教育資金の一括贈与の最大のデメリットと改正点をわかりやすく。

教育資金の一括贈与が非課税になる制度が、令和8年(2026年)3月31日まで再延長されることになりました。しかし一部これまでとは異なるルールが令和3年(2021年)から追加され、厳格化されたためデメリットが目立つようになりました。
相続税の節税に知恵を絞っている資産家には、一見魅力的に見えます。しかしよく見ると子や孫に大金を贈与するわけです。家族内で生活のリズムが狂いだすデメリットもかなりありそうです。
デメリットを中心に、教育資金の一括贈与の是非についてまとめました。
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◆ 孫への生前贈与の最大のデメリットは、親の生活の緩みと綻び。

むやみに生前贈与することは、決して子や孫のためにはなりません。生前贈与も相続財産も棚ぼたの不労所得です。大枚のお金があれば、汗水たらして家族のために働く気がなくなるのは自然の成り行きというものです。
教育資金の一括贈与を孫に行うと、喜ぶのは孫ではなく親であるわが子です。子の教育費は、親の責任です。大学まで行かせるなら、半端でないお金がかかります。それを教育資金の一括贈与で、孫の祖父母が負担してくれるのです。その分親の生活に経済的なゆとりが出ます。
宝くじに当選したような、想定外の不労所得が入ってくると、いかにまじめで意志の固い方でも微妙に辛抱がきかなくなるのです。本人が自覚することはあまりないと思いますが、晩酌の酒も発泡酒からビールになり、上撰から純米大吟醸になります。
◆ 教育資金の一括贈与は、子のためにならない理由。

教育資金の一括贈与も、保険料の暦年贈与の保険料とよく似ています。手間多くして、贈与した孫には喜ばれないのです。自由に使えるキャッシュがないので無駄遣いができないという点では、大金をもらっているにも関わらず感謝されにくいところがあります。
子や孫からは「こんなややこしいことせずに普通にくれたらええやん!?」という声が聞こえてきそうです。
実際のところは、孫に祖父母が教育資金の一括贈与をしてくれたら、両親は教育費の負担がなくなります。親は自分がもらったのと同じになります。孫二人の教育費で3,000万円になりますから、金回りがよくなります。自動運転の最新型テスラの新車でも買いたくなります。
これははっきり言って、子のためにはなりません。宮仕えのサラリーマンは、とっととやめて自由業に鞍替えしたい気分になります。
・金回りがよくなった親の事例。
資産家が娘の嫁ぎ先の外孫3名に教育資金の一括贈与をして、節税をはかった例があります。孫は何も知らず喜びもせず、その代わりその娘婿が焼き肉屋の店長風情でBMWを買ったという話があります。その娘婿は自分の給料の半分くらいを、長割り終身保険に入っているという家族思いの無計画です。教育資金の一括贈与はもらった孫やひ孫よりも、その親に影響が大きいようです。
教育資金の一括贈与のデメリットで一番気を付けなくてはいけないことは、孫ではなく子の生活に緩みや綻びを生む可能性があるということです。お金というものはたくさんあればよいというものではなく、必要なだけ巡り回ってくるというのがよいのです。あくまでお金はこの世だけに通用する方便です。しかしこの方便が、人の気持ちを変えるという問題を起こします。
◆ 教育資金の一括贈与とは、相続財産を一気に減らす効果。

教育資金の一括贈与は、名目上は個人資産の流れを良くして、消費を活性化することが目的です。制度自体は一般の国民にはとくにメリットもなく、縁が薄い仕組みです。言ってみれば、相続税が巨額になる資産家や富裕層向けの税制優遇制度です。
資産がたっぷりあって、相続税が山盛りかかるような財産家で、お孫さんが5人も6人もいらっしゃるような場合に、教育資金の一括贈与をおすすめすることがあります。
たとえば、お孫さんが5人なら7,500万、暦年贈与を並行して10年後には5,500万を非課税で贈与することができます。両方合わせてなんと13,000万も相続財産を減らすことができるわけですから、見逃す手はないと言えるかもしれません。(注:暦年贈与は相続発生前3年持ち戻し期間が7年に延長)
「教育資金の一括贈与で1,500万まで非課税に!」と言えば、聞こえはとてもよいのです。でもそれほどうまく相続税の節税にならない場合があります。
そもそも教育資金の贈与は、親からでも祖父母からでも扶養の範囲です。贈与とはみなされませんから、贈与税もかかりません。教育資金の一括贈与は、あくまでもまとめて贈与し、相続財産を一気に減らしたいときに意味がある仕組みです。
◆ 教育資金の一括贈与、改正点のデメリット2つ。

教育資金の一括贈与は、タイミングよくうまく使えると相続税の節税になる場合があります。しかし令和2年度の税制改正(令和3年4月1日施行)と適用期限の延長により、メリットをそぎ落とし、形だけを残した抜け殻のような制度になりました。
改正点:デメリット1
「一括贈与の残額持ち戻しが3年から無期限に。」
受贈者が23歳未満、在学中、教育訓練中である場合を除き、2019年度の改正より教育資金の一括贈与の残額が3年持ち戻しの対象でしたが、さらに厳しい条件が課されました。
贈与者が死亡した時点で条件を満たさない場合は、何年前の贈与であっても相続財産に持ち戻しとなりました。条件に当てはまらなければ、普通に贈与しているより厳しい扱いになっています。
※相続発生前3年以内の生前贈与については、相続財産として課税対象になります。その後、2023年の税制改正でこの持ち戻し期間(加算期間)7年に延長されました。
改正点:デメリット2
「孫の相続税が2割増しに。」
孫やひ孫への代襲相続では、相続税の2割加算というルールがあります。教育資金の一括贈与では、残額が相続税の対象となっても2割加算が免除されるという特典がありました。ところがこの特典がなくなりました。孫やひ孫への教育資金の一括贈与にかかる残額は、相続税2割加算の対象となりました。
■生前贈与の注意点とデメリット、相続税対策の失敗と老後の後悔。
◆ 使い残しは相続税がかからなくても贈与税という超矛盾。

教育資金の一括贈与は、改正により信託機関に預入した1,500万を、孫が
30歳になるまでに教育費として使いきらないと、残額に贈与税が課税されます。
医学系などのように学費が高い場合は、使い切るケースもあるかもしれません。国公立の大学や私立の文系では、まず使い切れないと思います。適用条件が教育費に厳しく限定されていますから、意外に関連の領収書を集めるのは難しいと思います。
贈与し過ぎで財産が減少し相続税がかからなくなっても、教育資金の一括贈与の残額に対しては贈与税が課税されるという、超がつく矛盾があります。
◆ 教育資金の一括贈与が節税にならないとき。

教育資金の一括贈与は、贈与者である祖父母が長生きすると、節税としての意味がなくなる場合があります。途中で相続が発生しないと、せっかく一気に多額を贈与した節税効果がないことになります。先行き短い資産家が、相続財産を一気に減らすテクニックとして教育資金の一括贈与がありました。
孫が社会人になるまで長生きされる予定であれば、教育資金の一括贈与などせずに、その都度養育費の一環として必要なだけあげれば何の問題も税金もかかりません。もちろん金融機関に対して、ややこしい手続きや領収書の細工をしなくてもよくなります。
暦年贈与でも、そもそも現金化して渡しておけば、何に使ったか痕跡は残りません。おすすめしているわけではありませんが、ことさらに教育資金であることを証明するための領収書集めは手間なだけです。扶養の範囲として、現金で渡しておけばよいのです。
その現金の内で、教育資金に使われるものもあるでしょう。孫ではなく親の生活費やローン返済に回ることもあると思います。現金には名前が書いてないし、色もついていません。車を購入する頭金にしても、区別ができるわけではありません。
養育費として渡す教育費に領収書は不要ですから、極端なことをしなければ、どこまでが贈与で、どこからが教育費かは、明確に判別できるものではありません。
◆ 後戻りできない教育資金の一括贈与の怖さ。

もう一つのデメリットについて、教育資金の一括贈与は、安易に信託契約しない方がよい理由があります。なぜかと言えば、この制度は不可逆的です。要するに後戻りでない仕組みです。
節税するつもりが、突発的な事態が発生したり資産が目減りして相続税がかからなくなったりすることもあり得ます。また、老後の資金が不足するような可能性も考えておかなくてはなりません。
人生何があるかわかりません。家ごと土石流に流されることもあれば、経営する会社が左前になることもあります。株式の暴落で巨額の損失を被ることもありえます。おどかすわけではありませんが、慌てる乞食はもらいが少ない、などと言います。
後戻りできない教育資金の一括贈与が、必ずしもベストの選択と考えなくてもよいかもしれません。
◆ 教育資金の一括贈与の改正とデメリット、まとめ。

教育資金の一括贈与は、直系の孫やひ孫の教育費として1,500万円を非課税で一気に贈与できる制度です。直系であれば、外孫にも適用できます。
その結果、孫の親であるわが子の暮らしぶりが影響を受けます。教育資金を贈与されれば、その分家計には経済的余裕ができます。教育資金の一括贈与は、実質的には孫の親がもらったのと同じことになります。
暮らしぶりが変わり、家計に緩みが出ます。家計の助けに出ていたパートもやめるかもしれません。車も買い替えるでしょう。しかしそれは宝くじ当選のようなことで、自力でない収入によるステイタスになります。
宝くじ当選で人生が変わる人は多いでしょう。1,500万円は、サラリーマンにとって大金です。それが教育資金の一括贈与がもたらす、最大のデメリットではないかと思います。
・使い切れない教育資金。
一方のデメリットは、今回の教育資金の一括贈与に関する改正で条件が厳しくなったことがあります。それは受贈者側が条件を満たすことができない場合、30歳までに贈与された1,500万を教育費の名目で使い切るしかないことになります。教育費に限定されると、孫の進路や状況によっては使い切ることがむつかしいのではないかと思います。
残額に課せられる贈与税や相続発生後に課せられる相続税が、あとあと問題になる可能性があります。実感として、養育費や教育資金はその都度必要なだけ渡してやるのが、シンプルで手間がかかりません。また家計への影響も少なく、後の憂いもなくなるように思います。

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