法定相続情報証明制度のデメリットと意味ないケース。

法定相続情報証明制度のデメリットと意味ないケース。

相続が発生し遺産分割の話し合いがまとまると、相続人それぞれに相続財産の名義変更の手続きが発生します。金融機関での名義の書き換えや法務局での相続登記などを行う必要があります。

平成29年5月から法定相続情報証明制度がスタートしました。相続手続きの簡素化を目指した法定相続情報証明制度が、意外と知られていません。相続が発生しない限り使うことがない制度なので、知名度が低いようです。またよく考えてみるとケースによっては意味がないような、意外なデメリットがあります。

■相続登記に必要な書類と手順を、実際にやった素人がわかりやすく。

◆ 法定相続情報証明制度とは?

法定相続情報証明制度は、相続関係を証明する書類をそろえて被相続人の法定相続情報の一覧図を作成して法務局に提出すると、登記官が間違いないことを確認し、法定相続情報一覧図に法務局の認証をくれる制度です。

相続登記では「被相続人〇〇〇〇相関関係説明図」と言います。法定相続情報証明制度では「被相続人○○○〇法定相続情報」と言っています。それに登記官が認証をくれると「法定相続情報一覧図(法務局認証済み)」となります。

被相続人と相続人の関係を家系図のように図示したものです。言い方は違いますが、相関関係説明図に作成者の情報を入れ、登記官の認証文を入れるスペースを空けたものが法定相続情報一覧図です。基本的な内容は、同じものと考えてよいと思います。

■主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例(法務局)

法定相続情報証明制度は、手数料が無料です。(最初に戸籍を集める必要はありますので、その費用はかかります。)5年間有効ですから、何度でも証明書の再発行が可能です。複数枚発行もOKです。専門の登記官が戸籍を確認してくれますので、間違いがありません。郵送でも申請可能です。

■相続登記、自分でやる抜け漏れ想定外。

◆法定相続情報証明制度は相続登記の簡素化ではない。

相続登記に必要な書類を揃えて法務局にもっていけば、抜けや漏れがないか登記官が内容を精査します。その上で不足する書類や間違いの訂正を指示してくれます。素人がやると間違いの修正や不足書類などで、一度で済ますというわけにはいきません。

提出した登記簿などの一連の書類は、原本還付の手続きをしておけば返却されます。

【相続登記に必要な書類】

・登記申請書

・被相続人の相関関係説明図

・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍)謄本、改製原戸籍等

・被相続人の住民票の除票

・相続人全員の戸籍抄本

・遺産分割協議書(相続人が署名し実印にて捺印したもの)

・相続人の印鑑証明書

・相続人の住民票

・固定資産税評価証明書

※登記申請書を作成するためには、相続する不動産などの登記簿(全部事項証明書)をあげて正確な地番や地積を確認しておく必要があります。

原本が返却されれば、他の案件にも使えますが、法定相続情報一覧図(法務局一覧図)のほうがかさばらなくてよいというわけです。法務局内での審査に時間が必要ですので、原本還付に2週間程度は時間がかかります。法定相続情報証明制度も同じぐらい待たされますから、あまり変わりません。

無料で認証してくれるので文句を言う筋合いはありませんが、関係書類をすべて揃えて、「被相続人○○○〇法定相続情報」を作成しなくてはなりません。登記しようとする人の手間が減るわけでもなく、簡素化された訳でもありませんから、デメリットと言えるかもしれません。

放置していた相続登記をするだけなら、コピーを取っておけば別に原本還付も不要ですし、法定相続情報証明制度も使いみちがありません。

相続が発生し、所有している不動産が分散していて管轄する法務局が複数であったり、いくつかの金融機関などに手続きが必要であったりすれば、便利になるかもしれません。

■住民票の除票と戸籍附票の除票とは、わかりやすく。

◆ 法定相続情報証明制度は生命保険でも有効。

生命保険会社のサイトでも法定相続情報証明制度での対応が可能になったことをアナウンスしているところを見かけます。生命保険も相続財産になりますから相続で名義変更する場合は、同様の証明をもとめられます。

その法定相続情報一覧図の写しを発行してもらうと、戸籍の束の代わりに相続手続きの証明書として使うことができます。追加発行も可能なので便利な制度です。

素人では戸籍謄本を見ても、つながりがよくわからないところです。しかし法定相続情報証明制度では登記官が、戸籍の内容を確認してくれますから、漏れや抜けはなくなります。

これがあれば銀行や保険会社などの複数の金融機関で、相続の確認作業がスムーズになります。生命保険契約照会制度でも使えますが、すべての金融機関で対応しているとは限りませんので、これもデメリットの一つです。

■フツーに利用できない生命保険契約照会制度。

◆ 法定相続情報証明制度のデメリット。

デメリットと言うのは筋が違うのですが、一度は自分で戸籍をすべて集めて、法定相続情報一覧図を作成する必要があります。(申出書と根拠となる戸籍謄本を揃えて提出します。)一番手間がかかる部分は変わっていないので、期待ほどではないかもしれません。

また相続財産の種類が少なく、一度で済むならこの制度は無駄なことになります。手続きによっては、従来通りの戸籍が必要な金融機関もあります。

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◆ 法定相続情報証明制度のデメリット、まとめ。

法定相続情報一覧図の写しを利用できる手続は、相続登記の申請手続の他に、被相続人名義の預金の払戻し、相続税の申告、また被相続人死亡による未支給年金の手続きなど、様々なものがあります。

法定相続情報証明制度のもともとの狙いは、所有者不明土地の増加と言う社会問題を少しでも改善しようというものです。土地の名義変更には費用がかかり、期限や罰則が無いため、当面必要がなければ相続登記を先送りすることがあります。

しかし令和6年4月1日から相続登記が義務化され、猶予期間内に相続登記を済ませなくてはならなくなりました。しかし相続登記だけであれば、申請法務局が一か所と言うことが多いと思いますから、法定相続情報証明制度が役立つことはないと言えそうです。

■「法定相続情報証明制度」について(法務局)

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