生命保険業界の2020年を予測すると。
皆様、新年あけましておめでとうございます。年の干支は庚子(かのえ・ね)、ネズミは「寝ず身」と言われますが、まじめにコツコツと働く人が多く、かつ倹約家で保険業界には向いている性格と言えそうです。
昨年暮れの記事には「節税保険壊滅、令和元年の悲劇しめくくりと生き残り策。」などと受け狙いの大見えを切りましたが、保険業界はそれ以上に厳しい状況かもしれません。特に節税保険で一旗揚げたMDRTにはあまり目出度くもない新年になっているように思います。
◆ 保険業界の三重苦。
保険業界は金融業界であり保険会社は金融機関です。昨今の異常な低金利政策は、銀行をはじめとする金融業界の収益源をむしばんできました。地銀では店舗の集約・再編が進みリストラを余儀なくされる状況があります。そんな中で保険業界だけが節税保険バブルを謳歌していました。バブルはいつかはじけます。その引き金を引いたのが昨年2月14日に始まったバレンタインショックです。
保険業界は少子高齢化・人口減少による保険料収入の減少、低金利政策による資金の運用難、そして節税保険の終焉で三重苦に陥ったと言えるでしょう。節税保険の終焉は意味合いが他の2つとは異なりますが、短期的にも長期的にも直接的な影響があまりにも甚大であると思われるので三重苦に加えたところです。これまで業界での合従連衡が徐々に進んでおり社名が変わる保険会社も出てきています。今後、法人保険を得意分野としていた保険会社などさらにいくつかの保険会社が集約される可能性があるのではないかと予測しています。
◆ 節税スキームイタチごっこの終焉。
過去には様々な保険のスキームがあり、法人保険は有効な金融商品として中小企業の利益コントロールに役立ってきました。これまでは通達により網がかかってもそれをくぐりぬける保険の新商品が発売され生き延びてきた経緯があります。
しかし今回ばかりは国税庁が投げた投網は網の目が細かく広範囲でした。小魚さえも逃がさないという一網打尽策の意志が感じられました。保険業界は雁首揃えて国税庁の強権の前に屈してしまった結果が節税保険の終焉となりました。数年でベンツを乗り換えて、利益を海外に避難していた凄腕の保険代理店も事務所を縮小しフツーの保険代理店になるか転職を考えるしかありません。節税保険でひと財産築いたOB税理士さんも引退の考え時です。
◆ 生活の質をダウンサイジング。
ここまで20年近く、法人契約の逓増定期保険やがん保険などの課税繰り延べができる保険で財を成した保険代理店の営業はまさに一旗揚げたというにふさわしいぼろもうけをしてきました。生活も派手になり経費で落とす額も半端ではありません。身についてしまった贅沢はなかなか落とせませんが、生活の質をダウンサイジングしないといけない時代になりました。
中には一生食べるに困らないだけの資産を築いた猛者もおられますから、余計なお世話かもしれませんがね。保険業界で今後も生きていこうとするなら、収入に合わせた生活のレベルを考える必要があると思います。いつまでもあると思うな親と金、おっと節税保険も同じですね。
◆ 経営の多角化。
これはできる方とそうでない立場の方がおられます。保険会社に所属される保険営業の方には多角化という選択肢はないと思います。子年に合わせてまじめにコツコツ顧客を回りチャンスの芽を拡大するしか道はありません。本来の保険営業の厳しい現実が待ち受けていますが、それを乗り越えた方だけが真の保険営業なのでしょう。
保険代理であれば、多角化を視野にいれる選択肢もありです。利益の出ている中小企業のオーナー経営者は相変わらず利益が繰り延べできる金融商品を求めています。取り扱いができるのであればオペレーティングリースなどの商品を検討すべきです。逓増定期などの保険と組み合わせれば、いろいろ提案ができるはずです。
◆ 保険業界大予測、まとめ
2020年の生命保険業界では、法人保険は一気に規模が縮小し保険契約数は昨年に続き激減することは避けられないと思います。
かといって事業保障に必要な生命保険はたびたび契約のチャンスがあるわけではありません。事業承継などの節目を狙って根気よく足を運ぶほかありません。
養老保険のハーフタックスはうまく取り入ることができれば成果が期待できますが、円建てではほとんど運用が期待できず単純返戻率も100%を越えないのでお勧めするにも力が入りません。ただ配当予測込みで事務手数料3%が加算されれば使えるハーフタックスもあります。
ハーフタックスと言えども資金運用に他なりませんから、解約返戻率が低くてはその気にならないわけです。一度入り込めば、定期的に新入社員加入で契約が発生するところもおいしいところです。
一方ドル建て商品は一つの切り口です。中東できな臭い状況になっていますから、円高が進めばさらに面白い保険商品になるかもしれません。ただ為替リスクと市場価格調整などの外貨建て独特のリスクがありますからきっちり説明して理解していただく必要があります。
いくつかの生き残りにかける細い道は見えますが、虹がかかっているわけではありません。保険業界と保険営業に携わる方々には厳しい時代の幕開けと言えるでしょう。