連帯保証人の責任が相続されるとドツボの相続人。

連帯保証人の責任が相続されるとドツボの相続人。

相続では、親が築いた財産を引き継ぐことが普通です。しかし借金がある場合は、それも引き継がなくてはなりません。財産だけ相続するという、良いとこどりはできない決まりになっています。

明らかに借金が多ければ、迷わず相続放棄の手続きをすることが賢明です。しかし親が誰かの連帯保証人になっていたときは、どうすればよいのでしょうか。

連帯保証人として返済が始まっていれば、財産の差し引きでプラスに残るかマイナスになるかは、わかると思います。

しかし連帯保証人になっているだけでは、必ずしも肩代わりの返済が発生するとは限らないのです。

ただ注意しなければならない点は、相続では自分が判子を押して連帯保証人になったわけでもいないのに、連帯保証人の責任は相続されるという理不尽なことがあります。

実際、そういう場合はどうすればよいのか、相続放棄すべきなのか、意外に重い連帯保証人の相続について考えてみました。

■相続での借金は法定相続、債権者保護の理屈に注意。

◆ 連帯保証人とは何か、保証人との責任度合いの違い。

一般的に保証人と言えば、連帯保証人であることがほとんどです。保証人に連帯の2文字がつくだけで、保証責任が重くなります。連帯保証人になるということは、そこまで理解した上で判子を押さなくてはならないと言うことです。

賃貸住宅の連帯保証人であれば、家賃が払えなくなったときの肩代わりですから大事には至りません。しかし借金の保証人であれば、断り切れずに引き受けても、その責任は重大になります。

保証人と連帯保証人は、どちらも自分の借金ではなくても債務者が何かの事情で返せなくなれば、返済の義務があるという点では同じことです。

債権者が保証人に対して請求をしてきた場合、連帯保証人は「頼まれて保証人になっただけなので、借金した本人に請求してくれ。」とは言えないのです。借金した本人に返済能力があって返済していない場合でも、無条件で返済する責任が発生します。

相続で連帯保証人を引き継いでしまうと、連帯保証人の責任の重さを理解せずに引き継いでしまうリスクがあります。もちろん債務者がきちんと返済していれば、何事もおこらず、菓子折りの一つももらって終わりです。

しかし相続財産を引き継ぐとき連帯保証人の立場が含まれているなら、内容をしっかり確認してください。債務者の状況や返済できる見込みがあるかまで立ち入って確認しないと、とんでもないことになる可能性があるということです。

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◆ 連帯保証人でなくても相続では連帯保証責任が発生。

連帯保証人の立場が相続の対象になると、連帯保証人としての責任も相続することになります。親が誰かの連帯保証人になっていれば、相続人は連帯保証人の立場や債務も引き継がなければいけません。

相続では借金のような負の財産も含めて相続するか、それともすべてあきらめて相続放棄するかの選択になります。連帯保証人と言う立場も、自分で納得して判子を押しているわけではありませんが、負の財産として相続することになります。

そうなるとは限りませんが、相続で引き継いだら親が連帯保証人になっていた債務者が、返済できなくなれば代わりに返済しなくてはなりません。

さらに、債務者が返済できずに親が連帯保証人として返済していた場合は、親の借金の一部として返済を引き継がなくてはなりません。

どうも納得しがたい連帯保証人の責任の相続ですが、法的な決まりですから債権者が請求すれば、自己破産でもしない限り拒むことはできなくなります。

親が誰かの連帯保証人になっているかどうかは、相続人にはわからないと言うこともあり得ます。相続人にとれば身のにえがないですが、重大なリスクと言えると思います。

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◆ 相続した連帯保証人の責任も法定相続割合。

連帯保証人の債務は、相続人に法定相続割合で引き継ぐことになります。もちろん遺産分割協議で誰か一人が請け負うことも可能です。

法定相続人としての立場には下記のように優先順位があります。

配偶者以外は、優先順位が付けられています。より上位の血族が存在する場合はその人に法定相続人としての権利が発生し、下位の血族には発生しません。

第一位:子(孫)

第二位:父母(祖父母)

第三位:兄弟姉妹(甥姪)

子がすでに亡くなっていた場合は孫、父母が亡くなっていた場合は祖父母が法定相続人に繰り上がります。

実は、連帯保証人の立場もこの順位に従います。第一順位の子がいなければ、第二順位の父母に相続権が発生します。父母がなくなっていれば、兄弟姉妹、果ては甥姪までに相続権が発生します。

これは、まったく事情を知らない、情報もない相続人に連帯保証人の債務が引き継がれる可能性があると言うことになります。疎遠な親族であれば、債務超過の相続などえらい迷惑です。しかしその辺の判断すべき情報が伝わらないままに、相続放棄の期限である3カ月が過ぎてしまうリスクがあります。

◆ 親が連帯保証人であるかを確認する方法。

親である被相続人に連帯保証債務があるかどうかを把握しておくことは、とても重要なことであることはお分かりいただけたかと思います。ここをおろそかにすると、知らないあいだに多額の借金を背負ってしまい、相続放棄すればよかったが後の祭りという可能性があります。

連帯保証人は、自分が借金をしているわけではないので軽く考えてしまいがちです。親と相続人とのコミュニケーションをしっかりとって、情報を共有しておくことが大事です。

そうは言っても、親子の対話がスムーズであるとは限りません。相続が発生したら、親の所有物や被相続人宛ての郵便物の中に、連帯保証人に関する契約書類がないか確認することが大切です。もし連帯保証人になっていれば、何かの書類が必ず残されているはずです。

また連帯保証人としての返済が発生しているようなら、銀行口座の入出金記録でわかることもあります。返済が終わっているのか、残債がどれだけあるか把握して相続財産との差し引きで考えることになります。連帯保証人は相続に関係ないと思っていると、重要な書類を見落とすことにつながります。

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◆ 連帯保証人の立場を相続した場合の対処法。

連帯保証人の立場を相続してしまい、相続放棄のチャンスを失ったらどうすればよいのでしょうか。

借金の方が多ければ、親の負債を引き継ぐことはないと思います。しかし実際の相続の場面では、連帯保証人の債務がどうなるか予測できないこともあります。連帯保証人のリスクを判断することは、それほど単純なことではありません。また会社経営をしていれば、知人の保証人になっていることはよくあります。

相手を信用して、気軽に連帯保証人になっているような場合、いちいちそれを家族にすべて知らせているとも限らないのです。借金があれば、これは家族に言っているでしょうが、この辺が連帯保証人厄介なところです。

連帯保証人の立場を相続した結果、債務者が返済できず借金をかぶってしまったらどうすればよいのでしょうか。相続財産処分して返済できればチャラですが、負債の方が上回っていたら、この降って湧いたようなピンチをどうやって切り抜ければよいのでしょうか。

・自己破産は最後の手段。

まず浮かぶのは、自己破産だと思います。しかし世の中交渉で道が拓けることもよくあります。債権者と交渉するのは、素人では骨が折れますから弁護士などに相談して、交渉の窓口をお願いすることが賢明です。

債務の減額交渉、支払期限の猶予交渉、金融機関などが債権者であれば任意整理の申し立てなどがありますが、いずれの交渉も厳しいものになると思います。ただ債権者にとれば自己破産されてしまえば、元も子もありませんから最後は落としどころを探すはずです。

自己破産をしたからと言って、生活に困るようなことにはなりません。自己破産は。切り札になりますが、それ以前に相続で連帯保証人の立場が含まれるかどうか、しっかりと見落とさないように、見極めることが大事だと言うことです。

◆ 連帯保証人の責任が相続されると、まとめ。

連帯保証人の地位は、相続されるという理不尽があります。

相続人は被相続人の遺産を相続する権利があります。しかし相続では親の財産だけでなく、借金や連帯保証人の地位も引き継ぐことになっています。

ところが連帯保証人は、親から聞いていないとわからないこともあるわけです。保証人になっていてもそのことだけでは返済義務はありません。連帯保証している先の債務者が、返済できないときに連帯保証責任が発生します。

連帯保証責任が発生していて、分割で返済していれば金の出入りでわかるかもしれませんが、そうでないと見えないリスクになるわけです。

とくに急死の場合は何が何だかわからない内に49日の忌明けになり、気がついたときには相続放棄の期限ぎりぎりということもありえます。

期間を過ぎると単純承認をしたことになり、相続人の一人として財産を相続する権利が確定すると同時に、被相続人の負債も引き継ぐことになります。

相続放棄は知らなかったでは済まない話ですが、親の保証人は単純承認した以上、容赦なく新たな相続人に責任を押し付けます。

・親子の日ごろからのコミュニケーションが大事。

ゆえに被相続人たる親御さんに申し上げたいことは、常日頃から財産の目録を確認するときには借金と連帯保証人を確認し、そのことをわかるようにしておくことが必要です。

相続人たるお子達は、親とのコミュニケーションを常日頃から密にし、財産目録を共有しつつ、負債や連帯保証人まで、状況をつかんでおくことが用心というものです。

被相続人の負債はやむを得ないでしょうが、連帯保証人の地位まで相続人が引き継ぐのは、何と言っても理不尽な感じがします。自分が納得してハンコを押したわけでもない保証人です。ついつい見落としがちですが、ある日、突然見知らぬ債権者が弁済を求めてくることもあり得るわけです。遺品の整理をされるときは、くれぐれもご注意ください。

物納問題の深刻さは相続を追い詰める理由。

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