのは当然ではありますが。
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