中小企業の事業承継がピンチ:高齢化と後継者不在で廃業・清算の苦境。
日本の中小企業が直面している深刻な課題の一つが、事業承継の困難さです。高齢化社会の中で後継者が不在となり、企業は清算・廃業かM&Aかという厳しい選択を迫られています。
中小企業が直面する事業承継の危機に焦点を当て、後継者不在がもたらす中小企業の事業承継の深刻な状況に迫ります。高齢化が進むなか、経営者の後継者が見つからないという課題は、事業の存続を脅かす重要な要因となっています。
■経営権移譲の難しさ、アドバイスと口出しの違いがわからない経営者。
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◆ 事業承継の停滞と社長の高齢化がピンチを招く。
日本の中小企業の社長の現状は高齢化がすすみ、社会問題化しています。高齢者とは、65歳以上の方を指すそうです。総務省のデータによれば2020年は3617万人です。これは総人口の2割を超え28.7%となり、過去最高となりました。
高齢化した社長が多くなっているにも関わらず、事業承継が進まないのは、高齢な社長がいつまでも居座っているからではありません。後継者が不在であったり、事業承継対策が遅れていたりすることが根本の原因にあります。
その結果、日本の社長さんの平均年齢の上昇が続いています。その中で後継者不在に悩む企業は、全体の65%と危機的な状況になっています。
このままいけば、日本の中小企業は半減することになりかねません。日本全体で見れば、地方切り捨てであり、中小企業に依存する庶民の生活を、脅かすことに他ならないと言えると思います。
■事業承継のまさかと後継者の力量不足が会社を揺るがすリスク。
◆ 中小企業の廃業は深刻な社会問題。
日本の中小企業は全企業の99%に及びます。そこに雇用されている従業員数は、労働人口の70%といいますから、中小企業や個人事業者の存続は、社会問題になるわけです。
データによれば、団塊世代の経営者の大量引退時代を前にして、なんと法人・個人合わせて、半分の経営者が廃業すると答えているそうです。
廃業に至る理由は様々ですが、後継者不在という深刻な問題が、廃業理由の3割に上ります。
■経営者の運が会社の運命を決め、社員とその家族の運命を左右する。
◆ 高齢化と後継者不在の背景。
日本の中小企業は、多くが家族経営や創業者主導で成り立っています。しかし、高齢の経営者にとって、後継者に経営を引き継ぐことが難しくなりつつある現状があります。
後継者候補が家族や親しい関係者に限られる中、後継者候補が経営に興味を持たない、または他の職業や生活選択を優先するケースが増加しています。このため、経営者が高齢であることが、後継者不在の課題をより深刻化させています。
◆ 中小企業では、息子はいても後継者はいないという摩訶不思議。
残念なケースでは、会社の業績は悪くなく、子供がいるのに継ぐ意思がないというケースです。継ぐ意思がある子がいても継がせられないというのも困りものですが、継ぐべき能力があっても、自分の能力を生かした道で生計を立てたいというケースも見かけます。
今どき誰もが、社長になりたいとは思っていないということがあります。重い責任を背負って経営を引き継ぐには、それなりの覚悟が必要です。
うまく経営できてあたりまえ、方向性を誤って経営を左前にしようものなら全責任を背負って途方に暮れなければならないのです。穏やかな人生を望む方には、まさに試練の選択になります。できれば平和なサラリーマンが理想の人生ということも、価値観としては当然あると思います。
摩訶不思議と書いたのは、息子がいて、継ぐ気もあるのに任せられないというケースです。すべての息子さんが後継者に向いているわけではないという事実は、事業承継では誠に悩ましい問題になります。
息子に継がせるか、それ以外の選択肢を模索するか、自社株をどう動かすか。こういう事業承継は、さらに苦慮を伴う判断を迫られることになります。
◆ 事業承継税制の整備が進んでも、後継者不在では使いようがない。
事業承継を円滑に進めるために、事業承継税制が整備されてきました。納税猶予制度による事業承継にかかる相続税は、猶予とは言いますが、後継者の代で考えれば実質免除と同じです。
事業承継税制が整備されても、自社株を誰に引き継ぐかが問題になります。後継者がいなければ、実際なすすべがありません。
後継者不在の中小企業は多数に上りますが、後継者がいなければ育てるしかありません。それができなかったり失敗したりすると、その先は廃業・清算かM&Aかということになります。
事業承継とは一方では税金との戦いであり、もう一方では後継者の選定と育成であるということです。後継者は親族である必要はないのです。選択肢を広く構えて人選を急ぐことが肝要です。
◆ 中小企業切り捨ての国策と事業承継支援の矛盾。
多くの中小企業に生活を依存する、大多数の裕福ではない勤め人は、中小企業が切り捨てられたからといって大企業に転職できるわけではありません。貧しいながらも、額に汗して真面目に働く人たちがいます。国が目ざしている生産性の向上が、直ちに国民皆の幸福につながるとは言えないと言うことです。
後継者が、意欲をもって中小企業の経営に取り組めるような環境整備が必要なのです。補助金や助成金などのバラマキ政策だけでなく、事業承継に前向きになれる市場環境、地方復権につながる施策を立案すべきときがきています。
◆ 行き詰まる事業承継、廃業・清算かM&A。
後継者不在が続く場合、事業の行方は極めて厳しいものとなります。一つの選択肢は、事業の廃業・清算です。企業としての活動を停止し、従業員を解雇することを含みます。資産を整理し債務を精算することで、経営者が安心して引退できる一方で、地域経済や雇用に与える影響は大きいです。
もう一つの選択肢はM&Aであり、どちらの選択肢も地域社会や従業員、取引先といった関係者に多大な影響を及ぼす可能性があります。
(M&A(エムアンドエー)とは「Mergers and Acquisitions」(合併と買収)の略で、資本の移動を伴う企業の合併と買収を意味します。)
◆ 解決策と支援制度の模索。
後継者不在の事業承継の問題を解決するためには、様々な角度からのアプローチが求められます。地域社会や業界全体での情報共有やネットワーキングの促進、若手経営者の育成プログラムの強化などが考えられます。
また、国や地方自治体が提供する支援制度の充実も重要です。経営者の相談窓口の整備や資金援助、事業引継ぎのための助言などが、後継者不在の企業にとって救済策となり得ます。
後継者不在が中小企業における事業承継を脅かすなか、包括的で持続可能な解決策の模索が求められます。この問題への理解と対策が、地域経済の安定と中小企業の持続可能な発展に貢献することでしょう。
◆ 後継者がいない事業承継の選択肢、M&Aのハードルまとめ。
事業承継において後継者が不在であれば、企業は存続の危機に陥ります。引き継ぐことに失敗すれば廃業・清算かあるいはM&Aという、社員にとっては厳しい幕切れが待っています。
後継者が不在という状況は、企業にとって大きなピンチです。後継者を人選し育成するか、M&Aを検討することを始めなくてはなりません。
選択肢として考えられる手法。
・社員の中から後継者候補を選抜
・外部から経営者候補の招へい
・M&A事業譲渡の検討
・廃業・清算
後継者がいない中小企業では、会社を存続させるために事業承継の選択肢としてM&Aを検討することもあります。
後継者がいないからと廃業すると、社員や取引先にも迷惑が及びます。できることなら誰かに引き継いで会社を存続させたいと思うのは、経営者の自然な気持ちだと思います。
ここにきて導入が決まっているM&A税制も事業買収の大きな動機になります。M&Aの仲介機関も多岐にわたり活発に活動しています。M&Aはひとつのチャンスではありますが、後継者の選定に行き詰った場合の次善の手段です。後継者がいなければ、まず後継者を育てる努力が必要でしょう。
・後継者の育成と経営権の移譲をスムーズに。
そうなる前に、事業承継の対策を行うことが大事です。そして後継者が決まれば、高望みせずさっさと潔く全面的に引退することです。
経営者から見れば後継者は誰しも未熟です。欲を言えばきりがありません。どこかのアンケートのように、後継者に望むものとして「事業経営への高い意欲・社員に信用される優れた人間性・事業承継に応じる強い意志・業界に精通していること・業界内の交友関係に長けていること」があります。
そんなものは、最初から後継者に身についているはずがありません。現経営者でもいくつか欠けているとしたものです。
後継者を育成するには時間がかかります。そのことを念頭に事業承継に取り掛かることが大事です。事業を継続することは、従業員の雇用の維持や企業としての社会的責任の継続でもあります。
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