法人保険の解約にからむ欲得人間模様あれこれ。
保険に関わると必ず関わることになる保険金請求と解約があります。どちらも保険募集とちがい代理店や保険営業には直接的なメリットはありません。
それどころか解約は状況によっては大きなマイナスになることがあります。
保険営業と契約者との関係と解約にからむ欲得の人間模様は、いろいろな側面があり本質的な人間性が垣間(かいま)見えるときがあります。
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◆ 法人保険の解約は宿命的なもの。
法人保険の目的は事業保障という側面と利益の繰り延べや退職金準備という別の側面があります。したがって法人保険は個人保険とは違い解約を前提としたものが多いのです。法人保険の解約が宿命的なものである以上、解約が必要になったとき保険を売る立場のものが、解約を思いとどまらそうと御託を並べても関係が悪化するだけになります。
ただ法人保険でも早期解約は契約者にとり損失ですから避けなくはなりません。解約返戻率のピークを見定めて、もっとも有利なときに解約返戻金に含まれる雑収入の使い道を考えて解約する必要があります。法人保険管理はまさに解約管理であると言えると思います。
◆ 解約控除には二種類ある。
保険は売る側と買う側の立場の違いにより解約控除が2種類あると言えるのではないかと思っています。保険営業の立場ではお客様が保険契約後25ヶ月以内に保険を解約するとコミッションや給料から成果給がマイナスされます。解約控除というより、何も悪いことはしていなくてもペナルティーなどと呼ばれます。
先に成果給をもらっている場合などマイナスになることすらあるのです。早期解約の場合の解約控除は契約者にもペナルティーとして解約返戻金から契約に要した費用をごっそりマイナスされます。最初の数年間は解約返戻率が極端に低くなる理由が解約控除によるものなのです。
よく考えてみるとひどい話ですが、保険会社は早期解約に対して保険営業と顧客たる契約者の双方から解約控除の名目でペナルティーを課しています。
ただ保険営業の解約控除には一般的に保険会社のコミッション支給体系によりことなります。契約時からの経過年数に応じて控除する金額が異なり、短期間で解約する場合、経過年数が短ければ短いほど高くなっていることがあります。
◆ 解約は契約者の権利。
言うまでもないことですが、契約者は保険契約に関するすべてのことを決める権利をもっています。契約者とは保険料負担者ですから当然の権利です。契約する権利も解約する権利も契約者の意思で決まります。
少なくとも法人契約の保険はビジネスです。保険営業が自分の都合で口出ししたり懇願したりするようなことであってはいけないはずです。契約者が法人である以上、経営者の意向をくんだ窓口担当者は契約者と同じ権利をもつ立場です。解約するかどうかは常に契約者の権利として存在します。
保険のややこしいところは、ここに人間関係がからんでくるところです。窓口担当者がドライに処理しようとしても、保険営業に泣きつかれた経営者が意思を変更することがあります。困ったことですが、出口設計も台無しなどということが実際に起こるのです。ゆえに保険営業とは距離感をもって付き合う必要があると言えます。
◆ 保険営業にとり解約はダメージ。
かつて売る側にいましたから保険営業にとり早期解約になると相当のダメージがあることはよく理解できます。早期解約になると給料やコミッションを戻し入れしなくてはならないからです。
大きな契約で年払いの早期解約だと、ときには給料がマイナスになることすらあり得ます。しかし保険契約はいつでも契約者の意思で解約する権利があります。いかなるダメージがあろうと契約者に泣きつくようなことは許されることではありません。
ビジネスライクに解約により保障がなくなるリスクをお伝えしそれでも契約者が翻意しないのであれば粛々と解約手続きを進めることが責任というものです。ここを間違うと保険営業の資格なしと言わざるを得ません。
◆ 解約通知に泣きつく保険代理店。
契約する側、いわゆる買う側の立場では代理店や保険営業からガム一枚もらわないというコンセプトはこういうときに威力を発揮します。徹頭徹尾ドライに処理するだけです。売る側にとれば取り入りにくい窓口担当者は煙たいでしょうね。
保険代理店や保険営業に解約を通知すると、給料がこれだけ減り継続手当で構成されているボーナスがなくなることを訴える営業もいます。なかには10年以上前に契約したガン保険をまとめて解約するときに保険代理店に泣きつかれたこともあります。
出口対策としての資金需要を設計して解約するわけですから、情状酌量する余地はありません。買う側として話は聞きますが「会社決定です。」と一言いうだけです。法人保険の営業をする身の上では、解約を避けることはできません。契約者側からすれば迷惑千万です。とやかく言わずに処理を進めるのが保険営業の正しい姿勢です。
◆ まとめ。経営にとり解約は利益コントロール。
法人契約の保険の目的は基本的に2つあります。ひとつは事業保障、もうひとつは利益の繰り延べです。会社にとり利益を繰り延べるメリットは再三書いてきました。
経営の成果としてあげた利益を繰り延べて、税金というコストをできるだけ回避することが経営にとって体力を温存することになります。
利益は繰り延べるだけでは保険会社と税務署に奉仕するだけになります。法人契約の保険では、出口を設計し発生する費用に当て込んでいきます。経営にとり保険の解約は利益のコントロールになります。
会社の利益というものは安定しているものではないのです。大幅な赤字が予想される年に保険を解約して雑収入を利益に当て込むことで当期純利益を計上し、どうにか優良申告法人を継続するという技もあるわけです。
したがって法人保険の解約という状況は必ず発生します。保険営業にまつわる解約の人間模様はいかようであろうとも解約するときは解約する、まさにそれが法人契約の生命保険です。