全損損金のがん保険が、課税当局に狙われる理由。

全損損金のがん保険が、課税当局に狙われる理由。

ドキッとする法人保険の担当者がいらっしゃると思います。平成24年4月に法人契約の全額損金がん保険による節税策が通達により封じられ、新規の契約は半損の経理処理を求められました。

しかし全額損金にできないがん保険は、新規に加入する気にもなりません。その結果、福利厚生として全員付保の原則が、崩れたままになります。解約することもできず、既契約で残っている全損がん保険を続けることになっていると思います。

福利厚生が認められないとすれば、課税当局からすれば過剰な節税策と判断される可能性が出てきます。身に覚えのある経営者の方や財務管理者の方は、一抹の不安があるのではないでしょうか。

とくに2019年のバレンタインショック以降は、損金算入割合がさらに厳しくなり、国税庁の考え方が変わってきています。根本的な考え方は、保険で課税の繰り延べをすることはまかりならんということです。そこまで締め付けておきながら、既得権とは言え、福利厚生の大義名分を失った全損がん保険を税務調査で見逃してくれるものでしょうか。

■がん保険、法人の全損既契約は保険金請求が大問題になる深い理由。

◆ 全損がん保険の既得権メリット。

がん保険は解約返戻率が高く、かつ解約返戻率の低下時期がゆるやかで、かなり先まで引っ張れる商品が多かったので出口対策に融通性がありました。

十数年前から平成24年の通達で網がかかるまでの間は、法人契約のがん保険は全額損金処理ができました。しかしその後は全額損金ができなくなりました。既契約はそのまま全額損金で継続できますが、新規契約から半損処理(1/2損金)となりました。

建前は社員の福利厚生が目的でしたかが、本音は節税にありますから半損ではうまみが半減しました。全損がん保険の時代は、既得権を残して終わりました。

今でも大量の全損がん保険が残っており、有効に継続されていると思います。支払った保険料は全額が費用となり、解約返戻金として簿外に緊急予備資金を積み上げています。相変わらず既得権のメリットは大きいと思います。

しかし、同時に合理的な説明ができなくなった全損がん保険は、次の問題が必然的に起こってきたと言うわけです。

◆ もともとがん保険は福利厚生が目的、付保規定が必要。

全損がん保険は代理店も付保規定を整備して、福利厚生の建前を整えるように指導していました。全員加入という前提でこそ、福利厚生の形になり、全額損金が可能になります。

全額損金が認められないとなる、新たに入社した社員にがん保険を追加で加入することは見送っている会社が多いと思います。そうするうちに社員の入れ替わりもあり、退社社員は定期的に解約しても新規加入がないことになるので、全社員にがん保険を付保するという当初の福利厚生の建前が崩壊しています。

それにもかかわらず、残った全額損金のがん保険をかけ続けることはリスクがあります。では解約すれば良さそうなものですが、出口対策ができていないとそうはいかない事情もあります。

■がんになったら保険料免除、0円で名義変更はやり過ぎ!!

◆ 課税当局が全損がん保険を狙うわけ。

矛盾に満ちた全額損金のがん保険の残骸は、課税当局にすれば狙い目になります。OB税理士に問い合わせをいれておきましたが、回答はやはりリスク要因になるとの判断です。

法人契約の全損がん保険は、従業員全員を被保険者として複数の保険会社に半端でない保険をかけているのが普通です。契約先各社の入院給付金合計が6万とか8万、なかには12万などという額になっているのです。どうみてもそのころから、福利厚生の枠を逸脱しています。

全損がん保険は保険料が巨額になり、課税繰り延べ効果が高くなっています。課税当局にすれば、法人税収減の元凶のようなものです。福利厚生の名目が外れたがん保険に、注目することがないとは言えないのです。

◆ 全損がん保険が狙われる理由、まとめ。

なかにはがん保険なのに、死亡保険金がデカいというやっかいながん保険もあります。

社員のがんで会社がもうける構図です。社員が一生懸命職場復帰を目指して抗がん治療をしているのに、会社側はピークが過ぎたがん保険の解約を密かにためらっているのです。これは余談でした、狙われる理由とは何の関係もありません。

法人契約のがん保険の現状と、今後のリスクについて見てきましたが、いますぐ問題が発生するというわけではありません。近い将来の税務調査で指摘を受け、取引条件のひとつにされるくらいだろうと考えています。しかし金額が大きいと、そうもいかない可能性が残りそうです

実際、hokenfpのネットワークでもまだ既契約のがん保険の経理処理が問題にされたという情報は聞いていません。ただ申し上げられることはOB税理士の指摘にあるように、やはり全員に付保していない全損のがん保険は付保割合が下がるほど課税当局の見方は厳しくなると想像されます。

役員退職金などの出口対策を設計し、早々に解約して解約返戻金を雑収入で受けてしまうことがよろしいようです。

法人保険の間違いやすい経理処理、注意点まとめ。

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