役員退職金の損金限度は平均功績倍率のなんと1.5倍。

役員退職金の損金限度は平均功績倍率のなんと1.5倍。

役員退職金は、長年にわたり経営者を務めていると、巨額になることがあります。

中小企業の経営者としては、事業承継のめどが立ち、後継者の相続税の納税原資が確保できていれば、別段役員退職金をもらう必要もありません。

中小企業のオーナー経営者にしてみれば、会社は自分と一心同体です。自分がこれまで稼いだ資金は、会社に残しても自分が退職金として受け取っても、同じことという感覚があります。

跡を継ぐ後継者にしてみれば、会社に資金を残してもらった方が経営にとって都合がよいので、特に生活に困るわけでもないなら、当人がいらないという役員退職金を無理に支払うこともありません。

■死亡退職金が所得税なしでも有利だとは言えない理由。

◆ 否認された部分にかかる税金が甚大。

税務署と話が食い違い、更正処分ともなると全く痛いというかつまらない税金が見解の相違で発生します。

過大であるとして否認された部分でも、退職金として支給することはできます。しかし、費用として損金で落とせないことになります。有税で役員退職金を支給することになります。そういう意味では、会社がいくら役員退職金を支払うかは全く自由です。

完全に退職していれば、ご承知のように退職所得は勤続年数による控除があります。かつ半分に課税され、なおかつ分離課税という有利な税制になっているのでこれを使わない手はありません。

でも実質的に引退していないというケースがあります。その場合、役員退職金そのものを否認されると、法人として損金に算入できないばかではありません。退職所得としての有利な税制が使えず、個人所得において退職金と認められないので通常の税率で所得税が課税されます。

役員退職金を否認されると、税的にはかなり痛いダブルパンチをこうむります。

一番困るのは、役員退職金を否認されると金額が大きくなります。これは優良申告法人取り消しなどに発展します。これはもっと痛いことになります。

役員退職金を否認された場合の課税のポイントは下記です。

・否認されると、退職金として費用にならない。
・否認されると、退職所得税ではなく普通の所得税になる。
・退職金として認められても過大な部分は損金に落とせない。

◆ 直近の判例は平均功績倍率の1.5倍

あちこちのサイトでいくつか紹介されている判例です。H29年10月23日付一般財団法人大蔵財務協会が発行する「週刊税のしるべ」によると、税務署側が言う同業類似法人から算出した功績倍率の1.5倍まで役員退職金として損金算入可能という東京地裁の判例を掲載しています。

まだ東京地裁の判断ですから、上訴でどういう判断が示されるかわかりませんが、正直ドキッとする判例です。

税務署としては同業類似法人から算出した功績倍率が、役員退職金としての適正額でと考えます。それを越える部分は不当に高額なので、損金算入を認めないという立場です。

それを判決は頭から否定し、「硬直的な考え」とまで断定しています。要するに許容範囲は功績倍率の1.5倍までは、容認すべきだという判断です。

大盤振る舞いというか豪気というか、まともに真に受けることができない判決でもあります。

計算してみると税務署が平均功績倍率3.26倍を限度だと言っているのに、裁判所は4.89倍までよいというのです。

事例では最終報酬月額が240万、役員在任期間が27年です。死亡退職金という点を考慮しても、その金額的乖離は2億1124万が3億1687万まで増加しますから、なんと1億563万も多くなります。

これから退職慰労金を受給する予定の社長さんには、うれしいような怖いような話です。

■役員退職金否認、最新判例。

◆ 役員退職金の適正金額はいくらか。

これはネットで検索したり他社のまねをしたりして役員退職金規定を作成し、功績倍率を都合のよいように高めに置き換えて、功労金加算を3割などと言っても税務署には通用しません。

役員在任中の最高報酬月額を基準とすると書いてあっても、OB税理士がそれを否
定するケースにも出会いましたから、世間一般の感覚と課税当局の認識には確実にズレがあります。

本当の適正額は税務署が、容認する範囲での金額なのです。

■役員退職金の功績倍率は課税当局が決める。

役員退職金がたくさんほしいなら、在任中に計画的に役員報酬を増額していくことです。駆け込み増額では通用しませんので、せめて3年は支給実績を作って下さい。

役員退職金の適正額は税務署が認める金額です。ここをはずして勝手解釈して争っ
ても、裁判でもしない限り勝ち目はないのです。もちろん大枚払って裁判をしても勝てるとは限りません。

最近の判例からすれば、一歩踏み込みたくなる気持ちもわかります。でも税務署に目を付けられないことの方が、長い目で見て得策であることは間違いありません。

◆ 役員退職金の損金限度、まとめ。

役員退職金の支給限度について、思いがけない記事を発見しました。それが妥当な話なのかどうかは、税務調査の現場で判断されることになると思います。

税務署は、功労金を含めて功績倍率を見てきます。その限度が、平均功績倍率3.26倍という指摘です。もちろん功績倍率は、業種によって異なるものです。それを前提にしても、裁判所の判断による4.89倍は過大と言えるかもしれません。

支給前に税務署に相談して支給額を決めておけば安全ですが、企業の勝手理屈で功績倍率や功労金を決めて支給することはリスクがないとは言えません。

役員退職金を受け取るなら、課税当局のご意向に沿うことが安全な道です。

また、規定や議事録を整備し、税務署に事前相談をし、本当に引退することです。

功績倍率にこだわる経営者のお気持ちはよくわかりますが、役員退職金の支給は、安全策をとることが大事です。そうすることで会社に資金が残れば、後継者が次なる投資を考えることが出来ます。単なる否認リスクや資金的な安心感だけでなく、事業戦略の幅が広がることは間違いないのですから。

役員退職金は保険で準備すると節税できる理由。

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