国税OB税理士の自己矛盾を暴くと驚く話が山盛り。

国税OB税理士の自己矛盾を暴くと驚く話が山盛り。

国税OBとOB税理士とは、ほぼ同義語です。国税OB税理士とは何者か?と言えば、一般に国税の徴収を管轄する国税庁や税務署のOBを指します。

税務署に一定期間勤務すると、退職後税理士資格を得ることができる仕組みがあります。たとえば何々署の署長を務め、退官後は税理士として開業されます。

(国税庁が管轄する国税には、所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税などがあります。)

それまでかかわりのあった企業や優良申告法人を顧問先をとして取り込み、税理士として独立されます。税務署での経験とコネクションを活用して、主に税務署と企業の橋渡し業務を生業とされます。ものの例えとしてはよろしくないですが、警察と泥棒が入れ替わったような感じです。

なにしろ元署長ですから、税務署に顔が利きます。税務調査のツボと落としどころを心得ています。税務調査の場面でも「もうその辺でやめといたらどうや。」などと統括官に言える立場なのです。

国税OB税理士とは税理士のOBではなく、国税庁や税務署の国税調査官のOBで、税理士資格を得た方なのです。

従って国税OB税理士は、税理士試験に合格したわけではなく、長年税務署に勤務することで自動的に税理士を名乗ることが許された方なのです。

言わば定年後の生活のために与えてもらった、ご褒美資格です。れっきとした税理士の先生には違いないのですが、普通の試験合格組の税理士とはちょっと空気が違います。

国税OB税理士という先生は、税理士全体の3割から4割と言われています。思いのほかOB税理士は多いというのが実感です。

庶民には理解できない裏構造ですが、OB税理士の先生も人柄次第と言えます。実際課税当局の実情には明るく、顔も利くように思います。何しろ元税務署長ですから、税務署のお偉方にとれば、煙たくてもコケにはできません。いずれ世話になるかもしれないからですね。

◆国税OB税理士の先生は、どっちの味方。

OB税理士の先生は、少々アドバイスの角度が違います。どうも当局の手先か、顧客の味方かよくわからない方がいらっしゃいます。OB税理士では一般の税理士と違い、アドバイスも課税当局の立場を代弁しているようなところがあります。

何人かの国税OB税理士の先生とお近づきになりましたが、当局の内情はよくご存知です。しかし税法や相続事業承継のテクニック、保険や節税は詳しい方が少ない印象です。というか経験がないので専門外という感じになります。

税務署内では個人課税部門、法人課税部門、資産課税部門のように担当部署が縦割りに分かれているそうで、その結果、OB税理士は得意分野が限られています。

それなら勉強して調べてくればよさそうなものですが、検索テクニックも、PC操作も疎い方が多いのです。何故かなと思い聞いてみると、署内では規律が厳しくメール禁止、インターネット禁止で定期的な転勤がありますから、情報に疎遠になるようです。

それゆえ相談するにも細心の用心が必要になるのです。(変なことですが、OB税理士にはすべてをオープンにして相談するにはためらいが残るのです。)

それでも、異なる視点、当局の見方、考え方は知っておく価値がありますから、国税OB税理士の先生のアドバイスも取捨択一しながら聞けば価値があります。

◆ 税理士の種類と国税OB税理士の不思議な立場。

国税OB税理士はもともと国税調査官であり、長じて税務署長のOBであることが多いと言うことは前項に書きました。国税調査官と納税者の立場に立つ税理士とでは、そもそも相反する立場です。

人によっては、もともとの徴税意識や正義感が邪魔をする自己矛盾に陥るようです。

ただ国税OB税理士は、税務署や税務調査のツボは理解されていますから節税するにしても、どこまでが許容範囲かについては、見当がつくようです。

ただ、それ以上にグレーゾーンに踏み込むとき、OB税理士にはどうも素直に相談できないという、妙な警戒心が納税者側に起こります。

・OB税理士の先生、有税で節税保険はかけまへんで!

税務署上がりの元署長、国税OB税理士の先生に節税目的のがん保険の経理処理について相談したことがあります。

がん保険を既得権で抱えている企業は、退職慰労金の支給時期までなるべく解約したくないところです。全額損金で課税が繰り延べできて、解約返戻率が長期にわたりすこぶる良いがん保険は、既得権として残しておきたいわけです

(平成24年4月27日以後に契約するがん保険の保険料の取り扱いが変更になり、新たにがん保険に加入しても1/2損金でしか処理できなりました。既契約には遡及されませんでした。)

ところが中小企業では、数年もすれば社員は次々止めていきます。名目上は福利厚生ですが、実質は節税を目的とした簿外積立です。福利厚生目的で法人契約している保険であれば、退職者が発生した場合解約するのが当たり前です。

でもそれではせっかくの簿外積立が目減りして、無駄な雑収入が発生します。その結果、税金というコストが大きくなります。税務調査を前に、解約せずに切り抜ける方法はないか税務署OBの税理士の先生に恐る恐る相談すると、解約しなくても大丈夫とのことです。

エエッと驚いてよく聞いてみると、その分税金を払えば問題がないというわけです。おっしゃっていることは、有税で保険をかけるなら被保険者が在籍しようが退職しようが、税務署は知ったこっちゃないというわけです。

在籍しない社員の保険料を損金で落とすのは、認めませんよというわけです。そりゃそうですが、有税で節税保険を掛けるほど愚かなことはできません。

どうも視点が違うの で聞きにくい先生もいたものです。

◆ 国税 OB税理士は税務調査対応の専門職。

OB税理士の得意は税務調査ですから、ツボは心得ています。優良申告法人はお上の意向を受けて、国税OB税理士の先生を一定期間顧問として契約します。持ちつ持たれつの関係です。

それで自分が署長時代の表敬状がかかった社長室で、税務調査対応専門の税理士としてアドバイスを仕事とするわけです。

今はさすがにお上の紹介はなくなりましたが、税務署長として権勢を誇っていても定年後は税理士として食っていかねばなりません。顧客となる可能性がある優良申告法人などに、あまり敵は作りたくないのが本音です。

全く立場が逆になりますから、頭の切り替えも必要です。節税指南でも何んでもしなければ、経営者に気に入られるはずがありません。

元税務署長ですから、税務署に顔が利くだけではなく、調査内容や調査官の履歴などには詳しいですから、良い面もあります。しかし、どうも会話がかみ合わなくて、うかつに本音で相談できないところもあります。手の内を明かさずに付き合う、不思議な関係です。

ただ実感としていえるのは、相撲の土俵が東西入れ替わっても大差ないですが、警察と泥棒が入れ替わったような無理があります。元国税調査官で税理士事務所を開業されている先生は多数いらっしゃいます。しかし商売っ気がないとうか、武士は食わねど高楊枝的な雰囲気が漂っています。

人にもよりますが、どうもこの手のOB税理士の先生は、丁重に扱いつつも距離を置いてしまうところがあります。

◆ 国税OB税理士に内輪の事情を聞き取り。

税務署の年間サイクルで、税務調査の時期も決まるようです。

税務署の事務年度は7月はじまりで、6月に終わります。これは確定申告という大事業が1月から3月まであり4月はその事務処理に追われるからだそうです。

また正直な話ですが、4月~6月の成果は人事に反映されないので力が入らない時期だそうです。人事異動は事務年度に合わせて7月にあり、7月~8月は引継ぎや調査先の選定などの準備期間です。

よって9月~11月に国税調査官たちが自らの成果を上げるため、本腰を入れて税務調査を行う時期なのだそうです。そういえば確かにそのころに税務署から税務調査の連絡があります。

・調査官の出世要件は成果だけではない。

国税OB税理士によれば、調査官は調査で成果を上げても賞与加算は10万までだそうです。調査官の成果とは申告の誤りや不正を発見して、如何に多額の追徴課税を課せるかが問われます。いやな仕事ですが、若手調査官は出世ルートにのるために厳しい調査、成果を求めてくるそうです。

税務署での出世は税務調査での成果より、人間関係と所属部署がものを言うそうです。30歳過ぎで、出世ルートに乗れるかどうかで人生が決まるとのことです。銀行のようにわりと振り分けが早いのですね。

◆ 優良申告法人の税務調査対応に国税OB税理士。

優良申告法人であれば、諸般の事情からOB税理士との付き合いも必要です。優良申告法人の社長には、元税務署長から年賀状や暑中見舞いがきます。その後に税理士事務所開業の案内がきます。

優良申告法人では決算、税務申告用の税理士と税務調査対応用のOB税理士の2口を顧問契約していることがあります。どちらも肩書は税理士ですが、情報の質も方向性もずいぶん違います。

国税調査官から税理士への転身は、立場が180度変わりますから自己矛盾がありそうです。しかしOB税理士からは、税務調査の裏話なども聞けますから参考になります。

◆ 優良申告法人とOB税理士の深い関係。

優良申告法人として表敬されることは、条件がとても厳しいですが、優良申告法人になれれば税務調査でびっくりするような優遇があります。

ここだけの話ですが、税務行政に協力し署長や総務課長に会合の後の意見交換会で一杯注いでおくと、何かにつけて配慮いただき落としどころを見つけていただけます。

税務署の署長にすれば、調査対象でありながら引退後の顧客になる可能性もありますから、恩を売っておくということもあるわけだと思います。

優良申告法人では、税務行政に積極的に協力することがわが身を守ることになります。納税協会から拝命した役職は、100%出席し点数を稼ぎます。もちろん、OB税理士の先生も二段構えで受け入れます。顧問税理士がいても、それ以外に国税OB税理士の先生と顧問契約を結ぶのです。

日常の会計報告会やら決算処理などは一般の顧問税理士が担当し、当局との交渉ごとはOB税理士の先生の出番になります。

もう今ではなくなりましたが、国税から直接顧問契約のお願いに来られます。営業力の無いOB税理士の先生ですから、そこまでお世話しているわけです。

■優良申告法人の税務調査のウラ話、現場のリアルを体験から。

◆ 国税OB税理士の先生、まとめ。

存じ上げている元署長クラスのOB税理士の先生、数名とかかわらせていただいた所感を言えば、いずれの先生も普通の税理士とは違い、態度はデカイです。

禁煙の社長室で、灰皿を所望されるのでやむなくご用意したこともあります。税務職員はそれぞれ専門分野があり、OB税理士さんによっては、税務申告が適正にできるとは限りません。しかし税務調査の立ち合いでは、やはり威圧感が違います。

税務調査が無事終わり、お礼に食事にお誘いしたこともあります。お酒が入ると税務署の裏事情や税務調査のエピソードなど面白い話が聞けました。国税調査官も統括官も人の子という話です。

OB税理士の先生には、すごい方も存じ上げています。定年を待たずに若くして独立されたOB税理士の方です。バランス感覚がよくて、いかにも切れ者です。もちろんOB税理士としての違和感もありません。

定年退職後の片手間税理士と本気で独立したOB税理士とでは、向き合い方が違うのかもしれません。ただ独立OB税理士に、景気はどうですかと尋ねたら、笑いながらジェットコースターのようですね、と一言。税理士業務を軌道に乗せるのは並大抵のことではなさそうです。

・元国税調査官の自己矛盾。

税務署というのは強制捜査権もあります。また調査能力は半端ではありません。ただ国税調査官も人間です。いつ自分が調査される側につくことになるかもしれないという自己矛盾があります。

また国税OB理士もピンキリです。どちらの味方かわからない中途半端なスタンスの税理士や特定の分野しか知識をもたない税理士、保険を売りたがらない税理士など、お付き合いするにも相手を見極める必要があります。

OB税理士は総じて営業力がなく、武士の商法とまで申しませんが、お金儲けやブランドづくりがお上手ではありません。ただ税務署との交渉窓口としては、職場こそ違え元同僚ですから話の落としどころは熟知しています。そういう意味ではまさに適任です。

国税OB税理士の特性を理解したうえで上手にお付き合いする知恵こそが、経営のお役に立つと言えそうです。

Pocket

「国税OB税理士の自己矛盾を暴くと驚く話が山盛り。」への5件のフィードバック

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です