役員退職金の損金限度は平均功績倍率のなんと1.5倍。

役員退職金の損金限度は平均功績倍率のなんと1.5倍

CIMG3054役員退職金は長年、経営者を務めていると巨額になることがあります。

中小企業の経営者としては事業承継のめどが立ち、後継者の相続税の納税原資が確保できていれば別段役員退職金をもらう必要もありません。

中小企業のオーナー経営者にしてみれば会社は自分と一心同体ですから自分がこれまで稼いだ資金は、会社に残しても自分が退職金として受け取っても、同じことという感覚があります。

跡を継ぐ後継者にしてみれば、会社に資金を残してもらった方が経営にとって都合がよいので、特に生活に困るわけでもないなら、当人がいらないという役員退職金を無理に支払うこともありません。

◆ 税務署が言う平均功績倍率をOB税理士に聞くと。

税務署の役員退職金の支給限度額の考え方は、直接OB税理士に確認すると一般に言われている計算の考え方と少し違います。

功績倍率という考え方はありますが、功労金加算は功績倍率に込みとして回答してきます。例えば最終報酬月額×役員在任年数×3.5倍ならそれだけです。

その功績倍率が何倍かということを税務署側は複数の同業類似法人から抽出します。

◆ 否認された部分にかかる税金が甚大。

税務署と話が食い違い、更正処分ともなると全く痛いというかつまらない税金が見解の相違で発生します。

過大であるとして否認された部分は退職金として支給することはできますが、費用として損金で落とせないことになります。有税で役員退職金を支給することになります。

会社がいくら役員退職金を支払うかは全く自由です。

完全に退職していればご承知のように退職所得は勤続年数による控除があり、かつ半分に課税され、なおかつ分離課税という有利な税制になっているのでこれを使わない手はありません。

でも実質的に引退しておらず、役員退職金そのものを否認されると、法人として損金に算入できないばかりか、退職所得としての税制が使えず、個人所得において退職金と認められないので通常の税率で所得税が課税されます。

役員退職金を否認されると税的にはかなり痛いダブルパンチをこうむります。

一番困るのは、役員退職金を否認されると金額が大きくなりますから、優良申告法人取り消しなどに発展します。これはもっと痛いことになります。

役員退職金を否認された場合の課税のポイントは下記です。

・否認されると、退職金として費用にならない。
・否認されると、退職所得税ではなく普通の所得税になる。
・退職金として認められても過大な部分は損金に落とせない。

◆ 直近の判例は平均功績倍率の1.5倍

あちこちのサイトでいくつか紹介されていますが、H29年10月23日付一般財団法人大蔵財務協会が発行する「週刊税のしるべ」によると、税務署側が言う同業類似法人から算出した功績倍率の1.5倍まで役員退職金として損金算入可能という東京地裁の判例を掲載しています。

まだ東京地裁の判断ですから上訴でどういう判断が示されるかわかりませんが、正直ドキッとする判例です。

税務署としては同業類似法人から算出した功績倍率が役員退職金としての適正額であり、それを越える部分は不当に高額なので損金算入を認めないという立場です。

それを判決は頭から否定し「硬直的な考え」とまで断定しています。要するに許容範囲は
功績倍率の1.5倍までは容認すべきだという判断です。

大盤振る舞いというか豪気というか、まともに真に受けることができない判決でもあります。

税務署が平均功績倍率3.26倍を限度だと言っているのに裁判所は4.89倍までよいというのです。

事例では最終報酬月額が240万、役員在任期間が27年で死亡退職金という点を考慮しても、その金額的乖離は2億1124万が3億1687万まで増加しますから、なんと1億563万も多くなります。

これから退職慰労金を受給する予定の社長さんには、うれしいような怖いような話です。

◆ 役員退職金の適正金額はいくらか。

これはネットで検索したり他社のまねをして役員退職金規定を作成し、功績倍率を都合の
よいように高めに置き換えて、功労金加算を3割などと言っても税務署には通用しません。

役員在任中の最高報酬月額を基準とすると書いてあっても、OB税理士がそれを否定するケースにも出会いましたから、世間一般の感覚と課税当局の認識には確実にズレがあります。

本当の適正額は税務署が容認する範囲での金額なのです。

役員退職金がたくさんほしいなら在任中に計画的に役員報酬を増額していくことです。
駆け込み増額では通用しませんので、せめて3年は支給実績を作って下さい。

役員退職金の適正額は税務署が認める金額、ここをはずして勝手解釈して争っても、
裁判でもしない限り勝ち目はないのです。もちろん大枚払って裁判をしても勝て
るとは限りません。

最近の判例からすれば、一歩踏み込みたくなる気持ちもわかりますが、税務署に目を付けられないことの方が長い目で見て得策であることは間違いありません。

◆ 役員退職金を否認されない極意。

役員退職金の損金算入が否認されないためにはいくつかのポイントがあります。過大でない範囲に収めたとしても、それだけでは安心できません。

課税当局はまず形式要件を確認してきます。役員退職金の支給に至る手順や取締役会、株主総会の承認と議事録が揃っていることが必須になります。

もちろん根拠となる役員退職金支給規定を整備しておくことは大前提です。

・役員退職金規程の整備
・取締役会、株主総会の承認と議事録
・退職金支給限度額の税務相談
・完全引退

また、OB税理士さんなどにお願いして、税務署に事前相談に行きお墨付きをもらっておくことです。相談に行った記録は確実に税務署に残りますので安心できます。

ここまでなら大丈夫、ここからこの辺まではちょっと厳しいとか、感触が分かります。

中小企業のオーナーで一番難しいのが「完全引退」です。これは後継者に悪影響を与えるだけでなく税務署にも退職金を否認してくださいと言わんばかりになります。

ここをあいまいにして毎日出社し経営に口出ししていると、不当に高額な部分だけでなく、役員退職金そのものを否認されるという大きなリスクがあります。

くれぐれもご注意を、と申し上げておきます。

引退すれば、することがなくなるというなら引退すると言わないことです。

そして堂々と死亡退職金にすると公言することです。その上で徐々に体力と記録にあわせて距離を置くようにします。

引退するようなフェイントほど後継者の期待を裏切るものはありません。

これは日々感じる実感ですから、本気の話です。

◆ まとめ

役員退職金を受け取るなら、課税当局のご意向に沿うことが安全な道です。

規定や議事録を整備し、税務署に事前相談をし、本当に引退することです。

それが嫌なら引退などと口にしないことです。体力と気力の限界まで代表権を離さなければ、それはそれで一つの生き方です。弊害は出るでしょうがそれは自己責任というものです。

引退をしないというなら中小企業のオーナーにとれば役員退職金を受け取らないという選択肢も十分あり得ます。

会社に資金が残れば、後継者が次なる投資を考えることが出来、単なる資金的な安心感だけでなく、事業戦略の幅が広がることは間違いないのですから。

退職金をもらって引退するか、退職金をもらわず居座るか、事業承継という点では考えどころであります。

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