事業承継のまさかと後継者の力量不足が会社を危うくする。
70歳以上の高齢社長の企業の48.17%が減収というデータがありますが、これは高齢だから業績が悪いのではなく、業績が悪いから後継者がいないと言えそうです。
業績の良い会社でも、やる気の後継者を得ることは難しいという実態があります。中小企業の社長業は今どきの若者には人気のない職種のようです。
人はいつかは引退し死亡しますが、会社は後継者がいる限り、そして経営が安定している限り死ぬことはありません。
そのためには適切な事業承継対策が早くから行われなければなりません。日々泥縄の経営であれば事業承継対策とか後継ぎなどということは、ついつい後回しになります。
ところが人間は生身です。病気や事故など思いがけない災難が降りかかることもあります。経営者の「まさか」は会社の「まさか」、突き詰めるとそれは事業承継の「まさか」と言えると思います。事業承継の一つとして後継者を育てることがありますが、一方では経営を支える人生の「まさか」にも保険などでしっかりヘッジしておく必要があります。
◆ 事業承継のまさかが経営を危うくする。
人生にはまさかがありますが、事業承継にもまさかがあります。順調だと思っていても、いかに頑健な経営者といえども様々な問題が降りかかるのが人生です。それを細心の注意でクリアしていくことが生きているということです。
たとえばのまさかでは、経営者の体調が急変するなど、大病ということもあります。身体は丈夫でも自社株評価が高くなりすぎ多額の相続税が発生するというような経済的なまさかもあります。また後継者として育成してきた息子が、自分のやりたい道に進む決断をしたというような、事業承継にとっては青天の霹靂のような事態も起こりえます。
その想定外の「まさか」にいかに用心深く準備して、事業承継を成功に導くかも経営者の手腕と言えると思います。
◆ 社員が陰口をたたく若輩後継者の力量不足、人望は後からついてくる。
すべての後継者が優秀で人望もあり、適任ということはそもそもあり得ません。適任でなくても人望がなくても、経営者にならなければならないこともあります。
後継者は、当然若いですから経験も知識も未熟です。若輩後継者はどうしても社員から力量不足と見られがちです。それはそれで自然なことだと言えると思います。経験を積んで、失敗をして、痛い目にあって経営者としての素養は蓄積されます。
最初からうまくいく経営者は、後が怖いと言えそうです。経営者は小狡く、用心深く、リスクに敏感でないとつとまりません。社員のいうことを鵜呑みにせず、自己責任で情報のウラを取るぐらいの猜疑心が求められるのです。
そういう経験を積み重ねて、力量不足を補い、なめられないようになると人望は後からついてくるとしたものです。吹けば飛ぶような中小企業のオーナー経営者に求められるのは、カリスマ性と徹底した用心深さです。
◆ 後継者は後継者であるが自らベンチャーであるべし、是非は経営運次第。
後継者は、先代が歩いてきた道とは違う道を歩もうと必死でもがきます。すでにレールができている道を外れてベンチャー的にチャレンジすると、それほど簡単に軌道にのるわけがありません。
しかし、後継者に経営運があれば道が開けることもあります。経営とは運次第なのです。いくら優れた事業アイデアでも時代の潮目にのれなければ、あるいは時期尚早であれば、目に見える成果を上げることはできません。不採算事業のオンパレードになります。それは本人の努力というより、持ち合わせた運に左右されるのです。
そんなはずはない、自分の実力でのし上がったのだとお考えのオーナー経営者もいらっしゃると思いますが、そう考えるのも運の内なのです。
◆ 中小企業の事業承継M&Aは失敗が5割以上、リスク覚悟の最終選択肢。
後継者がどうしても見つからない場合は、M&Aは確かに合理的選択肢ですが、失敗すると廃業への道が待っています。中小企業で後継者がなく事業承継M&Aを考える経営者が増加していることは、間違いないところでしょう。ただ、事業承継M&Aであっても失敗例は数え切れません。一説には半分以上が失敗の道をたどるそうです。決して楽な道のりではないわけです。
M&Aでは、知らない会社同士が、腹の内を隠してくっついていくわけですからシナジー効果を言う前に相互不信が渦巻くのが普通です。M&Aに進む前にまず力量不足の後継者をやる気にさせ、じっくりウイスキーの熟成のように育成します。そして保険契約などを駆使して、事業承継のまさかをカバーします。
事業承継M&Aは高齢化が進む中小企業経営者の事業継続における切り札的な手法ですが、リスク覚悟の最終選択肢と言えそうです。
◆ 事業承継のまさかと後継者の力量不足、まとめ。
事業承継はそのつもりであらゆる手を尽くして早くから準備しても予定通りにはいきません。後継者もなかなか腹をくくりませんし、力量にも不満が残ります。税制や法制度が変わり、準備してきたことが無駄になることもあります。
それでも、早くから事業承継対策に取り組んでいると、次の対応もやりやすくなります。
書き漏らしましたが、事業承継のまさかで怖いのは認知症です。これは本当にやっかいなことになります。認知症になった場合に議決権が行使できないことの知識について、なんと44.7%の経営者が「認識していない」と回答しているというデータもあります。そうならないように、事業承継対策では相続対策を含めて後継者への実質的な権限移譲を早期に進めるべきなのです。
事業承継にはまさかがあります。後継者には任せて、失敗させて、力量を蓄積させることです。失敗から学ぶことが人を大きく成長させます。
「事業承継のまさかと後継者の力量不足が会社を危うくする。」への1件のフィードバック