相続に非協力的な相続人の譲れない本音と3つの落とし方。

相続に非協力的な相続人の譲れない本音と3つの落とし方。

相続税がかかる場合の相続では、10カ月以内に遺産分割協議をまとめなければ相続税の申告ができません。そのため相続人となった人は、たとえ非協力的でも、否が応でも相続に巻き込まれざるをえません。

売れない土地の相続などがからみ、遺産分割協議は進みません。遠方の疎遠になっている相続人は、非協力的になってしまいます。どうすれば相続人の納得が得られるのか、非協力的な相続人の譲れない本音と落とし方をまとめました。

■相続はもともと不公平、兄弟でもめるとあの世で親が涙。

◆ 田舎の不動産は相続したくない非協力的な相続人。

もともと売買もできない資産価値の低い土地は、相続しても固定資産税や管理費用がかかるだけで困りものです。これまでは慌てて相続登記をして、所有権移転をする必要もありませんでした。そうして何代にもわたり相続時に所有権移転登記がなされない結果、所有者不明土地問題につながりました。

その反省から2024年4月より、相続登記が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を行う義務があります。

相続時に価値があるのは、現金または換金性の高い資産です。換金性の低い田舎の土地屋敷は、相続人に敬遠されます。欲しくもない迷惑な負動産の相続登記を義務化されても、相続人は困ります。そして、様々な事情が絡み合い相互に不信が重なると、相続に非協力的な相続人が登場することになります。

■相続での争いは譲れない人間の本性をさらけ出す深い理由。

◆ 時間が経つと考えが変わる相続人。

相続税に申告期限があるため、相続に非協力的な相続人も巻き込んで遺産分割協議は強引に進んでいきます。この時点では、まだ親の意向や威光が残っています。非協力的な相続人にとっても、遺産分割協議は円滑とはいかないと思います。しかし相続税の期限までに妥結するしかありません。

ところが相続税がかからない場合は、申告期限の10カ月に縛られませんから遺産分割協議は無期限となります。当面のお金に困っていなければ、あえて一次相続では争族になりがちな遺産分割協議をせずに、二次相続に先送りするケースが多くあります。

先送りすると、厄介な問題が起こることがあります。本来、まとまる話がこじれるようになることが、往々にしておこります。それは相続人も人間ですから、時間がたつと経済状況や考え方が変わるからです。そこに相続登記の義務化の3年という期限が絡んできます。

相続税がかからないケースほどややこしい相続になるのは、この辺に原因があるように思います。二次相続までの間に金銭援助や親の介護などがあると、相続はさらにややこしくなります。

■相続争いはお金の奪い合い、生前から争族とは悲しい現実。

◆ 非協力的な相続人の胸の内。

いまや交通網の発達で、相続人は日本中に散らばっています。疎遠になっている相続人もいます。それぞれに忙しい日々の生活を抱えていると、相続のことを考えるのは後回しになりがちです。信用しないわけではないですが、よく理解できない遺産分割協議書に実印を押す気になれません。

納得できるよう説明がしてほしくても疎遠になっていると、連絡するのも問いただすのも億劫になります。多くの非協力的な相続人はそんなつもりがなくても消極的に対応するだけで誤解を受けてしまいがちです。

また相続人同士の仲が良いとも限りません。人には好き嫌いがあります。親族の仲にも気の合う相続人と、そうでない相続人がいます。距離と時間はますます疎遠感を深くし、お互いの疑心暗鬼が事態を深刻にします。

■老後の相続対策は相続税がかからなくても必要な理由。

◆ 相続で見えない生命保険と内緒の保険。

また重要なことですが、被相続人が契約していた生命保険は、相続財産の目録を作成しないと見えてきません。生命保険は、受取人固有の財産として判例が確定しています。そのため生命保険の受取人が誰になっているかは、遺産分割協議の対象にならないのです。しかし受取人になっていない相続人や受取金額が少ない相続人は、面白かろうはずがありません。

相続税を申告する必要がなければ、被相続人死亡で受取る死亡保険金は他の相続人に断りなく受取ることが可能です。生命保険に限らず、財産評価は見解の相違があり、相続に非協力的な相続人の疑念は、こういった不信感もあり尽きることがないです。

◆ 相続税がかからない二次相続の混とん。

一次相続で遺産分割協議を先送りすると、二次相続になったとき話がこじれやすくなります。

これは実感ですが、二次相続という状況は両親ともに他界し重石がなくなったなかで、残された兄弟姉妹で遺産分割協議をまとめなくてはなりません。

それぞれ別の生活基盤をもつ兄弟姉妹が合意するには、かなりハードルが高くなります。

兄弟は他人の始まりと言いますが、仲の良かった兄弟姉妹が相続の話からギクシャクし始めるのです。一次相続で登記していなかった不動産も固定資産税の支払いを引き継がなくてはなりません。改めて売れない負動産も、引き継ぐ相続人を決めなくてはなりません。

現金や生命保険、債券などの換金性の高い資産は相続したいですが、金食い虫になる不動産はご免被りたいわけです。そういう事情で、相続に非協力的な相続人にもそれなりの言い分と本音があります。

相続人がお互い欲しい財産はキャッシュや株式、生命保険契約です。相続税がかからないレベルだと一般的には、換金性の高い不動産はほとんどないと思います。

その結果、固定資産税だけが重荷になるような、それも売れない不動産の譲り合いになります。田舎相続の田畑の譲り合いとなると、登録免許税や固定資産税がかかる耕作放棄田や老朽化した田舎住宅を引き継ごうとはだれも思いません。そうなると二次相続はますます混とんとしてきます。

◆ 疎遠な相続人の扱い方。

日ごろから行き来がなく疎遠になっている相続人でも、相続を完結させるためにはパスしたり無視したりすることはできません。一人でも実印を押さない相続人がいれば、登記はもちろんのこと相続手続きを行うことはできません。

何度、連絡をしても無視したりする相続手続きに非協力的な相続人がいると、こればっかりは何とか納得してもらわないと手続きが滞ってしまいます。相続に非協力的な相続人の3つの落とし方を下記にまとめました。

1)相手の価値観で相続を考えてみる。

相続に非協力的な相続人の立場で考えてみることをおすすめします。公平な立場でジャッジしているつもりでも、立場が変われば価値観が変わります。

相手の価値観で考えることは難しいのですが、譲るところは譲らないと落としどころが見えてきません。こちらの進め方に納得できなかったり、財産目録や評価方法に疑問点があったりするものです。

2)相手の言い分をとことん聞く。

相続人同士の話し合いは、相続に関する限り最終的には金銭の取り分の話に行きつきます。いくら話し合っても容易に納得できるものではないのですが、それでもお互いの言い分を主張することから始めるしかありません。

疎遠な相手にはこちらの言い分は後回しにして、非協力的な相続人の言い分を本音で言うまでとことん聞くことが必要です。そうすることで折り合うヒントが見つかることがあります。

3)第三者に調停を依頼する。

相続人同士ではお互いの利害や感情、これまでの経緯が絡み合い話し合いはまとまりにくくなります。理路整然と冷静に話し合うことが、そもそもできない関係になってしまいます。

そういうときは費用がかかりますが、司法書士などの第三者に橋渡しをお願いすると非協力的な相続人も冷静に聞くことができます。相続税がかからなければ、税理士の出番はありません。弁護士は依頼者の代理人であり、相続人誰かの利害を優先する仕事ですから、本質的に調停には不向きです。

ですから相続登記も絡みますので、経験豊富な司法書士あたりが適任のように思います。直接の利害関係者ではなく、連絡役として手続きに必要な書類を作成する立場ですから、客観的な立場で説明することができます。

◆ 相続に非協力的な相続人、まとめ。

今回の記事は田舎の相続登記を前提にして、経験をもとに考察しています。

相続登記が進まないために、所有者不明土地が増加し社会問題になっています。それを改善し相続登記をしやすくするために、相続登記では登録免許税に関して時限立法ですが免税措置が適用されます。

引用:

令和7年度の税制改正により、免税措置の適用期限が令和9年(2027年)3月31日までに延長されるとともに、次の(2)の免税措置の適用対象が全国の土地に拡充され、不動産の価額が100万円以下の土地であれば、この免税措置が適用されることになりました。

■相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局)

相続というのは財産分割ですが、突き詰めると親の資産の山分けです。資産とは端的にお金ですから、本音の奪い合いになるのも生活に追われる相続人としては仕方がないところです。非協力的な相続人の本音を見てきたところですが、本当のところは本音をぶつけ合う前に、お互いが譲り合い、折り合うことが賢明と言えるでしょう。

本音を言い合ってしまうと、もはや人間関係の修復が難しくなります。もともと財産は、不動産と現金が少々ということが多いと思います。

現金を減らしてまで弁護士や税理士などの調整役を依頼するほどでもない相続では、譲り合い落としどころを見つける方が、取り分が大きくなります。またもめ事を他人に知られたくない、内輪で治めたいという日本人独特の恥の文化が良い方に作用するかもしれません。

遺産分割調停や審判にすすむと、亀裂は決定的になります。それを望むわけではないのなら、もつれた感情の糸を丁寧に解きほぐし、冷静に忍耐強く話し合いで収める努力をすべきところです。

親の借金は相続放棄しても受け取れる生命保険金の有り難さ。

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「相続に非協力的な相続人の譲れない本音と3つの落とし方。」への9件のフィードバック

    1. foo@bar.example.com

      hokenfpです。
      >「嫌顔でも」ではなく、「否が応でも」ですよ。
      ご指摘ありがとうございます。
      修正しました。

      今後ともよろしくお願いいたします。

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