保険の払済は保険会社によりバラバラ、問合せた驚きの結果。

保険の払済は保険会社によりバラバラ、問合せた驚きの結果。

生命保険の払済が一般的ではない実態を報告します。保険会社各社に問合せましたが、その回答はまったく想定外でした。

払済という保険で言えば当たり前のテクニックが、実は各社対応がバラバラで、まるで一般的ではなかったのです。これでは、払済を予定していた保険の処理に困りそうです。

生命保険の勉強を始めると、払済保険と延長保険は保険の基本として学びます。国内生保のある会社では、払済(はらいずみ)は終身保険としたものです。

でも買う側でいくつかの保険会社と付き合うと、必ずしも払済保険に変更できるわけでもありません。また払済後に終身保険に変更できるという仕組みでないことも珍しくありません。

もともとは何かの事情で保険料が払えなくなったり、保険料を払い続ける理由がなくなったりしたときは解約するのが一般的です。しかしそれではもったいないときや、まだ一定の保障を残しておきたいときがあります。その時点の責任準備金で、終身保険や延長定期保険に継続して加入するのが「払済」「延長」です。

■法人保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

◆ カスタマーサポートの右往左往。

それぞれのサポートに、辛気臭いフリーダイヤルの応答に耐えながら電話して、事例として確認した結果です。

A. 国内生保のD社は99歳満了の長期平準定期保険でしたが、払済も延長も不可との回答です。では何ができるかというと保険料の減額継続は可能だとの説明です。そんなことはどこでも当たり前のことですから、保険料が払えなくなったら解約しかないということになります。

何とも融通の利かない話ですが、約款に細かい字で記載があるのでしょうね。何のかんの言ってみてもらちが明かないことは明白なので、解約に向かって進むほかありません。

普通に契約するとき、この保険は払済にできるかどうかなんて確認しません。何年法人保険やっいても、特殊な事情がない限り確かめることはありませんからこういう事態になります。

B. 国内生保のM生命は平成6年の定額終身保険です。あと少し払込期間が残っています。しかし払済にしてからでないと名義変更した先で保険料の支払いが発生します。名義変更するなら、ここは払済にするのが手順です。

サポートに電話すると、あっさり払済にできますとの回答です。元の保険が終身保険ですから払済にするのはむしろ簡単な話でした。

しかし、では払済の請求書を送ってくれというとできないとの返事です。何やねんそれ!という感じです。払済は支部の担当が窓口になりますとの説明です。何のためのサポート窓口かわからない返事です。

長年支部の担当者なる人物とは付き合いはありません。時々資料が届いていた程度です。担当を呼べばうっとうしいからサポートに電話しているというのに、支部担当につなごうとします。

もうええわ!といって電話を切っておいたら、M生命の支部長なる人物から電話がありました。とりあえず用事はないので、と言っておきましたが顧客の事情は無視されました。

C. 先ごろアルファベット3文字の社名が出まわったP社ですが、ここは100歳満了の平準定期保険です。サポートに電話してもよくわからないので営業職員を呼びました。

営業職員が言うことには払済終身保険にはできないが、払済定期にはできると言います。延長保険でもなくあまり聞いたことのない仕組みです。

いわく保険料の支払いはストップし100歳までの保険期間はそのままにします。その結果、保険金額がその分減額されるとの説明です。

そう言えば逓増定期の名義変更で、終身保険でなく、払済の定期保険に変わって驚いたことがありましたが、そのパターンです。では経理処理はどうなるのでしょう。一応洗い替えは必要でしょうが元が半損の定期保険です。

さて、さすがに百戦錬磨のベテラン営業も即答できずに調べて回答しますとのことでした。15年ほど昔の予定利率の良い時代の保険ですから減額後の保険金もそこそこありますから、まずまずの話です。

名義変更後そのまま持ち続けても被保険者が100歳までの長寿はなかろうと踏んで、相続対策に充てられそうです。注意すべきは、定期保険ですから100歳を越えれば、保険証券は意味をもたない紙切れになります。

D. 損保系のやたら長い名前になったS生命は、逓増定期保険です。でも普通に描く短期繰延の逓増定期保険とは異なりゆったりとした逓増定期です。

前期期間の14年間、保障額は同じで、12年目から逓増し最終的に保険金額は5倍まで増加します。全期間が23年になっているので、被保険者が保険期間より一日でも長生きすれば保険金も解約返戻金も0円となります。

早めに契約形態を変更して、憂いをなくしておきたいところです。サポートに電話するとすぐには回答できないので折り返し電話するとのことです。そんなことがわからないはずはないのですが、内容的に専門部署から再度連絡するということになりました。

結局その日は連絡がなく、翌日に連絡がありました。どうも窓口の言い方は冷淡な感じでしたが、払済終身保険に変更可能でありなおかつ期間は同じで払済定期保険にも変更可能とのこと。その場合元が逓増定期保険ですから後半部分の前払いの保険料が返金になりますとのこと、すごいですねこれ。

言ってみれば余分に払っていた保険料が戻るだけなのにうれしい気持ちになります(解約返戻金ではなくまた自分のお金でもないですが)。相続に充てるためですので、払済終身保険にするのは当然で、中途半端な定期保険にはできません。

しかし仕組みとしてはなかなか多彩です。逓増定期というのは多くの会社で払済終身保険に変更できないケースが多いので上出来だと思います。

E. 国内生保のN社は営業職員が出入りしています。ここには95歳満期の長期平準定期保険と20年で全損扱いの定期保険があります。

何度聞いてもまともな回答が来ないので、欲求不満になりそうです。バックにアドバイスしている営業部長なる人物がいて自社商品の取扱いには精通しているはずです。でもどうも話が噛み合いません。

営業職員が問合せの意図を伝えられていないのか、営業部長の部下への説明がへたくそなのか定かではありませんが、時間の浪費はおびただしいところです。

ついでに保険契約の話がかみ合わない原因が、名寄せが不完全で上記2件の定期がN社のシステムに表示されておらず担当職員が契約を把握できていないのです。

全く何言うてんねん、です。保険証券を目の前に差し出すとやっと納得で話がかみ合う始末です。で、結論的には延長保険という仕組みは平成22年から廃止になったそうです。知らんがな、そんなこと。

ここには出てきませんが、法人契約が専門の会社や法人契約が多い保険会社は、払済に柔軟な傾向があります。しかし反面がん保険が払済に出来なかったりと、まったく油断も隙もありません。

■法人保険で頼れるアドバイザーの見分け方、事例を紹介。

◆ 払済の洗い替えリスク。

終身保険への払済変更を行うと、それまで損金で処理してきた保険料は解約返戻金という形で雑収入になります。経理的には洗い替えが必要になります。

キャッシュが手元に入るわけでもないのに、法人税の支払いが発生しますから注意が必要です。税務処理上、法人保険を払済みにした時点で一旦解約し、その解約返戻金を新しい法人保険の保険料に充当したと考え、洗い替え処理が必要とされます。

会社に解約返戻金が全く入金されないにも関わらず、「雑収入」が計上されて(利益が出て)しまうので、法人税の支払い負担が増加してしまいます。

例外的な経理処理として、単体の養老保険、終身保険、年金保険(定期保険特約が付加されているものを除く)から同種類の払済保険へ変更した場合は、洗い替え処理は不要となっています。

◆ 払済に関する税制改正通達の変更。

払済に関しては、先ごろの税制改正通達による変更点があります。

今回通達された改正では、法人保険の洗い替え処理が例外的に不要とされるのは、養老保険、終身保険、年金保険だけでした。しかし税制改正により、定期保険と第三分野保険も洗い替えが不要になったということです。

ちなみに、「第三分野保険」とは、医療保険やがん保険、介護保険(公的介護保険ではありません。)などが該当します。

しかし、税制改正日前(令和元年7月8日より前)に加入した定期保険や第三分野保険を、税制改正後に同種類の保険に払済みした場合はどうなるのか。

税制改正日後に同種類の払済保険に変更する場合は、改正日後の税務取扱いが適用される(洗い替えは不要)ということも考えられます。しかし税制改正前の既契約が該当するかどうかは、判断が分かれることがあります。

この辺の税務上の取扱いについては注意が必要です。

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◆ 保険の払済は保険会社によりバラバラ、まとめ。

長々と書きましたが、まとめとして申し上げると払済への変更は実に各社まちまちであるということです。したがって、その都度保険会社への確認が必要であるということになります。

できれば法人契約をする場合、払済の可否を加入時点で確認しておくことが必要かもしれません。ただし保険会社のカスタマーサポートに、フリーダイヤルで電話して確認するのははなはだしい忍耐と根気がいるということになります。

保険商品は奥が深くて難しいですが、顧客サービスはなおのこと難しいことを実感した次第です。

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