相続税の税務調査で狙われる理由があります。
課税当局の調査する側の人脈やOB税理士にネットワークがあるといろいろな情報が入手できます。
署の幹部の方々は納税に協力的な優良申告法人などの企業には格別に親切ですし、納税協会の行事等で一杯はいると内輪の情報もアドバイスいただけます。
優良申告法人と言えども本音は多額の納税を望んでいるわけではなく、できるだけ少ない納税で税務調査に配慮、はやりの言葉で「忖度」を期待しているにすぎません。
狐とタヌキの化かし合いのような面もありますが、双方にメリットがありますから、それはそれで機能する仕組みなのです。
すぐに転勤になるとは言え、署の幹部方とは親しくさせていただいて損はありません。
それだけ見返りの配慮も情報も質が良いと思います。ただ税務署も組織が分かれていますからお得意分野があります。そこは心得ておく必要があります。相続税なら資産税部門が担当します。
今回の相続税の基礎控除の縮小[基礎控除が5,000万⇒3,000万、相続人一人当たり控除が1,000万⇒600万 相続人が3名いるなら4,800万控除]で、相続税が庶民にも身近になった感がありますが、資産家にとれば誠に過酷な税制です。
しかし相続税には課税当局にも大義名分があります。
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◆ [課税庁側の大義]相続税の真の狙いは・・・
・一生分の所得税の課税漏れの精算、最後の砦
サラリーマンをしていると所得税は源泉徴収という名目で自動的に有無を言わさず天引きされてしまいますので、徴収漏れということがありません。しかし法人でも個人でも見解の相違も含めると所得税の課税漏れはそれなりにあるはずです。
企業会計原則の一般原則でも「保守主義の原則」という考え方があります。企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならないという幅のある解釈もあります。
それやこれやをひっくるめて、所得課税できていないものを相続税で清算していただきますと言う、血も涙もない課税の最後の砦が相続税というわけです。
・富の集中抑制機能、財産保有状況の均衡化
課税当局には基本的に公務員が務めています。普通に暮らしていれば資産がそれほど蓄積されることはないでしょう。
一般国民たる庶民にとって課税当局の職員は、鼠小僧次郎吉のようなもので富裕層や資産家から財産を没収して公平をもたらしてくれる正義の味方と言えるかもしれません。
ここに税務署の相続税を徴収する大義名分があります。
自由主義経済ではどうしても富が一極集中しがちです。それを何代も課税ぜずに引き継げば社会的不公平と貧富の差は拡大します。
相続税が重税であるがゆえに、財産保有状況の均衡化が図れるというわけです。
◆ 無知な人ほど狙われる相続税調査
・相続税の知識不足による安易な解釈
相続税で一番危ない、狙われるパターンは、相続直前に多額の現金を引き出す事だそうです。
田舎のJAや郵便局なら顔見知りですから、親が行かなくても現金を下せる場合があります。葬式代のつもりで多めに現金を下すことはよくあります。
でもうまく立ち回ったつもりが裏目に出るのが相続直前というタイミングの悪さです。
課税当局は資産の動きはすべてお見通しです。
無知な人に罪はないのですが、知らなかったでは済まないのが相続税です。
専門家に相談するなり、自分で勉強するなりして相続税に対する無知を克服しておくことが重要です。
言っておきますが、勝手解釈はケガの元です。税理士などの専門家と縁がない素人でも相続税がかかりそうなら税務署に相談に行くなり、税理士さんにお願いするなりの対策が必要です。
◆ 富裕層を狙う税務署は・・・
・富裕層の資産状況は長年の蓄積データで分析
狙われる富裕層は早い時期からあの手この手で専門家による相続税の節税対策を行っているものです。
しかし資産家たる中小企業のオーナーの実際の相続税対策をみると、ずいぶんグレーゾーンが多いですし、自分の都合のよいように解釈して節税したつもりが多いように思います。
例えば時効になりもしないのに6年で贈与時効を待っていたり、贈与になるにもかかわらず生命保険の名義を変えて知らんふりもよくあります。
概して資産家というものは猜疑心が強く人を信用するということがあまりないように思います。家族にも相談相手にも手の内はすべて明かしません。ところが本人よりもまた担当税理士よりも詳しく資金の流れを把握しているのが税務署です。
税務署には資産家たる被相続人に関する長年のデータが蓄積されています。
当然毎年の確定申告情報はもちろん不動産の所有状況や金融機関の取引情報も家族を含めて手の内にあります。
年間所得から想定すれば相続税が正しく申告されているかどうか見当がつきます。あるはずの資産内容が相続税の申告に反映されていないと相続税調査の対象になるわけです。
◆ 相続税対策の基本をアドバイス
・余裕を持った生前贈与がベスト
相続税対策の基本は何と言っても生前贈与をうまく活用し、相続する財産を減らしておくことです。生前贈与で効果を上げるにはある程度の年数が必要です。
なるべく早い時期から始めることです。他のページに山ほど生前贈与の手法には書いていますので、ここでは詳細には触れません。
下記を参考になさって下さい。
・生命保険による対策が基本
少々の相続税なら生命保険で対策が可能です。被保険者の年齢や健康状態という問題はありますが、生命保険の活用は最も安全確実で効果的です。
予定利率が最低の時代ですから、外貨建ての一時払終身保険が狙い目です。最低でも相続税が控除される生命保険の死亡保険金控除だけは確保するようにして下さい。
下記を参考にして下さい。
・不動産投資による節税はハイリスク
何とか建託とか建設関係の話に乗って不動産投資をするのはお勧めできません。
相続税対策として不動産投資で効果を上げるのは難しいと思ってください。何と言っても素人にはハイリスクです。
余程換金性の高い駅前物件でもない限り借金だけが残ります。資金を貸した銀行は、融資先が行き詰まれば担保を押さえるだけです。
この手の失敗が近郊や郊外で多くなっています。行き詰ってから相談に来られても、もはや打つ手がないのです。景気はいつまでも良いとは限りません。
◆ まとめ
安全な生命保険とそれを組み合わせた生前贈与で対策を行い、それを越えた分は割り切って相続税を払うことです。
その方が将来にわたりよほど安全確実、かつ安心です。
相続税の税制は、代替わりの度に何もしなければ財産が半分になる感じですから、江戸時代の年貢の五公五民のような厳しさがあります。
中小企業のように、キャッシュがなく自社株だけのような場合は、全く理不尽極まりない感じさえします。(事業承継税制として納税猶予制度ができましたが、適用要件が厳しいと感じています。)
ゆえに工夫を凝らし、グレーゾーンギリギリでも事業承継対策をして生き残りを図ります。
庶民としても相続税がかかりそうなときは、自分で調べるのも結構ですが、できるだけ早く相続税を得意とする専門家に相談することです。
依頼することによる多少の出費は覚悟して、後後困ることがないような万全の対策をできるだけ早く行うことが身を守ることになります。
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